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“森と街をつなぐ仕事”と出会えた日のこと

5年前の冬、20歳のころ。
ハチミツを食べた私は、そのあまりの美味しさに涙が出ました。

「ハチミツ食べただけで泣く??」
と、10人中9人には言われてしまいそうですね。
ただ、このときの体験が、いまの仕事につながっています。

    *      *      *

私が幼少期から憧れている、冒険家の植村直己さん。
植村さんは『青春を山に賭けて』という本を書いています。

私は10代後半から、自分には賭けたいものがあるのか、ずっと探していたようにおもいます。
大学の長期休みのたびに、あちこちに出掛ける日々。
自分探しをしていたつもりはないけれど、今から思うと長い長いトンネルでした。

そうして、ようやく。
北海道を旅行中に、立ち寄った図書館。
そこで手にとった本で、ハチミツに関する文章に出会います。
私の郷里・長野県の養蜂文化について書かれたものでした。
それまで養蜂やハチミツには全く興味がなかったのに、その文章が妙に心に残ったのです。
北海道旅行から帰ったら、長野県でミツバチを飼っている人に会いに行こうと決めました。

その後、長野県でハチ博士と呼ばれている方に会いに行き、
日本ミツバチの蜂蜜を、試食させてもらいました。

口に含むと.........
じわじわっと深い甘さが。
味覚に意識が全て集中して、そのあと体全体に染みわたってゆく感じ。

言葉にならない気持ちが込み上げてきて.........
涙をぬぐっていました。

今から振り返ると、あのときは野山のいろんな花から蜜を集めてくる日本みつばちの営みや森の豊かさが、味覚を通してガツンッ!と自分のなかに入ってきたのだと思います。
コンセントにさし込むように、森とダイレクトに繋がってビビビッ!と電流が走ったような。

自分の“賭けたいもの”をずっと探してきて、全国各地、時には海外に行ったけれど、実は自分の足元(生まれ育った土地)にそれはあったんだなぁ、と思わされました。

    *      *      *

ハチミツとの衝撃の出会いののち、しばらくは大学卒業後、趣味としてミツバチを飼おうと思っていました。
ところが卒業前の旅行中に、たまたま調べたハチミツ屋に求人が
ミツバチを飼いつつ、ハチミツを仕入れて販売や卸をしている会社。
ピン!ときて、応募・面接。
そして入社とスムーズに事が運びました。

植村さんの本の題名をもじると、「青春をハチミツに賭ける」日々のはじまりです。

花粉だんごをつけたミツバチ

ミツバチは巣箱から野山の花々を目がけて、懸命に羽を動かして飛んでゆきます。
私は時に野山で仕事をしながら、街なかでもハチミツを販売したり、業務用の卸に関わったり。
ハチミツの販売をしていると、ふと不思議な感覚になります。
森の奥から採られた、自然の恵みであるハチミツが、都会のテーブルにのることが不思議だなぁと。

今日も明日もあちこち動きながら、ハチミツにまつわるいろんな仕事。
なんだか自分もミツバチみたいだなぁと思いつつ、そんな日々にとてもワクワクしています。

    *      *      *

「どんな仕事に就きたいか?」という問い。
具体的な業種を見つけ出すのは、私にとっては難しいことでした。
でも、業種ではなく“どんな動詞を大事にしたいか?”と考え続けてきたように思います。

仕事を通して自分の大事にしたい動詞の一つを、ようやく言語化できました。

森と街をハチミツを介して、つなぐ

街に住む人にも、森の豊かさをガツン!と届けるお手伝いをしたい。
20歳の私が、味覚を通してとびっきりのゾワゾワを感じたように。

アカシアの花の咲くころ

そういえば。
先日のこと。
私の誕生日(3月28日)を知ったある人から

「誕生日も、み(3)つ(2)ばち(8)なんだね!」

と言ってもらいました。
自分でも初めて気づきました。びっくり。

これからも仕事を通して、野山(森)と都市部の間(あわい)を、ブンブン懸命に飛び回りますよ〜

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