詩〜nightmare / masquerade

何枚も何枚も薄く貼り重ねた
仮面が
とうとう分厚くなり過ぎて
ひび割れた隙間からチラリと本当の顔が覗く

化けの皮が剥がれる
この仮面の下は見るも悍ましい


『普通』や『平凡』を薄く何枚も貼り重ねて
作り上げた仮面は
何色も塗り重ねた絵の具の様に
乾いてひび割れて痛々しくめくれ
自分でさえも目を背ける本当の顔が覗く

鱗の様に剥がれ落ち
この仮面の下は見るも悍ましい


本当の顔など忘れた


ぼろぼろ崩れかけた仮面を
それでもまた薄く貼り重ねては
自分を守る

この仮面の下は見るも悍ましい
忘れた本当の顔を思い出さないための仮面
分厚く貼り付き乾いてひび割れると共に
仮面の下の顔もひび割れて
ぼろぼろと崩れ落ちる

鱗の様に剥がれ落ちた欠片は
はらはらと舞い
月明かりに照らされ
きらきらと落ちる

本当の顔などはじめから無かったのかも知れない
仮面の下にはもう何も無い


見るも悍ましい
黒い影

　　　　　　nightmare / masquerade