酸化鉄

趣味でSF小説を書いています。

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マガジン

  • テスト的に連載しているやつ

    小説のコンテスト応募用作品でしたが、一時的に更新を停止しています。

  • SS置き場

    単発のショートショート。以下のリンクに改稿履歴を残しています。 https://github.com/Fe2O3-neko/ShortShort

  • 読書

    本についての記事置き場

  • [PoleStar2] ひとりぼっち王国(完結)

    SF短編小説。 機械の体に意識を移した人間が、ゆっくりまったり時間をかけて宇宙を観察、探索する話です。 以下に改稿履歴を保存(リポジトリ作り直して履歴が消えました…) https://github.com/Fe2O3-neko/Observer

  • [PoleStar1] 月猫(完結)

    月面旅行が一般化した時代、写真家の飼い猫であるロックが飼い主と一緒に月に行くSF短編小説。 SFですが難しい単語は全部スルーなのでSF不慣れな方でも読めると思います。 Githubに改稿履歴を保存…のはずが、コミットミスにより履歴が消えました。 https://github.com/Fe2O3-neko/MoonCat

最近の記事

second_test 04

部屋に転がった死体の検分をアオハにまかせて、ダミアンは部屋を見渡した。モニタの並んだ側の壁に別のドアがある。本来の間取りならキッチンへ続いているはずだが、この改造された部屋を見る限り、ただの住居ではないことは明らかだった。 「指紋は入り口のIDの人物と一致してるよ。網膜はないから分からないけど、この建物に出入りしてたIDは一つだけだからこの人のもので間違いないだろうね」 死体をスキャンし終えたアオハが言った。奥の部屋に続くドアを覗いているダミアンのほうへてくてくと歩いてくる。

    • second_test 03

      ダミアンが目を開けると、空はすっかり明るくなっていた。 ミッション予定時間は現地時間で午後八時。スペクターを目標まで送り届ければ三十分で終わる仕事のはずだった。 起き上がろうとすると全身の骨が軋んだ。思わずうめいて再び横になる。ひどくのどが渇いていた。両足の感覚が確かにあることを確認する。次に両腕。ちゃんと動く。あたりは静かだった。風の音だけが聞こえる。着陸直前に墜落した、というのはわかる。問題は「なぜ」だ。 記憶を手繰ったが、最後の記憶は自分をキャビンの床に押し倒すスペクタ

      • second_test 02

        TMW3サーバを抜けたアオハはプライベートサーバに移動する。地球の公園を模した、それほど広くない空間がレンダリングされているだけのエリアだが、アオハはここが気に入っていた。他の人間がいないので静かで、そしてなにより──公園の中央にある大きな欅の木の木陰に、巨大な猫が寝そべっていた。チーターほどのサイズだが、その姿はれっきとしたイエネコで、いわゆるベンガルと呼ばれる品種だ。シルバーの毛並みにグレーの模様がついている。 アオハは巨大な猫に近づくと、顔をむんずと掴んだ。 「ディーリ

        • second_test 01

          頭の横を通り過ぎた銃弾の風圧を感じて、反射的に悲鳴をあげながら地面に伏せた。顔を上げると、コンテナの陰に隠れた友人のアオハが「こっちへ来い」と叫んでいるのが見えた。 足に力が入らない。仕方がないので這って近づくと、いつの間にか目の前まで来ていたアオハにアーマーを掴まれた。そのままコンテナのそばまでズルズルと引きずられていく。ジェイはなされるがままになっていた。 アオハはジェイと銃を離すと、空いた両手でジェイの体をバシバシ叩いた。 「よし、怪我はないな。早く立って、敵が近いよ

        second_test 04

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        記事

          小説の管理をGithubでやっている話

          筆が進まないので今日は小説のバージョン管理の話でも書こうかと思う。 バージョン管理とは、聞いたことがない方もいるかもしれないが、ソフトウェア開発で良く使われているものである。大規模なソフトウェア開発では、何人ものエンジニアが一つのファイルを同時に変更することがある。そして「誰が」「いつ」「どの」ファイルを変更したかを確認するために使われているのがバージョン管理システムである。有名なところだとGitというシステムがある。詳しくはググってほしい。 Gitを使った最も有名なプラ

          小説の管理をGithubでやっている話

          黄泉の探索者-11[工業都市]

          異界の森林の中は、自分たちがたてる物音以外全くの無音だった。 「”植物が発する低周波のため、地上では短距離無線通信が使用できないことが判明した。その結果、我々はジンウー6を経由する衛星通信を都市との間に作ることにした”。ね。やっぱり植物のせいだったでしょ」 「納得できません。植物が電波を発するなんて」 「ニクスは頭固いなあ」 「そういう仕様ですから」 短距離無線通信が使えないので、三人は合成音声を発して会話できる範囲から離れないように移動していた。足場は密集した原生植物の

          黄泉の探索者-11[工業都市]

          黄泉の探索者-10[移民の痕跡]

