しえ

会社員です。 うつくしいものと、おいしいものと、おかしなものが好きです。菓子や歌詞や瑕…

しえ

会社員です。 うつくしいものと、おいしいものと、おかしなものが好きです。菓子や歌詞や瑕疵に関する内容が多いです。 ほぼ日曜更新、書いていることは一個人の見解です。

最近の記事

萩の月にせまられたい

どうやら、わたしより先に杜の都を気ままに旅して廻ったひとがいるらしい。 先週のちんすこうに続き、出社したらデスクに銘菓が。 燦然とかがやく、菓匠三全 萩の月。 奇しくも、中秋の名月が目前である。 小さい秋見失った状態だが、おみやげが着々と季節をすすめてくれる。 すこし離れたところで、諸先輩方が 「萩の月ィ~!だいすきィ~!」「冷やして食べよう」「名前書いておかないと!食べられちゃう!」 と沸いていた。 手にした瞬間から守り抜きたい、手のひらの月。 (ほぼ)みんな

    • フルーツ白玉と金楚糕

      会社のデスクに置かれていたこれを見て、「ああ、無事に帰ってきたんだな」と思った。 同僚が、休暇で沖縄へ旅立った。 その直後、迷子の台風が天気を翻弄したため、無事に東京へ帰ってこられるかどうかみんな気にかけていた。 彼女は営業職なのであまり顔を合わせることがなく、デスク上のちんすこうで無事に帰ってきたことを確認。 あとで聞いた話だと、延泊はしたものの現地はずっと晴れており、なんだか悪いことをしている気持ちになっていたとか。 永年勤続の休暇なのだから、堂々と帰ってきたら

      • 潮彩香るレモンプリン

        早いもので、もう9月。 遅い夏休みが近づいている。 今年は所用もあり、仙台に行く予定だ。 いろいろ名所を調べているが、Google Maps上で保存しているのは仙台のフルーツパーラー、洋菓子店、和菓子屋ばかり。 旅の醍醐味、風景より味覚。 そういえば、一般的な夏休みの終わりとともに、これはもう一回食べたいと思っていた季節限定プリンも去ってしまった。 その日は蒸し暑かったので、MARLOWEで《湘南ゴールドのジュレ》を買うぞ、と息巻いていた。 湘南ゴールドは、温州み

        • 赤い彗星のザクロ琥珀

          百貨店の、銘菓百選や諸国銘菓が好きだ。 全国の選りすぐりのお菓子が集まっていて楽しいので、用もなく立ち寄りがち。 なにかいいものあるかな、とうろうろしていると、一角に各地から集めた琥珀糖のコーナーが。 青や白などの涼しげな色合いや、パステルカラーのかわいらしい色合いに混ざって、それは文字どおり異彩を放っていた。 本来の意味とはちがうが、紅一点。 柘榴琥珀。 〇〇のしずく、とか、〇〇のかけら、とか、キラキラネームを授けられがちな昨今の琥珀糖界隈において、直球のネーミ

        萩の月にせまられたい

          記憶がたびする美術館

          AIで写真を動かす、という技術を最近よく目にする。 すごい技術なのだけれど、しばらくすると人物の顔や服装が溶けるように変わったり、背景や登場人物がグラデーションのようにすり替わったりする。 情報がない部分は、AIが想像で創り出すからいたしかたない。 あの奇妙さ、夢の中に似ているなと思う。 昨夜の夢は、TT兄弟、もとい、チョコプラのふたりが街ぶらロケしているところに出くわす、というものだった。 ところが、ふたりはいつの間にか知らないおじさんにすり替わっていて、街もちが

          記憶がたびする美術館

          竹に惹かれて、報国寺

          一度行ってみたいと思っていた場所に、ふと思い立って行ってきた。 竹林が有名な、鎌倉の寺である。 地元なのに、行ったことがない。 なぜか竹に惹かれる。 通っていた幼稚園の裏が竹林だったから、原風景になっているのだろうか。 はたまた、「竹は根を張ってて倒れにくいから、地震が来たらつかまるのよ!」と親に言われて育ったせいで、竹に絶大な信頼があるのだろうか。 地震の時は竹薮に逃げろという言いまわしまであるくらいだから。 鎌倉といっても、報国寺は鎌倉駅からバスで約12分。歩

          竹に惹かれて、報国寺

          楽しめたかもしれない

          中学生のとき、夏休みに「美術館か博物館へ行き、レポートにまとめる」という宿題が出た。 親に連れられ、自宅からいちばん近い横浜美術館へ。 ブロンズの彫刻がたくさん並んでいて、館内はひんやり涼しく、ひかえめな照明が心地よかったのを覚えている。 時は流れ、今度はわたしがその宿題の引率をすることになった。 姪(以下N)が通う中学でも、同じ宿題が出たからだ。 よく美術館に行ってるから、という理由でわたしに役目が回ってきたらしい。 うれしいご指名。 Nは幼少期からイラストが

          楽しめたかもしれない

          北の国からデカメロン

          北海道営業所の方と、ひととおり仕事の話をし終えたあと、唐突に 「あっ、あの、メロン食べますか?」 とたずねられた。 親戚にメロン農家さんがいらっしゃるそうで、毎年4~5個送ってくるのだとか。 それを、おすそわけしてくださるとのこと。 メロンのおすそわけ! 愛媛県民にとってみかんは買うものではなく貰うもの、とどこかで聞いたような気がするが、道民の方はメロンがそういうあれなんだろうか。 規模がちがう。 「親戚のメロン農家がさ~」とか、一度でいいから言ってみたい。

