異世界おしゃぶり転生 〜あれ? 聞いていた転生とは違うよね?! なーんて思ったけど、案外楽しめんじゃない?! ということで、私はおしゃぶり生を楽しむことにしました!(第十八話)



第十八話 私、スライムになったらしい。


 
    ――むにょん、ぺちょん、ぺちょん。

《えーっと、どこからツッコもうか》

 私は自分の体を見直す。

 動く度にぷるぷると揺れる”物”だったはずの体。

 日の光が差し込むときらきらと輝きながらも、光を地面に透過する青みがかった透明な体。

 シャリシャリとした食感がたまらない〇〇〇〇君のような爽やかな匂い。

 あー、これスライムだよねー。

 てか、口? 穴? に私《おしゃぶり》が咥えられているし。

 どっちにも意識がある不思議な感覚だ。

 でも、何でこうなったんだろう?

 確かあの時『《状態異常となりました。継続的に体力が減少し続けます。外敵からの攻撃により、体力10減りました。総体力10%のダメージを受けた為、発動条件達成しました。【対生物用スキル、寄生レベル4】発動します》』とか、っていうあかりんの声が聞こえたよね……。

 って、どういうこと?

 状態異常。

 これは溶けたり凍ったりし、スライムの攻撃のせいだってわかる。

 けど『《【対生物用スキル、寄生レベル4】発動します》』って、ダメージを受けると発動するスキルがあるってこと?

 えっ、でも、寄生スキルって人の力を利用するとか、そういうのじゃなかったっけ?

 だめだ、混乱してきた。

 よし。もう一度、ステータスを確認しよう。

《ステータスオープン》

【個体名】おしゃぶり(転生者) 『スライムに寄生中』
【個体名】おしゃぶり【種族】物
【レベル】2
【体力】350/250+100【魔力】1300/1200+100
【攻撃】50+100【防御】200+100
【敏捷性】50+100【知力】0+100
【健康状態】良好
【空腹状態】やや減っている
【スキル】寄生レベル4 継承レベル1
     捕食レベル1 酸攻撃レベル1
     氷魔法レベル1

 おお! なんじゃこれぇぇぇぇー!

 これって凄くない?!

 いかにもっていうスキルをゲットしちゃったし、レベルアップしているし、数値も上昇してるぅぅー!

 てか、この子……3つもスキル持ってたの?!

 えっ!? なんで!?

 とか言っても、仕方ないかー。
 このスライムもそれなりにスライム生を生き抜いてきたってことだよね……うん、私も頑張らねば。

 私は改めてステータス画面を見つめる。

 えーっと、たぶん……プラスってなってるのがスライムのステータスなのかな?

 というか、やっぱり強くなれるのかー!

 ステータスやレベルがある時点でわかってはいたけど、こういうふうになるとは……。

 あ、でもでも! 姿を変われるのはナイスだよね。

 真面目にイケメン、イケジョ、もふもふ狙えるかも知れないし。

 カメレオンおしゃぶり生も夢じゃないのかー!

 そう、異世界に転生したおしゃぶりは7つの姿を隠し持っていたのだ。

【ほのぼのおしゃぶり転生日記始めました】

 とか、いうタイトルで物語が始まっちゃう?

 ふふっ、ここでもオタクのイマジネーション力が爆発してしまった。

 仕方ないよね、異世界だし、なんかスキルとかゲットしちゃったし、不思議すぎる経験しちゃったんだからさ。

 というか、今現在もドーパミンドバドバ状態です!

 そんな私だけど、少し気になることがあった。

 それはレベルアップの条件についてだ。

 普通の異世界転生とかでの、レベリングとなると魔物と倒すっていうのが、条件だよね……。

 けど、私がこの世界に来て倒した魔物は0だし、いや今こうやって私《おしゃぶり》咥えている私《スライム》を倒せているなら、1匹ってなるだろうけど。

 それでも、1匹でしょ?
 いくらレベル1だからって、そんな簡単にレベルアップはしないよね。

 じゃあ、レベルアップはやっぱり咥えられたからかなー?

 まぁ、咥えられたというよりは、咥えさせたっていう表現が正しいか。

 って、まだよくわかんないけどね。

 けど、レベルアップに伴う数値上昇についてなんとなく予想はついた。

 あくまでも、仮説でしかないけど、咥えられるまでに何をするかで、その上昇率は変わるっぽい。

 走ると【体力】が、スキルを使うと【魔力】が、当然だけど攻撃を仕掛けると【攻撃】が、躱したり避けようとすると【敏捷性】という感じに。

 きっと、他のステータスも特定の動作や、何かがあると上がるのだと思う。

 こういう時の順応性は、オタクだったからこそだよねー。

 うん、うん!

 また、色々試していこうっと!

 私はもう一度ステータス画面に目をやる。

 って、【健康状態】に【空腹状態】文字が書かれているじゃないかいー!

 これでようやく、生きているって言えるよね!

 ね? ね? ね?

 だってさ、普通は生きていれば体調は悪くなるし、お腹が減るしね。
 あ、もしかしたら、睡眠もできるかも。

 ふぃぃぃー! 私は生きてるぅぅぅぅー!

 いや……いや、待て! 私。

 また、これってツッコミ案件じゃない?!

 私ってさ、おしゃぶりからスライムになったわけじゃないの?!

 というか、百歩譲っても【個体名】スライムであるべきでしょ! 【個体名】おしゃぶりがスライムに寄生中ってなに?!

 しかも、【種族】まだ物まんまだし。

 とか、なんて考えていたら、ステータス画面の端に自分の顔が映った。

《えっ!?》

 私はそのフォルムに思わず釘付けとなる。

 だぁーはぁぁぁー! か、可愛いぃぃぃぃー!

 青みがかったぷるぷるのもち肌癒やし系スライムにおしゃぶり……最&高の組み合わせ……だ。

 恐ろしいや、異世界……日本のゆるキャラを超える可能性がここにあったんですね!

《やぁ、私は悪いスライムじゃないよ!》

 ふふっ、言ってやった!

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