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備品管理をしたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ライフハック)

はじめに(チームより)

フローレンスは、親子を取り巻く社会課題の解決を目指しているNPOで、現在、約700名が所属しています。多様なメンバーの「働く」を支えているのがバックオフィス業務を主に担っている働き方革命事業部、通称「ハタカク」です。
ハタカクは人事、経理、法務、総務、といった業務で構成されていて、障害者雇用チームも含まれています。フローレンスの事業を裏で支えるハタカクメンバーの業務や仕事への思いをnoteに投稿しています。


認定NPO法人フローレンスの総務関連チームで障害者雇用のスタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ライフハック」をご紹介しています。記事執筆の背景>>

フローレンスの障害者雇用についての視察や講演などの問い合わせは、 https://florence.or.jp/contact/ の取材・広報申込みフォームよりご連絡ください。


▼本日のお悩み
「いつの間にか備品の在庫が無くなっていて、あわてて発注します。在庫管理の方法を知りたいです」

ライフハック①「備品在庫管理マニュアル」と「備品管理表」を作ろう

「在庫の補充をしておいて」だけでは伝わらない

「文房具、会社の封筒、来客者に出すお茶…」など、総務には「全社の備品を管理する」という責任重大なお仕事があります。普段は意識しないぐらい当たり前にある「備品」なので、無いとなると「何で無いの?」とがっかりされてしまうことも。
障害のある社員に対して「在庫の補充をしておいて」の依頼では、「まだ5個あるから補充しなくていいか」となり、「あと5個あるけど、発注してから届くまでに1週間かかるから発注しておこう」という想像力を働かせる感覚的な管理が出来ない場合があるので、標準化することは大切です。

この、「感覚的な管理」を障害のあるスタッフでも、スムーズにできるようにするためのツールが、マニュアルと管理表です。

フローレンスでは、全社の備品管理だけでなく、各部署で必要な専用備品の管理も障害者雇用のスタッフが行なっています。

これは、他部署から「担当者が忙しく、部署の備品在庫を切らしてしまって困っている」と相談されて、請け負うことになったお仕事です。「本来の仕事に専念できて、助かります」と感謝されています。

●在庫チェック作業の流れ
①月に1度、在庫数を確認して在庫管理表に記載する
②「最低購入ライン」の個数になった備品は、各部署の備品購入担当者にChatWorkで連絡する

●在庫管理マニュアル
・在庫の場所(写真入り)
・在庫チェックの手順

●在庫管理表
・品名、在庫場所、購入最低ライン数、在庫数

ライフハック②「備品購入依頼カード」を作成してみよう

「補充ライン」を視覚化する工夫

日常的になくなりがちな備品や、チェック作業に時間がかけられない場合は、在庫数をチェックするのではなく、「在庫がなくなりそうなので購入してくださいカード(備品購入依頼カード)」を作成して、「補充ライン」を可視化する工夫をするのもオススメです。この仕組みで、在庫を一定数に保てるようになります。

●備品購入依頼カードの仕組み
・購入担当者は、在庫にカードをつけておく
・在庫を使った人が、購入担当者にカードを渡す(もしくは備品発注ボックスに入れる)

●備品購入依頼カード
・備品の写真、備品名
・『カードは備品発注ボックスに入れてください』『購入してください』『カードは在庫につけておいてください』『在庫の置き場所』など

ライフハック③テプラだけから卒業して「写真」もつける

「備品棚やロッカーを片っ端から探す問題」を一発解決する

「マイナスドライバー、どこにあるんだっけ?」「右のロッカーじゃない?左かな、あ、真ん中かも(……ロッカーを片っ端から開けてみる)」のようなこと、備品探しで起こりがちではないですか?

下の左側の写真は、「ロッカーに入っている備品名を、テプラで貼っただけ」のロッカーです。このロッカーにはフローレンスの「アニュアルレポート(年次報告書)」が入っており、「アニュアル」とテプラで貼ってあるのですが、「会社案内的なものが欲しいんだけど…ほら、表紙にグルグルの絵が書いてあるやつある?」という人には、存在がわかりません。

そこで、右のように備品の写真もつけることで、ひと目で「そう、このグルグルのやつ!」とわかるようにしました。

障害のある社員は、文字情報よりも図や写真情報を理解しやすいことがあります。「ファイル買っておいて」では、「クリアファイルなのか、ニ穴ファイルなのか」わかりませんが、写真があると混乱しません。

※ちなみに、フローレンスの2021年度版アニュアルレポートはこちらからご覧いただけます。2022年度版は8月頃にリリース予定です、どうぞお楽しみに。

最後に

総務関連の業務につくまで「会社の備品は、欲しい時にあって当たり前」だと思っていました。これほど総務が備品管理に労力を費やしていることを知らず「この備品、会社で買って欲しい」など、ワガママを言っていたなと反省しています。

「他の部署の立場で考えてみる」「障害のある社員の立場で考えてみる」など、通常業務をいろんな角度から見ることが出来ると、多くの社員が働きやすい職場になるのかなと思います。

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。

執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

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