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酒井順子(1966.9.15- )「人はなぜエッセイを書くのか 日本エッセイ小史 第十四回 女性エッセイ今昔」『小説現代』2021年11月号

『小説現代』2021年11月号
講談社 2021年9月22日発売
https://www.amazon.co.jp/dp/B09J7MJLL9

酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第十四回 女性エッセイ今昔」
p.362-368
2022年12月21日読了

1966年9月15日東京都杉並区生まれ
立教大学社会学部観光学科卒業なエッセイスト
酒井順子さんの連載作品。
この連載は2022年3月号で終了しています。
http://www.hatirobei.com/ブックガイド/作家から/酒井順子/雑誌掲載記事

酒井順子(1966.9.15- )
『日本エッセイ小史 人はなぜエッセイを書くのか』
講談社 20023年4月刊
224ページ 1760円
https://www.amazon.co.jp/dp/4065310067

「若い女性向けのエッセイというジャンルの存在感を
一気に世に知らしめたのは、
1982(昭和57)年に刊行された
林真理子[1954.4.11- ]のデビュー作
『ルンルンを買っておうちに帰ろう』
かと思われます。著者は28歳。

『週刊文春』での連載エッセイが
37年続いたことが
ギネスに認定されたことを記念し、同誌
[2021年1月14日号


https://www.fujisan.co.jp/product/1151/b/2064517/
ギネス記録認定&菊地寛賞受賞特別企画
阿川佐和子のこの人に会いたい 林真理子]

で阿川佐和子と対談を行った折、
林は「他人と同じことをしていたんじゃダメだ」
という感覚で『ルンルン』を書いたと語っています。

「当時売れていた二大女性エッセイストが
落合恵子[1945.1.15- ]さんと
安井かずみ[1939.1.12-1994.3.17]さん。
その二人と似たようなことを書いても
売れっこないって分析済みでした」と。」
p.363

1955年1月生まれの私は、
とり・みき(1958.2.23- )
「るんるんカンパニー」
『週刊少年チャンピオン』1980-1982
で、「るんるん」という言葉を憶えましたが、
同学年な林真理子さんの文章は
全く読んだことがありません。

「翌々年1984年には、林と同い年の
群ようこ[1954.12.5- ]が
『午前零時の玄米パン』でデビュー。
80年代末には、林や群より一歳年上の
阿川佐和子[1953.11.1- ]も、
エッセイの世界に参入します。
林真理子世代は一気に、
女性エッセイの世界を牽引するように
なるのでした。」
p.364

群ようこさんの文章は、
2020年12月に読んだ、
『たべる生活』朝日新聞出版 2020.11
https://www.amazon.co.jp/dp/402251731X
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/4816355418439059
が初めてでした。
お二人とも、お名前は1980年代半ば以降から知っていましたけど。

昨日読み終わった本。 群ようこ『たべる生活』朝日新聞出版 2020年11月刊。232ページ。 https://www.amazon.co.jp/dp/402251731X 「恋人の手料理/ビスケット、キャンディー/玉ねぎとキャベツは面倒...

Posted by Tetsujiro Yamamoto on Monday, December 14, 2020

「林達は「シラケ世代」よりも少し年上ではあるものの、
若い男性達がシラケていたのに対して、
女性達はシラケる暇がありませんでした。
女性達には、考えなくてはならないことがたくさんあったのです。

林真理子世代のエッセイの書き手は、
することも考えることもたくさんある女性達に、
寄り添いました。
彼女達のエッセイは決してシラケておらず、
読者と同じようにジタバタする自身の姿を
提示することによって、読者を励ましたのです。

『ルンルン』の、まえがきという名の宣戦布告にも、
「ヒガミ、ネタミ、ソネミ」を描かない
従来の女性エッセイストに対して、
「それがそんなにカッコ悪いもんかよ、エー」と、
啖呵を切っています。
『ルンルン』は世の女性達に、
「醜い感情も、黒い過去も、持っていて当たり前」
と思わせてくれました。

その後に続いた女性の書き手は、
自身が抱えるネガティブ要素も、
そしてそれに付随するダークな感情も、
隠さず書くことが当たり前になりました。
女性読者は、誰かから指南を受けるためではなく、
自分達と同じような問題を抱える女性から
共感を得るために、
エッセイを読むようになったのです。」
p.364-366


「津野海太郎(1938.4.6- )
以前、江崎泰子さんたちと
『子供!』[晶文社 1985.7]
https://www.amazon.co.jp/dp/B07H1S8VWM
というインタビュー集をつくったとき、
すでに小学生のときから、女の子たちが人間関係――
つまり友だちとか親とか先生とかとの関係に
つよい関心をもっていて、
表面に見えるものの裏を読む、
さらにそのまた裏を読むといった
繊細な技術に習熟しているのに
びっくりした覚えがある。

男の子たちはまったくの無能力。
女の子たちに一方的に内心を読まれているだけで
自分から人間関係の奥ふかいところを読みとろう
とする意欲がほとんど感じられない。

そのあとで
『家族?』[晶文社 1986.9]
https://www.amazon.co.jp/dp/479495817X
というインタビュー集をつくって、
おなじ傾向が大人になっても
そのままつづいていることに気づいた。

