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勝敗と感情コントロール【サッカーW杯】

初戦突破がチームを勢いづけるというのは何となくわかる。では、ゲームに負けてしまった場合、選手の感情コントロールにはどんな戦略があるのだろうか。しかも日本代表という立場で。

三苫選手の卒業論文を調べながら、選手の感情コントロールの方がふと気になり、スポーツ選手に特化した心理学研究について調べてみた。

プロ選手は普段からメンタル面のトレーニングを受けているだろうし、日本代表という最高峰のチームなら然るべきメンタルケアが行われているはずだ。


■ 知らぬが仏 メディアストレス

タスク志向の方がエゴ志向よりもメディアストレスを感じにくい。

プロサッカー選手を対象とした研究における心理的要因の文献レビューより

タスク志向は目標の達成を重視する考え方、エゴ志向は周りの声や自分への評価を重視する考え方とでもいえば良いだろうか。どこか思い当たる節がある…。

勝てば賞賛、負ければ批判の嵐。メディアは視聴者に購読されやすい記事を展開するものだ。

メディアが絶賛すれば選手は「自分は特別な存在」と感じ、自己顕示欲が満たされる。賞賛批判も選手のストレッサーとなる諸刃の剣。ドイツ戦の森保監督インタビューにあった「一喜一憂しない」という言葉が響く。

なお、コスタリカはスペイン戦の後、国民の強烈な批判から遠ざけるために選手をメディアからシャットアウトしている。

SNSで責める論調の人々はそういう教育を受けてきた人なのかもしれない。サポーターの品格について考えさせられる。本当に選手を大事に応援しているかどうかは、負けた後の態度や言葉に現れる。

■ 高ストレス下の感情コントロール

プロサッカー選手を対象とした研究における心理的要因の文献レビューがあったので、隅から隅まで読んでみた。血中のコルチゾールを測定して、ストレス度合いを評価した研究まである。ストレスは目に見えないというけれど、実は可視化できるのだ。

コルチゾール:ストレスホルモンと呼ばれる。ストレスがかかると分泌量が増え、体をストレスから守ろうとする。

海外と日本では考え方や価値観に大きな違いがある。今のところ日本人を対象とした研究は数少ないが、今後日本人を対象とした研究が増えれば増えるだけ教育材料の充実が期待できよう。

ただ、想像するにトレーニングに忙しくする被験者を対応するのは大変そうだ。サッカーや身体機能を熟知した理学療法士からのアプローチなら持ちつ持たれつでうまく回りそうである。

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先ほどの文献レビュー表2-1の9番目に、イギリスの1部リーグに所属する男性21名を対象とした介入研究が挙げられている。主な結果には「自己開示を促す介入は、即時的なパフォーマンス向上には関連しないが、外国人選手をチームに溶け込ませるにあたって効果的であった。」とある。

W杯のように国内外から集まったトップ選手の団結力コミュニケーション力を高めようとした時、自己開示できるようなコミュニケーションの場を積極的に作っていくのだろう。

ゴールを決めた後の選手が、アシストした選手がかけ寄って称える腕を振り払って喜んでいる様子から、選手同士の人間関係を想像してみたりする。

選抜されるため、選手同士は互いに競争する立場にある。それ以外にも、

・経歴
・年齢
・所属リーグ
・W杯出場経験

など、人間関係に影響を及ぼす要素が大いにある。これらがバラバラなほうが多様性があって上手くいくのかも。

会社でも事務職vs技術職、正職員vs非正規職員みたいな構図を見たことがないだろうか。ガバナンスがしっかりしてないと、選手同士で良くない対抗心を産まれてしまうことだろう。

■ 失点が好発する時間帯

得点も失点もメンタルに影響する。

交通事故が好発する時間帯があるように、サッカーにも失点が好発する時間帯があるのではないか。

そんなことを調べた数年前の研究があった。順天堂大学の学生さんによる研究。

>> サッカーにおけるジャイアントキリングを起こすための最も有効な得点時間帯および得点数

FIFA ワ−ルドカップでは、後半戦から得点を狙いに行き試合終盤に失点しないことや、 延長戦では必ず失点しないこと、さらに 1 得点を守りきるか追加点を奪って 2-0 もしくは 2-1 で逃げ切ることが最も勝率が高いことがわかった。

サッカーにおけるジャイアントキリングを起こすための最も有効な得点時間帯および得点数 

判断しながら走り続け、モチベーションや集中力を同レベルで保つのは不可能。集中すべき時間帯がわかれば、適切な介入でミスをある程度回避することができる可能性がある。

統計を制するものがゲームを制す時代。何が起きるかわからない大舞台でも、できればチャンスタイムは知っておきたい。データ解析陣営についてもどこかで特集されて欲しい。

■ メンタルヘルスの4つのケアって?

プロサッカー選手を対象とした研究における心理的要因の文献レビューで、「プロサッカー選手においても、適切に対象者をアセスメントして介入を行うことで、感情のコントロールする能力を高めることが出来る可能性がある。」との一文がある。

表2-2の20にある、フィンランド、フランス、ノルウェー、スペイン、スウ ェーデンの1部・2部リーグに所属する男性540名を対象とした研究(2015年)の主な結果に、メンタル疾患の有病率は各国で11%~18%とあるのも見逃せない。約5〜10人に1人は何らかの障害を抱えるということになる。

今後さらに個々のメンタルケアが強化されることだろう。

>> メンタルヘルスの4つのケアってなんだろう?

4つのケアは私が約20年前に受けた就職試験でも出題された。

4つのケアの1番目はセルフケア。自らのストレスに気付き、予防対処すること。感情コントロールは日々のセルフケアの積み重ね。考え方はトレーニングで変えていくことができる(認知行動療法)。

それから、メンタルサポートは家族が支えになることが多い。家族は決してサンドバッグではないことに注意が必要だ。家族より少し距離が離れた第三者のほうが長期的に安定したサポートを得られる場合もある。


日本代表専属シェフ、西芳照氏のTwitter。日本代表チームを食から支えるお仕事。タンパク質多めで美味しそう!

あまり長く書きすぎてサグラダ・ファミリアのようになってはいけないので今日はこの辺で。


西シェフとガスパチョカラーを取り入れた見出し画像にしました★


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