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優先順位をつけたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ライフハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~

はじめに(チームより)

フローレンスは、親子を取り巻く社会課題の解決を目指しているNPOで、現在、約700名が所属しています。多様なメンバーの「働く」を支えているのがバックオフィス業務を主に担っている働き方革命事業部、通称「ハタカク」です。
ハタカクは人事、経理、法務、総務、といった業務で構成されていて、障害者雇用チームも含まれています。フローレンスの事業を裏で支えるハタカクメンバーの業務や仕事への思いをnoteに投稿しています。


認定NPO法人フローレンスの総務関連チームで障害者雇用のスタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ライフハック」をご紹介しています。記事執筆の背景>>

フローレンスの障害者雇用についての視察や講演などの問い合わせは、 https://florence.or.jp/contact/ の取材・広報申込みフォームよりご連絡ください。


▼本日のお悩み
「仕事が沢山ありすぎて、どれを先にやったらいいのかわからず、いつも締め切りに追われてしまいます。優先順位の付け方を教えてください」

ライフハック①優先順位をつけようとしない

クリアファイルと付箋で1分管理をしよう!

「業務の優先順位をつける」。多くの社員はこれを試行錯誤しながらやっています。todoリストやタスク管理表を使ってみたり…それでもなかなか業務を回せず、なんとか仕事をしている人は多いのではないでしょうか。

さらに、障害のある社員は「優先順位をつける」ことが苦手な場合があります。目の前にある作業に集中し、時には休憩することも忘れて没頭してしまう特性だったり、チャレンジ精神が強いことで新しい業務に目がいき、今やるべき作業を忘れてしまうことがあります。そんな社員にただ「優先順位をつけて」と注意しても難しいのです。

「優先順位」という考え方から解き放たれましょう!「明日の予防接種の会議室の準備」は今日最優先でやらなければいけないかもしれないですが、優先度低だと思ってた「まだ在庫はあるけど、もう少しで無くなりそうな来客者用のお茶購入」も、1週間後の「在庫が無かった!」時には最優先となる業務です。

「すべて優先だから、優先順位はない」という認識にたつと、大切なのは「どんな業務が動いているのか」「いつやるのか」かを1分で把握できる状態にしておいて「今やらないことはすべて忘れること」です。

フローレンスの障害者雇用チームでは、他事業部から常時複数のファイリングやチラシ発送などの依頼を業務を請け負っています。業務を請け負ったら、下記のように、付箋にメモをします。

必要なメモはこの程度で十分です(これ以上書くと、この付箋に書く作業も面倒くさくなってしまうため、最小限にしています。)

・依頼者の部署名、スタッフ名
・作業者の作業日、スタッフ名
・締切日
・簡単な作業内容

作業者のスケジュールに登録した後は、これを下記の写真ようにクリアファイルに貼っておいて、以前書いたスケジュール管理の記事にあるように、毎朝このクリアファイルを1分でざっと見て、今日やるファイルだけ机の上に置いておくのです。

このクリアファイルのよいところは、「情報を誰が見てもわかり、一元化できる」ということです。

「締め切りが早くなった」「一部のやり方が変わった」「担当者の変更があった」などは、全てこの付箋に追記したりするこで、実際の作業時の漏れもなくなりますし、自分が休んだ時も、他の人がこのファイルを見ることで、現状がわかるようになります。

こうして「どんな業務が動いているのか」「いつやるのか」かを1分で把握できる状態にしておけば「あれもこれもやらなきゃ」を忘れて、今やることに集中できます。

ライフハック②さらに業務の見える化をする

200円の透明ボックスと付箋で管理してみよう!

①でお伝えしたクリアファイル管理のよいところは、作業に必要な紙ものなどを入れておくことが出来ることですが、作業するものも入れておけたら、もっと作業効率を上げられるのでは?と思い購入したのが、下記の写真のような100均で購入した200円のボックスです。

領収書のハンコ押し作業であれば、「領収書、ハンコ」を一緒に入れて、①の付箋をボックスに貼っておけば、透明なので中身がわかり、「これはハンコ押し作業だな」と、メモを読まずとも作業内容を思い出せます。

障害者雇用チームのスタッフは、「予定していた作業が15分早く終わってしまった」などのスキマ時間にこの棚のボックスを見て、できそうな作業を自主的に行なっています。

ライフハック③「急ぎでお願い」も同じように見える化する

お手伝いは、3分以内で終わるものに限定する

「もうすぐ荷物が大量に届くから、開封作業手伝って」「イベントで必要なんだけど、名刺印刷100枚だけすぐにお願いできない?」など、総務にいると予定されていた仕事があるのに、急に頼まれることはありませんか?(私も人にお願いしがちで、反省しています汗)

急ぎな仕事を優先してしまうと、予定していた仕事が終わらないばかりでなく「1日忙しかったけど、予定の仕事も終わってないし、何をしていたんだろう」となることもしばしばです。

急ぎで仕事を依頼する人(私のことです)は、それほど相手の時間を奪っているつもりはないはずです。気軽に頼んでいることも多いですし、それほど急いでいるわけでもない場合がありますが、コミュニケーション能力の高い障害のある社員は、突然頼まれた仕事を断ることが出来ず、予定をずらして対応してしまいがちです。

そこで「すぐに対応するお手伝いは、3分以内で終わるもの」と決めておきます。依頼されたら「開封作業は3分で終わりますか?」と聞きます。10分かかると言われたら「11時からなら10分とれますがいかがですか?」と対応します(もしくは断ります)。

そして、実際に何分かかったか覚えておいて、スケジュールに後追いで登録しておき何に時間を使ったかを記録しておけば、突発の依頼が毎日どの程度あり、何分ぐらい突発仕事用にあけておいたほうがいいのか、あらかじめ準備ができます。

障害のある社員をサポートする側としては、コミュニケーション能力の高い障害のある社員に急な仕事を頼みすぎないことと、予定以外の作業を急にお願いされるとパニックになってしまう社員がいることを忘れずにいましょう。

最後に

今では図々しく人に何でもお願いできる(しすぎる)し、断ることができる私ですが、20代の頃は「ちょっと手伝って仕事」を断ることができず、キャリアアップにつながるような難しい仕事に手を付けられない時期がありました。「ちょっと手伝って仕事」は感謝されやすいし、考えなくていいので、そういった業務を頼める人材は芋づる式に「ちょっと手伝って」仕事が増えていきます。もし自分がそのような状態なら、ぜひ今回の記事を参考に、業務の整理と断る練習をしてみるのはいかがでしょうか?

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。

執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

▼過去記事一覧はこちら

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