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100年前に本当に起こったある女性の物語(前編)

100年以上前の話。

園さんは瀬戸内の島の網元の娘として生まれた。

彼女の父は地元でも手広く漁場を仕切る網元だったので、子供時代は何不自由ない暮らしが出来ていた。

網子達やお手伝いさんからも可愛がられて幸せな日々を過ごす。

彼女が年頃になり地元の名士の息子と縁談話が持ち上がった。

両家はその縁談をたいそう喜び

園さんはその人と結婚することになった。

結婚相手とはお付き合いをする期間もなく、お互いのことはほとんど分からなかったが、相手は園さんをとても愛しんでくれた。

そして園さんもその人を好きになった。

そのまま幸せな日々が続くかと思われたが・・・

二人の間には3年経っても子供ができず

「嫁して三年子なしは去れ」と昔の残酷な風潮で

夫は園さんが好きで別れたくはなかったのに

「跡取りが生まれないのは家が絶えることだ」と

周りの親戚一同からの圧力で二人は離婚させられた。

後に園さんはある男性と再婚するのだが、その人との間には4人の子供を授かった。

園さんは実家に戻ったがその当時、出戻り娘の立場はあまりにも弱かった。

程なくして再婚話が持ち上がる。

その人は奥さんを亡くして3人の子持ち男性で

仕事の為に台湾で暮らしていると言う。

昔は女性が自立して一人で生きていく道などほとんど無かった。

園さんに選ぶ(決める)権利などはなく話は進められ

まもなく、園さんは相手の写真を持たされて台湾へと船で向った。

一度も会った事もない男性と結婚する為に、たった一人で異国の地に向かう気持ちは、想像するだけでも心が痛くなる。

台湾の港で待っていた再婚相手は確かに写真の男性だったが、

二十年も前に撮られた写真だったとその時分かった。

園さんは一瞬このまま船に乗って日本に帰ろうかと思ったが

それでも日本に戻ることを諦めて

彼女は見ず知らずの土地、台湾で初めて会った男性と新しい結婚生活を送ることになった。

続く・・・


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