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制作雑記【着せかえ布花 バラ】

今日は【着せかえ布花 バラ】のお話です。


私は花の中でもバラが特にお気にいり!
たくさんの花弁が重なるロゼット咲きの姿は、お姫さまのドレスのようで憧れずにはいられません。
バラの姿が身近にあるだけで、自分の中にある美しいものが目覚めるような気がします。
きっと多くの人が心の底でそう感じているのでは?
だからこんなにもたくさんの、バラの形や柄の洋服や雑貨小物が売買されているのだと思います。

バラを好きになったキッカケ

実は、私は昔からバラがお気にいりではありませんでした。
むしろスズランやカスミソウなどの小さい花の方が好き。
バラの香りは好きでしたが、バラの花形(剣弁高芯咲き)にあまり惹かれなかったのです。
そんな私がバラ好きになったキッカケは、雑誌で見たロゼット咲きのオールドローズでした。

ロゼット咲きのバラ(生花)

それまで私の中のバラは、剣弁高芯咲きのモダンローズだけ。たとえば…
子供の頃から花屋さんで見かけるバラは、みんな剣弁高芯咲き。
マンガやアニメでキラキラしいキャラクターの背景に描かれるのも、やっぱり剣弁高芯咲き。
ロゼット咲きのバラは見たことがなかったので、その形の違いに衝撃を受けました。

布花の剣弁高芯咲きのバラ

モダンローズとオールドローズの花形

モダンローズは、19世紀から登場した野生種から人為的に作出された園芸品種のバラの総称。
それ以前のバラはオールドローズと呼び、ロゼット咲きやカップ咲きの形状がほとんどでした。
そんな中に登場した、モダンローズの凛とした美しい剣弁高芯咲きの姿はたちまち大人気。
ですが、1961年にイギリスのデビッド・オースチンがオールドローズのような形の「コンスタンス・スプライ」というモダンローズを発表。
その後もオースチン氏は「イングリッシュ・ローズ」というブランドでオールドローズの特徴を持つモダンローズを発表していきました。

デビッド・オースチン・ロージズ株式会社 2021年カタログ表紙(上段)
デビッド・オースチン・ロージズ株式会社 2021年カタログ写真(下段)

剣弁高芯咲きのモダンローズは園芸品種として栽培のしやすさもあり、商用として花屋さんで取り扱いやすかったのか。
小さな花屋さんでも、バラといえば剣弁高芯咲きのモダンローズが並んでいますよね。
そのため多くの人に、『バラ=剣弁高芯咲き』のイメージが根付いたのではと私は思います。
私の両親もロゼット咲きのバラを見て「これはシャクヤクか?バラはこういうの(剣弁高芯咲き)だろう」と言っています。
最近では近所の小さな花屋さんでも、ロゼット咲きのバラを見かけるようになりました。
これはオースチン氏のおかげだと、私は密かに思っています。

大好きなバラを作って

「バラってこんな形もあったんだ!」
レースやフリルといったロマンチックなデザインが好きな私は、直ぐにロゼット咲きのバラにぞっこん!
そしていかに憧れのロゼット咲きのバラを再現するか…と、試行錯誤を繰り返してやっと納得のいく布花が作れるようになりました。

そうそう、さきほど「剣弁高芯咲きのバラに牽かれなかった」と書きましたね。
でもロゼット咲きのバラを布花で作っていく内に、剣弁高芯咲きの形状に興味を持つようになりました。
剣弁高芯咲きのクルンと反り返る花弁のフチ、すぼまるような形の蕾が日を追うごとにフワッと広がる…その摩可不思議さ!
植物を作った神様(がいるとしたら)は、なんて素晴らしい造形者なのだろう!弟子入りしたい!

話を戻して…
ロゼット咲きのバラは式典用のコサージュとしてよくオーダーをいただきます。

オーダーメイドで制作したセレモニーコサージュ
バラと同じ色合いのコットンパールがアクセントになっています。
オーダーメイドで制作したセレモニーコサージュ
内側の白から外側に向かって紫色へと変わっていく様がエレガントです
オーダーメイドで制作したセレモニーコサージュ
お客様が育てている壺型クレマチスを添えて世界で一つだけのコサージュに仕上がりました

受け取ったお客様から「本物のように素敵ですね」とありがたいメッセージをいただくこともしばしば。
そんな時はいつも、苦労が報われたなと胸がジンとするのです。

上達のカギはミニチュアサイズ

せっかくロゼット咲きのバラを作れるようになったなら、さらにバラ作りの腕を磨きたい。
そこで思い付いたのが、「アドベント🌹ローズ」という企画。

アドベントローズとして制作した25個のミニチュア布バラ

2018年12月1日からクリスマスまで、実在するバラをミニチュアサイズの布花にして毎日インスタグラムで発表しました。

昔、モノ作りが好きな知人に布花を作っていると話した時。
「腕を上げるなら、より小さいものを作るといい。小さいものが充分に作れるなら、どんなものでも作れるから。」
と、アドバイスをいただきました。
それを聞いた当時は
「布花を形成するだけで四苦八苦しているのに、さらに手の込んだことをするなんて無理」
と左から右へ聞き流してしまいました

その話をふと思い出して、この企画を実行。
かなり大変でしたが、おかげさまで知人の言う通り確かな手ごたえを掴みました。
おまけにもともと小さい・細かい小物が好きだったので、完成した時は心の中で狂喜乱舞したほどです。
人の言うことは素直に聞くものですね。

そして、着せかえ布花へ

着せかえ布花ブローチは発売当初、手のひらサイズの布花を着せかえるものでした。
それをさらに現代ファッションに合わせやすいように、ミニチュアサイズの布花に変更したのが現在販売中のもの。
小さくても華やかな存在感の【着せかえ布花 バラ】は、ファッションのアクセントになります。
しかも、このサイズ感だからこそさりげなく装えるのです。

デコルテ近くに付けると顔まわりが華やぎます

ファッションアイテムとしてでなく、「宝物のようにひっそり愛でていたい」と購入されるお客様もいらっしゃいます。
「バラが好きな友人の誕生日プレゼントに」というお客様も。
皆様のもとで【着せかえ布花 バラ】はどのように咲き誇るのか…
思い浮かべると、制作者として幸せな笑みが溢れてきます。
【着せかえ布花 バラ】の詳細はこちら↓


[参考]
上田善弘、河合伸志 監修 NHK出版 編, バラ大図鑑, 別冊 NHK 趣味の園芸, NHK出版, 2014年, pp.271-274 pp.284.

応援していただけますと、ひとりきりの制作の中でも『まだ見ぬあなたに布花を届けるんだ』ともうひと踏ん張りできそうです。よろしくお願いいたします。