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ふろむだ著(2018)『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ダイヤモンド社

錯覚資産という概念の面白さ

友人から本書を紹介されたので、kindleを使って購入してみた。
多くの人は、自分の目利きや評価について適正に行っていると思って疑わない人は多いが、その目利きや評価についても、無意識に歪められているということを本書が主張する錯覚資産という概念で説明出来てしまうのが面白い。

著者は「自分だけは大丈夫」と思っている人ほど、危ないと警告する。
何かその人について他よりも優れていると認識してしまうと、その人のやや劣った部分であっても優れている方にバイアスがかかってしまう。その見えない無意識のバイアスは認識の錯覚であり、この錯覚を上手く利用することで、人生のプラスを得ていこうというのが本書の大きな軸となっている。それを個人が持つ資産と考えると、錯覚資産という概念が理解できるということである。

その人の成果の部分にこの錯覚資産は多くを占めており、それがご自身のみの実力によるものだけでなく、上司や同僚、部下や顧客のお陰で達成できた実績だとしても、強烈な思考の錯覚を生み出すということで、身近なところでも決してそのプロジェクトをメインで仕切ったわけでもなく、お手伝い程度の作業をしただけなのに、そのプロジェクトは自分の統率力や技術力の成果が十分発揮でき完遂出来たなどと宣う輩が多いのも、その錯覚資産を自分の成果を盛るために本人が意識的に使っているのか、無意識的に振る舞うのかは別にして期待しているゆえのハッタリなのだろう…

ただ、その錯覚資産を持つか否かが、自身の発言の機会さえも与えられるか否かに関わってきたりするために、人間が社会生活をする上では、優位性として甲乙が発生してしまう…

まあテレビのコメンテーターが、本来はある分野の専門家でしか無いのに、他の専門外の分野の意見は素人同然にも関わらず、それなりに説得力があるかのように認識しているテレビの視聴者って実際のところ多いのではないだろうか? そのほとんどはコメンテーターのある分野の専門家という認識が、他のコメントに対しても、この人は素晴らしい意見を持っているという無意識の評価を加味していることに気づくべきだろう…
これは身近な経営者や管理職、はたまた人気作家、起業家、芸能人、有名コンサルタント、人気ブロガー、人気ユーチューバーにも当てはまり、これらのハロー効果も大きな認識のズレを生じさせる。

本書は時折ダニエル・カーネマンなどの論文を引用したりするが、これすらも著者そのものの錯覚資産を生み出す戦法だったりするのかも知れない。知らず知らず本書の内容を確からしいと信じてしまう効果はあるのだろう…

本書は錯覚資産と実力の関係にも考察が加えられ、実際の成功や失敗に関しては、実力以上の要因で決まっているとまで論じている。また、人間は自分で判断できない時は、自分で思考するのをやめて無意識のうちにデフォルト値を選んでしまうという内容も面白い。さらに自分に取ってメリットの大きいものはリスクが少ないと思い込み、逆にリスクが大きいものはメリットが少ないと無意識に感じ取るなどの内容もあり、なかなか飽きさせない内容が盛り沢山詰まっている。

世の中を優雅に歩き回りたい人には、一読していても良いかも知れない…
個人的には、本書でいう錯覚資産を得るためにも、実のところは最低限の努力は必要だと個人的には思う次第。錯覚資産が大半なんだから、努力なんてする価値がないと短絡した考えにはならないで欲しいと願う次第である。

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