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book-go-around #010 東京都: 渡部 周(36歳)

book-go-aroundは本を買ってる人に本を買うことや本をコレクションすることの楽しみを語ってもらうflotsambooksのインタビュー記事です。
今度あなたにもインタビューさせてください。

#010 東京都: 渡部 周(twitter ID: @wtnbd511)(36歳)

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5年前ほど前に、勤めていた会社を辞めてフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動を始めました。
勤めていた時に写真雑誌のデザインを手がけていたので写真や写真集には興味があったのですが、独立当初はまだ仕事もさほどなかったので、なにか自分の強みをつけようと思い、外苑前にある東京藝術学舎で開講された鈴木芳雄さん(元BRUTUS副編集長)が講師を勤める、「写真集について」学ぶ連続講座に通いました。
その授業の中で、毎回紹介される写真集やアートブックが内容、デザイン共にとにかく素敵で、「こんなに面白い本の世界があるのか!」と衝撃を受けた事がきっかけです。

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アートブック界隈で話題になっている本や、この本は後々価値が上がる!と言われている本にはもちろん興味があり惹かれるのですが、出来るだけ、「その本がどのようなコンセプトで作成されて、何故この編集・デザインになっているか?」を自分で理解し、他の人に説明出来る本を買うように心がけています。
他には、イベントや展覧会など、売り手やアーティストと直接コミュニケーションを取れる場所でなるべく本を買うようにしています。そうすることで、本の魅力やコンセプトも直接説明してもらえるので理解が深まります。また、購入した本を後々見返した時にも「あの時のあのイベントで買った本だ」と、自分の中で記憶に残る特別な本になるからです。

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アートブックフェア写真集飲み会などのイベントで本を買うことが多いので、その時は「今日この場所でしか買えないような本に出会ったら絶対買おう!」と思って行きます。

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1.Gold Coast / Ying Ang
真っ白いビーチで有名なオーストラリア最大の観光地であるゴールドコーストは、一方ではレイプ、アンフェタミン、殺人や恐喝など無数の犯罪があるという二面性のある土地。そんなゴールドコーストの地が纏う「美しい嘘」を描いた写真集です。
一見するといわゆるよく見る海外の風景写真のようですが、その中から漏れ出る不穏な空気がゾクゾクとさせてくれます。ピンクのスリーブケースの中から覗く白と黒のジグザグ模様の表紙が、白いビーチと犯罪を象徴するかのような抽象的なデザインで素晴らしいです。ブックデザインはオランダのグラフィックデザイナー、Teun van der Heijdenさん。さすがです!

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2.Max Huber / Max Huber
20世紀のグラフィックデザイン界を牽引したスイスのデザイナー、Max Huberの作品集。
大胆なタイポグラフィや、色使い、インパクトのある構図が特徴的です。グリッドシステムに代表される精緻なスイススタイルの影響下にありながらも、遊び心のあるデザインはいつ見ても刺激的で、私が大好きなグラフィックデザイナーのひとりです。

3.デザイン解体新書 /工藤強勝
独立する前に私が5年ほど勤めたデザイン事務所の代表、工藤強勝さんが自身のデザイン手法を惜しみなくまとめた、エディトリアルデザインのマスターピースとも言える本です。新人の時、事務所の仕事についていこうと貪るように読んでいた一冊。現在でもたまに見返している、恐らく私が人生で一番読んでいる本です。本当はカバーがついていますが、仕事中に読みすぎてカバーを無くしました。

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エピソードというより現在進行系ですが、写真集を買うようになり、写真の世界が好きになってからとても世界が広がりました。
私は30歳過ぎるまで海外旅行に行ったことがなかったのですが、前述の鈴木芳雄さんの授業でPARIS PHOTOの存在を知り、写真集の本場を体験したいと強く思いました。そして、授業の翌日にパスポートを取り、初の海外旅行でフランスへ。PARIS PHOTOやPolycopiesなどのイベント、ヨーロッパ写真美術館ジュ・ド・ポーム国立美術館などの写真展を見て非常に刺激を受けました。