          「これは……」 ニクスは枯れた木を分析しながら”驚愕”タグを送ってきた。 「ケヤキの木に見えますね。東アジアで一般的な樹木です。樹齢30年以上は経っていたかと」 「少なくとも30年間はここに人が住んでいたってことだね」 「そういうことです」 「さっさと下行こうぜ」 ディーリーは中庭に興味なさげだった。あとで中庭も調べましょう。ニクスはそう言ってアオハを階下へと急かした。 階下も研究室と私室を兼ねていたエリアだった。一部屋ずつ見ていったが、散らかっていて慌てて出ていった

          黄泉の探索者-10[移民の痕跡]

          黄泉の探索者-09[無限の電力]

          原生生物に覆われたそれは、たしかに建物だった。それもおそろしく巨大な建築物。 ニクスが照合した記録によると、基準時間で300年前の文明によく似た建造物らしい。ジンウー6が出発した年代からすると整合性が取れるのかもしれない。 ロケットの管制設備にしては大きすぎるので、なんらかの研究施設を兼ねていたか、住居もあるかもしれない、とニクスは予測した。 アオハを先頭にして、三人は建物に近づいて入り口探した。 蔓を切らないように慎重に取り除いて、三人はようやく入り口のドアを見つけた。

          黄泉の探索者-09[無限の電力]

          黄泉の探索者-08[宇宙港]

          当初の計画通りの日に戻ってきたディーリーと一緒に、三人はベガe2へ降りた。 中継機に行くには遠すぎて、予定通り惑星に降りるほうを優先することにした結果そうすることにしたのだ。 着地地点はジンウー6に記録されていた。頻繁に行き来していた記録と座標があったので、ひとまずそこを目指すことにした。 ディーリーの作った宇宙船は三人乗るには狭すぎて、アオハとニクスが文句を言った以外は特に問題もなく、三人はジンウー6の記録にあった地点へ降り立つことに成功した。 ただし、ベーシックの乗る

          黄泉の探索者-08[宇宙港]

          黄泉の探索者-07[ベガ]

          ──外部入力信号によりスリープ解除 「自身」が正常に起動したことを確認すると、次にドールを起動して立ち上がる。立った勢いでふわりと宙に浮いて、ゆっくりと着地する。 目の前にはニクスのドールがあった。膝を抱えて座った状態で静止している。 自分だけ起こされたのは、何か用事があるのだろうか?アオハはそう思ってディーリーを探したが、彼の姿が見当たらない。 「あれ?起こしたのはディーリーじゃないのかな?」 独り言をつぶやくと、申し訳程度に船内に残った酸素にのって音が反響した。

          黄泉の探索者-07[ベガ]

          マスク、どこにも売っていないのにみんなつけている

          マスクがどこにも売っていない。 今、世間では不織布マスクが大流行している。街を歩けば、すれ違う9割の人がマスクを着けている。 残りの1割は俺と同じはみ出し者だろう。 みんなこぞって、何かに取り憑かれたようにマスクを求めている。中には早朝から販売店に並んで入荷を待つ人もいると風のうわさで聞いた。 何か彼らをそこまでかき立てるのだろう。売っていないものを、みんなどんなマジックで入手しているのだろう。まるで就職と結婚のようだ。 人間誰しも一定の年齢になれば自動的に就職して社

          マスク、どこにも売っていないのにみんなつけている

          小説書き直したいけど、自分の文章読み返すのつらいなぁと思う週末でありました。

          小説書き直したいけど、自分の文章読み返すのつらいなぁと思う週末でありました。

          定期的アウトプットを目指すために、きちんと計画たてるのと推敲をしようと思います。

          定期的アウトプットを目指すために、きちんと計画たてるのと推敲をしようと思います。

          黄泉の探索者-06[時計塔]

          アイーシャとあんなにたくさん話したのは初めてかもしれない。ケヴィンは上機嫌で帰路についていた。普段は緊張して、注文するときくらいしか話したことがなかったのに。彼女はケヴィンが採掘し、トールが加工してくれたネックレスをとても気に入ってくれたようだった。 後でトールにもお礼を言いにいかないといけない。 「ただいまー」 そう言いながら玄関のドアを開ける。返事はない。 「ばあちゃん?」 なんとなく嫌な予感がしてリビングのドアを開けると、ばあちゃんは床で寝ていた。部屋には細い蔦

          黄泉の探索者-06[時計塔]

          しばらく更新間隔空きます。

          しばらく更新間隔空きます。

          黄泉の探索者-番外編「粒子αに関するレポート」

          惑星ベガe2に存在し、吸引することで無自覚の依存症を引き起こす物質を仮に『粒子α』と呼ぶことにする。 αは通常、肉眼では確認できない気体として存在するが、濃度が高くなると霧のように見えることがあるらしい。らしいというのは地上勤務の科学者から聞いた話である。通常の写真には映らないが、X線を照射すると僅かに映ることが分かった。この結果、ベガe2における人類の活動範囲ほぼすべてにαが存在していることが判明した。人類の活動圏外については調査困難なため、不明である。 αがいつからベ

          黄泉の探索者-番外編「粒子αに関するレポート」