          北の国からデカメロン

          マーロウ、それはもう

          誕生日と地元が近くて、年齢と名字が一緒の友人と、毎年誕生月におでかけをしている。 美術展に行ったり、和菓子をつくったり、ほんのちょっとだけ非日常を味わう。 今年はどうしよう? 日程は7月15日にすんなり決まったのに、場所がなかなか決まらない。 7月の3連休は天候が崩れがちだから、歩き回るのは避けたい。暑いし。 考えあぐねて壁に視線をやると、ガチャで取ったビーカープリンのミニチュア(のおじさん)と目が合った。 そうだ、マーロウの本店レストランはどうだろう。 今年創

          マーロウ、それはもう

          スコーンサンドの憧憬

          マリトッツォを見かけなくなって久しいが、ちまたではとにかく何かをはさんだものが目をひく。 わかれ、あれば、であいあり。 あんバタースコーンサンド専門店『an and an(アンアンドアン)』。 横浜の百貨店に催事で出店していて、その見た目に吸い寄せられた。 ちいさいのに、ぶあつい。シンプルなのに、見ごたえ。 コロナ禍の来客減少をうけ、地元を盛り上げる商品をつくりたい、という思いから、なんと和歌山県のスナックで誕生したという。 もとが洋菓子店ではないためか、2024

          スコーンサンドの憧憬

          さながら短冊のようで

          こんなに天気がよくて灼熱の七夕は、物心がついてから初めてだ。 どんなに暑くても、天の川は干上がらない。 むしろよく見えるはず。 国立天文台のホームページをみていたら、あまりにも現実的な記述があって、遠い目になってしまった。 とても無理なのです、と。 スピッツの『スピカ』の詞をかりて言い換えるなら、幸せは途切れながらも続くのです、と(この曲は七夕リリース)。 ところで、この暑さの方がとても無理なので、空調の効いた部屋で書類整理をした。 捨てはしないものの、1カ所にま

          さながら短冊のようで

          あまじょっぱいは正義

          上半期の一大イベント、健康診断が終わった。 待合室に座っているひとは、みんな生気を失っているように見える。 朝早いし、食事抜きで空腹だから、おのずとそうなる。 今年は肺機能検査があった。 機械につながった筒をくわえて、鼻をつまんで口から思い切り息を吐ききるだけの、簡単な検査。 若い検査技師さんに「もっとはけるはず!」と励まされるも、お腹がすいて力が入らない。 空も飛べるはずみたいに言わず、そっとそばで笑っていてほしい。 スタンプラリーのように検査を終え、ラスボスの

          あまじょっぱいは正義

          まるごとみかんジュレ

          「やきとり一年」 電話中の採用担当から急に発せられた、気になるワード。 わかっている。 派遣かマネキン会社とやりとりしており、応募者の職歴をたずねていたのだろう。 紹介いただいた方は、やきとり屋さんで一年の勤務経験があるのだ。 わかっているが。 「やきとり一年、あげもの二年、三年経ったら即店長♪」 と、脳内で勝手にカロリーの高い替え歌が流れてしまう。 あの、関東ではおなじみのカステラのCMソングにのせて。 本当は「カステラ一番 電話は二番 三時のおやつは文明

          まるごとみかんジュレ

          人生2周目の新入神へ

          入社2年目の人から突然、 「課長から〇〇さんに送るよう指示いただいた、トルテの画像です。よろしくお願い申し上げます」 と丁寧なメールがきた。 …??? たのんでいない。 そもそも画像は自分で探せるから、課長がわたしへ送るよう指示する理由が分からない。 彼は、2年目にしては仕事の覚えが異様に早くて、話し方やたたずまいが公共放送のベテランアナウンサーのように落ち着いている。 人生2周目なのでは、と疑ってしまうほど。 おまけに彼の名字には「神」という漢字が入っている

          人生2周目の新入神へ

          天空の贈り物展をみた

          「今日は17時半頃に国際宇宙ステーションが見えるから、興味あればご一緒に」 と職場で声をかけられたのは、ちょっと外へ出るにもダウンコートが必要な季節だった。 無機質な数字が並ぶExcelを放置して、寒空の下へ出る。 日が沈んだばかりの空は、群青色に晴れわたっているが、星は見えない。 ややぽっちゃりした三日月だけが、ひときわ明るく輝いている。 ほどなくして、高いビルの影から小さな光の点がスーッと出てきて、月の下を通過した。 あれが国際宇宙ステーション「きぼう」か。

          天空の贈り物展をみた

          初夏を告げる文鳥羊羹

          地下鉄の入り口に、ツバメがかえる季節がやってきた。 近くの田んぼは無事に田植えが終わったようだし、ヤマブキもあざやかに咲きほこっている。 ここは緑豊かだから、野生動物の子育てには安心安全の町なのだろう。 駅側の配慮で巣の下には台座が設置されているから、いろいろ落ちてこなくてヒトも安心。 数週間前はかすかな鳴き声しか聞こえなかったのに、気付けば巣からあふれんばかりのムクムクたちが、親鳥の帰りを待っている。 こんな感じで。 以前、あまりのかわいさにパケ買いした金沢の文

          初夏を告げる文鳥羊羹