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エッセイ

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2024年2月の記事一覧

【鈍色】

【鈍色】

額縁に飾られている豚のような気分だ。

鈍色の空から降り注ぐ雨粒が肉塊を抉りやがる。

頭を掻きむしって、お隣さんの迷惑にならないように嗚咽混じりの唸り声を地の底に思い切り響かせる。

こんなもんやってたってなんにもなりゃしないんだよ、とアセファルを羨みながら呟く。

これはもう吐血だ。

悲しみと痛みを吐き出す言葉には、鮮明すぎる血が混じってる。

四方八方から降り注ぐ痛みが脳をギュッと締め付け

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子どもの作る詩に心打たれ(日記)

子どもの作る詩に心打たれ(日記)

昨日は仕事で小学生の教え子と散歩をしながら詩を作っていた。

広々とした公園で足を揃えて思案に耽る中、児童が「時は今 価値観壊して 進んでく」という詩を詠み、その能動的なダイナミックさに感銘を受けたし

その後には「雑草は 大きさなどでは 比べられられぬ」ともうたってて、自分が作った詩よりも印象的だし、好きだなぁと感じた。

詩の技巧云々に関しては後から勉強すればよいもので、それよりもこの素直な若

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『発達障害者としての僕』に対する洞察①

『発達障害者としての僕』に対する洞察①

僕は、自分自身が発達障害の身にして、所謂「療育」という仕事をしている。

高校の時に心理学の本を読み耽っていた親友に「キミたぶんAD/HDだよ。」と言われたことをキッカケに心理学に強い興味を抱いた。

発達の疑いがある人が、実際に診断を貰った時の心境は様々だが、僕の場合はすぐに診断を貰わなかったものの、AD/HDについて独学で調べている中でとてもワクワクした気持ちになったことを今でもハッキリと覚え

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「天花との酒盛り」

「天花との酒盛り」

「生きてる感じがするなぁ……」

天花との一年ぶりの再会を肌で楽しみながら、

ちゃぷ ちゃぷ と僕が歩くたび心地よく鳴り渡る音に耳を澄ませていた時に、自然と独り言が口から溢れた。

凍雲に身を包んだ鉛の空に向かい祝杯をあげた僕は、熱った体をちょうどよく冷たい風に叩いてもらい、すっかり調子が良くなっていた。

酒がサウナだとしたら寒風が水風呂で、買い物帰りに朗らかに歩む僕は、その交互浴がこれ以上な

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