その後は、フランスのアルル国際写真祭や、国内であればKYOTOGRAPHIEなど、写真というキーワードから様々な場所に旅行するようになりました。

旅先では現地の書店巡りなどをするのですが、「日本から来た写真集好きです」と説明をすると、書店の方とも話が弾み、覚えてもらえる事が多いです。帰国後にメールのやり取りをするようなつながりの方も出来ました。

写真集やアートブックの文化は世界中にあるので、私にとっては、世界と繋がるための鍵になっています。

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若い人なら、まず、1万円でも2万円でもいいので、自分がこれまで支払ったことの無い金額の本を思い切って買ってみる事をオススメします。

そのくらいの金額の本はまず、販売している部数や所有している人が少ないので、その本を「持っている」というだけでも人との話題が広がります。
本の内容(テーマ・コンセプト)やブックデザインなども、良質なものや実験的なものが多いので、「新しい世界を知る」ということだけでも値段以上の価値は間違いなく得られると思います。

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Reminders Photography StrongholdのSNSやイベント、出版物
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・flotsambooksやtwelvebooksのオンラインショップやSNS
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twelvebooks    website  twitter 
roshinbooksのatsushisaitoさんのtwitter 
などが日々チェックしている情報源です。

東京都墨田区のReminders Photography Stronghold(RPS)で開催される展示やイベントにはできるだけ欠かさずに参加するようにしています。
世界の最先端の写真家や写真集と触れることができるので、とても勉強になります。
本好きの方にはとりわけ、不定期で開催される「3Books」というイベントがオススメです。主催者や飛び入りの参加者が、毎回テーマに沿った写真集を3冊持ち寄り、それについてプレゼンテーションをしていくという会。
皆さん、持ってきた本への洞察や愛がすごく、前回、「歴史的事象を視覚的に検証している本」というテーマの時に伺った際には、5時間くらいぶっ続けで写真集にまつわるエキサイティングなトークが繰り広げられていました。

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いつも「買い逃す本が無いように。」という気持ちで過ごしているので、今のところはありません。

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本を所有する一番の魅力は「人に見せて自慢できる」ことだと思います!!

前述の東京藝術学舎の写真集講座の際、森岡書店森岡督行さんがいらっしゃった回があったのですが、その回は森岡さんと鈴木芳雄さんが、「自分がいかに良い本を持っているか?」をお互いと受講生に見せて自慢する、自慢大会の様になっていました。
お二方とも、自分の本を紹介する時も、相手の本についての話を聞く時も、とても楽しそうにニコニコしていたのが印象に残っています。

本の魅力としてもう1点。私は現在、御茶の水美術専門学校で非常勤講師をしているのですが、授業の際に資料になりそうな本がある時は、できるだけたくさんの本を持って行くようにしています。学生に、良質な本に直に触れて体験して欲しい、という気持ちが大きいですが、授業の進行上のメリットもあります。

制作に参考になりそうなデザインを見せる時、Webで見つけた画像などを見せても良いのですが、どうしても「PCを開く→検索する→画像を探して見せる」といった様に、見せるまでの工程が多く、煩わしさを感じます。
本の資料であれば、机においてある一冊を手に取り、ページを開くだけなので、すぐに見せることが出来ます。
また、学生が一冊の本を数人で囲んで一緒に見たり、面白いと思ったページを友だちに見せたりする場面なども見かけられたので、本というのは大勢で見る用途にも適しているのだと感じました。

以上の事から、本が持つ特徴としてその魅力を他の人に「シェアしやすい」という事があると思います。

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自分のお気に入りの本を買った時は、友達や家族に見せて思いっきり自慢しましょう!!

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#bookgoaround では、インタビューに答えて頂ける方を随時募集しております。すごいコレクションでも良いし、この1冊について語りたいでも良いですし、断捨離を繰り返して10冊くらいしか残ってないけど、最高のものだけ残ってるって方でも大歓迎です。コレクションの量や質はこだわりません。ルールはひとつだけビジュアルブックであること。
お気軽に下記にメール下さい。

info@flotsambooks.com

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