神戸から、あらりんご
旅の行程を決めるとき、同時におみやげもアタリをつける。
やはりその土地でしか買えないものがいいし、なんならまだ広く知られていないものがいい。
おみやげがキマると、その旅も有終の美をかざれる気がする。
自家用にあれとこれと、会社にはなにがいいかな…と、考えるのも楽しい。
それ以前に、「あなたの見つけてくるものは大体おいしい」と言っていただけるため、荷物だけでなく、勝手に善意の圧も背負い込んで旅に出る。
兵庫県への旅をひかえ、おみやげ何にしようかなと考えあぐねていたある日、インスタのフィードにアップルパイがドンブラコと流れてきた。
店名はa_la_ringo、《あら、りんご。》。
流行りのトリッキーな店名は置いておいて、所在地は神戸。
川西のいちじくなら納得だが、神戸でなぜ、りんご?
店舗の公式サイトにはこう書かれている。
神戸・三ノ宮発の、青森りんごの専門店だった。
アップルパイの専門店は最近よくみかけるが、青森りんごの専門店というところが趣を異にする。
素材はりんごのメッカ青森、プロデュースはハイカラ文化のメッカ神戸。
現時点では、大阪・神戸・青森にしか常設店がないようだ。
奇しくも、わたしが旅に出る2カ月前に新神戸店がオープンしている。
渡りに舟とばかりに狙いを定め、新神戸駅で「青森りんごのアップルパイ」と、「りんごチョコサンドクッキー」を購入した。
6~7cm四方の立方体の小箱に、ドーム型のアップルパイがころん。
大きい箱に入ったおみやげは、鞄や紙袋の中でかさばったり、位置が限られてしまいがちだ。
でもこれはひとつひとつ小箱に入っているため、袋の中でテトリスできる。
並べて入れることもできるし、すきまに詰めることも可能だ。
がまんできなくなったら、新幹線のなかですぐ食べられるし、証拠隠滅できる。
青森りんごのアップルパイは品種別で、この日は紅玉とサンふじがあった。アップルパイといえば紅玉よね、と思い紅玉を選ぶ。
ホールのカットだと、先端が崩れたり、中身がひかえめに飛び出したりするが、ドーム型なので心配ご無用。
パイ生地のキツネ色と、りんごの半透明感が食欲をそそる。
ごろごろと入った紅玉は、シャキシャキ感を残しながらもやわらかい。
果汁感たっぷりで、持ち味のじんわり広がる酸味が贅沢に楽しめる。
シナモンが使われていないため、紅玉りんごのうまみが余すところなく感じられた。
りんごの隙間には、紫色の小さな果実が入っていた。青森産のカシスだという。
青森県は、日本最大のカシス生産地だ。
あおもりカシスは、「ここにしかない」を証明する地理的表示保護制度の登録第一号でもある。
りんご以外からも、青森の可能性を伝えたいというさりげなくも強い意志を感じた。
これらを、りんごにほぼ場所をとられてギュッとなっているダマンド生地が、落ち着いた甘みでまとめてくれる。
会社用には、小分けできて日持ちもする、りんごチョコサンドクッキー。これはまだ関西限定販売なので、希少価値がある。
パッケージには、これでもかというくらいりんごが描かれているが、クッキー自体は何の変哲もない茶色いまんまる。
個包装をあけると、りんごの華やかな香りと、キャラメルの香ばしい香りがふわりと漂う。これこそ、あら、りんご。
間に分厚いミルクココア色のチョコレートが挟まっており、正味1㎝くらいのボリュームだ。
チョコレート部分は青森県産のりんごパウダーを混ぜ込み、ミルクとホワイトをブレンドしたものを使用しているという。
姿は見えなくてもたしかに感じるりんごの酸味、まろやかでひかえめなチョコレートの甘み、クッキー部分のキャラメルの香ばしさ。
食べごたえはじゅうぶんなのだが、比較的甘さが抑えられているので、ついつい続けて食べたくなってしまう。
無事、職場のひとからは「おいしかった」「すごいりんごの味した!」と好評をいただいた。
キマッた。
またアタリのおみやげを発掘できたし、旅の荷物とともに、肩の荷もおろせた。
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