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しょくざいの所信表明

NHK「きょうの料理ビギナーズ」の、エピソード見出しが好きだ。

わたし自身の料理は、ほかほかご飯にトマト系パスタソースを混ぜたものに、溶き卵をレンジで凝固爆発寸前までチンしたものを乗せて「火を使わないオムライス」とひとり悦に入るレベルなので、始まってすらいない。

見出しはだいたい、「仕上げ方+その日メインになる食材/料理名」
という構成なので、捉え方によっては食材の所信表明のように聞こえて、急に愛おしくなる。
食材の部分を人の名前だと思って読むと、絵馬が見えてくる。
新年に願をかける食材の姿。
食材として台所劇場 まな板ステージにあがったからには、輝きを放ちたい。たしかに、彼らにとっては人生でただ一度のオンステージである。

たとえば

体にやさしいおうち中華 (1)
「ふわっとやさしく 卵」

つい殻を作ってしまう取扱い注意なわたしだけど、本当はやさしくなりたいんです。

という、ちょっと控えめな願掛け。

体にやさしいおうち中華 (3)
「プリッとおいしく えび」

海の中を泳ぎ回って蓄えた筋肉。誰よりもプリッとおいしくなりたい。伊勢のやつには負けるけど。

若さ溢れる感じ。個人的に、「えび」が平仮名なのが余計かわいい。

フライパン一つで 秋おかず (2)
「ふっくら おいしく さけ」

お刺身もおいしいけど、焼くと食感が変わるから、ふっくら仕上がりたい。

えび とまた違って、ベテランの余裕を感じる。

体にやさしいおうち中華 (2)
「温でも冷でも! 豆腐」

色白で力に弱くて地味なぼくだけど、見かけによらず万能だから、アイスでもホットでもいけるよ。

栄養面でも優秀だし、応援している。

今年こそ!はじめてのごちそう (1)
「パリッとジューシーに! ローストチキン」

これは食材ではなく料理だが、はじける希望。
君ならきっとなれる。

「ひき肉料理の王道 ハンバーグ」

大きく出た。野心あふれる決意。
大丈夫、君はもう王道。そぼろの追随に気をつけろ。


ここまで所信表明されたら(ポテンシャルを最大限引き出すことはできなくても)食べ残すわけにも、棄てるわけにもいかない。

食品ロスが問題になっている。まだ食べられるのに棄てられる食材たち。
舞台に上がっても、幕が開かずに上手下手へ捌ける料理たち。

だからわたしは、今日も食べられる量だけを残さず食べて、贖罪する。

パン&スープで軽やか食卓 (1)
厚切りパンで ピザトースト」

これは…ピザトーストのオーダー?

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