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ある一件のメッセージからの学び

先日私のホームページに、ある一件のお問い合わせが来た。件名は「ありがとうございました」。一体?何だろう?と思って開くと、


「HPで川島さんのお名前を見つけて、ご連絡させて頂きました。半年前、評価者育成研修でお世話になった○○の○○と申します。その節は研修で 大変お世話になりありがとうございました。あの時、川島さんと出会ったお陰で、手を焼いていた女性スタッフともあれ以降、うまくやれています。私の話に全く耳を傾けなかった彼女でしたが、今や何でも悩みを相談してきてくれます。そして私もお陰様で昇格し、新たな店舗に赴任することになりました。これからも頑張ります。どうしてもありがとうを伝えたくて、このような形でのご連絡させて頂きました。」


んー、あー、きっとあの時の方かな。とても真面目で、律儀で、一生懸命で、店の売り上げを上げていこうと意気揚々と頑張っていた30代の男性の顔をふと思い出した。きっとそう、一番前の島の私から見た左側に座り、メモを熱心に取りながら研修に参加していた彼だ。(毎月、それなり数の受講者さんに会うが、印象に残っている人って思い出すものなのね。)


彼に想いを馳せながら、彼の成長を祈りながら、今日は彼への想いを胸にnoteを書いてみたいと思う。

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研修で、私が最も大事にしているのは、私と受講者の距離。上に立たず、同じより良き未来に向かって頑張って生きる同志として、フラットな関係を意識しているので、自慢かどうかわからないが、休憩時間や受講後のQ&Aが後を絶たない。人事から「延長お願いしてもいいですか」と依頼を受けて研修終了後に30分延長してQ&A対応を受けることもあるぐらい。(※まあ、コロナでこんなことはできなくなっちゃったけどね。)

当時を思い出しながら、こんな会話をしたな、を書いてみたい。

研修の昼休み時間に「ちょっといいですか?」と言ってきたその彼は、私の記憶が正しければ、20代のアルバイトスタッフの女性に手を焼いていた。彼曰く、頭の切れる、我の強い、自信に満ち溢れた(ように見える)彼女は、店長である自分をまるで小馬鹿にしているかのようで、指示を出しても、なかなか聞いてくれないし、平気で遅刻をしてくる。その癖、店の裏ボスのような存在で敵に回すことも出来ず、どう関わっていいか困っていて、人の心を掴む技、など一通りの本も読んで勉強したと言っていた。


「ちょっといいですか?」と言われて、5分ぐらいだろうか。私は一生懸命に伝えようとする彼の思いのうちを聞いていただけだった。ひとしきり話が終わったかな、と思われたので

「そうだったんですね。どう、全部言いたいこと言えた感覚ありますか?」

そう聞くと、

「あ、はい。自分の悩みは全部・・・こんな話を聞いてもらっちゃってすみません。誰にも相談できてなくて。ちょっとスッキリしたと言うか。」

そこから更に聞いてみた。

「ちょっと興味があるので、一つ質問してみてもいいですか?○○さんから見て、我が強くて、自信があるように見えるその彼女は、一体「何」が欲しくて、そんなに人に対して強く出てしまうんでしょうね。」

するとである。

「『何』が欲しい?え?『何』、何だろう。地位?社員になりたい?自信?違うな。うーん、自分の思い通りにしたい、いや自分を理解して欲しい、ってことでしょうか。

そうか、彼女は自分を理解して欲しい、って言うことは理解してもらえていないと言う前提に立っていると言うことか。・・・自問自答が続く・・・」

あ、あの自信があると思っていたけれど、本当は彼女、自信がなかったからあんな態度に出ていたのでしょうか。」

そこでもう一つ聞いてみた気がする。

「その彼女を取り巻く人間関係を観察したことはあります?スタッフ、  友達、両親、彼氏、まあ誰でも。」

するとである。

「お母さん、そうお母さん。仕事中によく彼女、お母さんから電話がかかってくるんですよ。何時に帰ってくるの、とか何を話しているのかわからないけど、何であんな歳になって仕事中にお母さんと話をしているのか、って疑問に思っていたのですが、何か関係あります?かね。」

評価者研修自体が、自立した部下を育成するためのコミュニケーションを取り扱ったものだったので、「研修終了後にもし何か手がかりを見つけたら是非教えてくださいね。」と伝えて、一旦そこで話を終えた。


そして研修終了後に、再度やってきた彼は私に向かってこう教えてくれた。

「川島さん、よく分かりました。彼女は自分で物事を決めて、行動する経験をあまりしてきていない、実は自信がない子なのかもしれませんね。今度、ゆっくり時間を作って、今の仕事でどんなことをしたいのかとか、困っていることがないか、聞いてみようと思います!物凄い力をもらいました。ありがとうございました。」

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気づいて学ぶ。受講者主体、受講者主役の学びってこう言うことだと思う。「部下の話はちゃんと聞きましょうね」「一方的に話すばかりではなく質問で引き出しましょうね」そんな講師主体の話は、いっとき側頭葉に知識として入るけれど、それまで。スマホから取り込むその他の情報と同じく埋没する。

だからこそ、自分で問題意識、当事者意識を持って「問い」に向き合わせるきっかけを与え、それに対する「解」を探しに行く旅に出す、そのジャーニーこそが研修という場がもたらすことができる受講者への価値なのだと思う。

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その後、あの彼は、どんな葛藤を抱えながら、どう自身に向き合いながら仕事に取り組んだのだろう。必ずしも誰もがこうした問題意識、当事者意識を持って部下に関わるとは限らないが、人にはそれぞれ変化したいというきっかけ・タイミングがあり、彼はベストタイミングで研修に臨んだ、というわけだ。

人は自分が「変わりたい」と思うタイミングでしか変わらない。そして、前にも書いた通り、相手がそういう行動を取るには「それなりの理由」がある、ということを肝に銘じて、「あの子だめだわ」「言っても聞かないわ」と白黒決めつけるのではなく「色々大変だったんだね。大変な傷を負って今まで頑張ってきたんだね。」と「許す」。そして相手が本質的な幸せにたどり着くことを「祈る」。

そう、私の研修の師匠が教えてくださったように、研修とは「受講者の幸せなライフを祈る場」なのだ。だって私たちは「幸せ」になりたくて生きているのだから。毎日頑張っているのだから。


私たちが人に対してできることは相手の成長を信じて祈ること。改めて彼からもらった1件のメッセージで気づかされた。本当にありがとう。日々受講者に成長させていただいている。

この仕事はやっぱり私にとって天職だ。幸せ♡




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