あまじょっぱいは正義
上半期の一大イベント、健康診断が終わった。
待合室に座っているひとは、みんな生気を失っているように見える。
朝早いし、食事抜きで空腹だから、おのずとそうなる。
今年は肺機能検査があった。
機械につながった筒をくわえて、鼻をつまんで口から思い切り息を吐ききるだけの、簡単な検査。
若い検査技師さんに「もっとはけるはず!」と励まされるも、お腹がすいて力が入らない。
空も飛べるはずみたいに言わず、そっとそばで笑っていてほしい。
スタンプラリーのように検査を終え、ラスボスの胃カメラへ立ち向かう。
検査の同意書には「うどんくらいの細さのカメラを挿入し」とか書いてあるが、初心者が打った?と思うくらい極太のうどんに、毎年えづきまくりで悶絶。
特に問題なし、で無事終わる。
今年もがんばった。胃カメラ、よいお年を。
開放感で満ちあふれながら、駅ビルで弁当を買ったり、とうもろこしの天ぷらを買ったりした。
喉麻酔が効いているため、検査後1時間は飲んだり食べたりできない。
空腹と暑さでふらふらで、重たいものを持ちたくなかったため、おやつはコンビニのこれ。
出勤時、お昼のついでになんとなく買い、リピートしているファミマルの一味。
手頃で素朴なのに、小腹が空いたとき、うまい具合に満たしてくれる。
そのはまり具合、いわばテトリスの「うわそれかよ」がすき間なくはまったときの快感。
《濃厚ミルクドーナツ》は、これ以上ないくらいシンプルな、ザ・ドーナツである。
108円という値段に惹かれ、小腹満たし目的だけに食べたのだが、牛乳と生クリームが入っているそうで、味はしっかり濃厚。
むかしなつかしい甘みが広がる。
目にはさやかに見えねど、ドーナツの円周についている砂糖のシャリシャリ感と、しっとりした生地の相性がいい。
このご時世に、これで税込108円だからリピートしてしまう。
200円超えてきたら、ちょっと考える。
《焦がしキャラメルのスティックフィナンシェ》は税込150円。
スティックタイプで食べやすそう…と思い、本当に何気なく買った。
そして何気なく開けたところ、キャラメルの香りがホゥーンと飛び出した。
あキャラメルだったのか、と、この時点ではまだ油断していた。
口に放り込んだら、もちっとした食感に、ちょっとみたらし団子のおもかげも感じるような、甘塩っぱさ。
甘塩っぱいは正義。
くじびきが当たったときのようなベルが、脳内で鳴り響く。
自家製の焦がしキャラメルと、ロレーヌ岩塩が生地に練り込まれているらしい。
150円に、練り込みすぎていやしないか。
どの時点の自家製なのかよく分からないけれど、これは200円くらいでも買う。
ブラスチックトレーが折れるので、手を汚さずに片手で食べられるのもよい。
岩塩が効いているからか、喉の奥に残りがちなキャラメルの強い甘みが、スッとキレる。
どちらも、空腹と開放感でからっぽになった胃に染みわたった。
血糖値の爆上がりが怖い。
そういえば、前に一度だけ行った検診センターは、検診後にクッキーをくださった。
ここでは、かつて自社のお菓子も使って頂いており、新入社員のころは注文を受けるたびに「なぜ検診センターでこんなにお菓子を使うの?」と思っていた。
本格的な健康診断を受けるようになり、ようやくこのサービスのありがたみが分かった。
ここ数年は胃カメラ費用が安い総合病院で受診しているため、当然おみやげはない。
来年は検診センターにしてもいいかな、と思いながら風呂に入ると、脇腹にぬるりとした触感が。
心電図の電極をつなげるためのシールが、1個張り付いたままだった。
総合病院もおみやげがあった。