家族という関係について、
特定のとき、特定の場所で、
じぶんたちの関係になにが生じたのかを、
できるだけ具体的に話してもらおう。
そう考えてインタビューをはじめたのだが、
男というのは、この手の質問にはまったく対応できない。
仕事をはなれて、ひとりの人間として
家族や他人たちとむすぶ関係について、
具体的なことがうまくしゃべれれない。
じぶんの生活のなかでジックリたしかめてきた
という手応えがない。

あまりにむなしいので、
やむなく私が試験台になって
インタビューしてもらったが、
やはりだめだった。
私もまた、本やパソコンや仕事についてしか
いきいきと語ることができない
バカ男のひとりなのだということがよくわかった。」
「初歩のインタビュー術」
『思想の科学』1989年12月号
津野海太郎『読書欲・編集欲』晶文社 2001.12
津野海太郎『編集の提案』宮田文久編 黒鳥社 2022.3 p.53
https://note.com/fe1955/n/n58bcec8e9560

2022年5月に、
益田ミリ(1969.1- )
『こはる日記』KADOKAWA 2017.10
https://www.amazon.co.jp/dp/4040693892
https://note.com/fe1955/n/n76c4b1b03e5c

益田ミリ(1969.1- )
『マリコ、うまくいくよ』新潮社 2018.7
https://www.amazon.co.jp/dp/4103519819
https://note.com/fe1955/n/n2bacccf7e6c7
を読んだ時にも、
男女の置かれている違いに、
そしてその違いを意識していなかった
男性の自分に、
茫然となりました。
今の自分は?



「大正末から昭和初期にかけては、
自分の考えを書く女性が目立つようになった時代です。
1911(明治44)年、『青鞜』創刊。

1927(昭和2)年には、女性が書いた一冊の随筆が、
大ベストセラーになりました。
九条武子[1887.10.20-1928.2.7]
『無憂華[むゆうげ]』。
六年間で、360回以上も版を重ねることになります。」
p.366

「昭和初期には、
日本で初めての専業エッセイストと言うことができる
女性も登場しています。
森田たま[1894.12.19-1970.10.30]、
1894(明治27)年札幌生まれ…
初めての著書
『もめん随筆』を出したのは1936(昭和11)年、
四十代になっていました。
「○○随筆」「随筆××」といったタイトルの本を刊行していき、
「随筆」を看板に掲げて書いた、
日本で初めての女性と言うことができましょう。」
p.367

この二人は、名前だけは知っている、だけですねぇ。

読書メーター
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https://note.com/fe1955/n/nb74e11adb53b
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第一回 エッセイという謎」
『小説現代』2020年9月号


https://note.com/fe1955/n/n2a3ce8bcd110
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第二回 「随筆」と「エッセイ」の違い」
『小説現代』2020年10月号


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酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第三回 変わりゆく「コラム」」
『小説現代』2020年11月号

https://note.com/fe1955/n/ndcd7ce009b50
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第四回 「昭和軽薄体」の時代」
『小説現代』2020年12月号


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酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第五回 「つるむ」という芸」
『小説現代』2021年1月号


https://note.com/fe1955/n/n6a0ae45f68cf
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第六回 女性とエッセイ」
『小説現代』2021年2月号


https://note.com/fe1955/n/n2b00749ac50f
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第七回 女性とエッセイ・海外篇」
『小説現代』2021年3月号


https://note.com/fe1955/n/n5c0a4b4ecd7a
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第八回 エッセイブーム今昔」
『小説現代』2021年4月号


https://note.com/fe1955/n/na54aa3e73a49
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第九回 詩とエッセイ」
『小説現代』2021年5・6月号


https://note.com/fe1955/n/n5705cd226a2d
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第十回 作家の父とその娘」
『小説現代』2021年7月号


https://note.com/fe1955/n/n6a59e7ec672e
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第十一回 食エッセイ今昔」
『小説現代』2021年8月号


https://note.com/fe1955/n/n5d03c88b0854
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第十二回 芸能とテレビ」
『小説現代』2021年9月号


https://note.com/fe1955/n/nb6183f6eed79
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第十三回 シラケ世代の脱力エッセイ」
『小説現代』2021年10月号


『小説現代』2021年11月号 講談社 2021年9月22日発売 https://www.amazon.co.jp/dp/B09J7MJLL9 酒井順子「人はなぜエッセイを書くのか 日本エッセイ小史 第十四回 女性エッセイ今昔」p.362...

Posted by Tetsujiro Yamamoto on Tuesday, December 20, 2022

tps://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/pfbid02tHuy1a9fp2m8ohJoATQYzvUixVXdTVut5VW4AEM56au5fiLFHS29yet3Cs5JvjDVlhttps://note.com/fe1955/n/n1474f3c18934
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第一回 初めての女性誌連載」
『小説新潮』2022年8月号


https://note.com/fe1955/n/n5789709a4899
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
 第二回 『ゼロの焦点』の表と裏」
『小説新潮』2022年9月号


https://note.com/fe1955/n/n3f15b2dc39d9
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第三回 お嬢さん探偵の限界」
『小説新潮』2022年10月号


https://note.com/fe1955/n/nd73f79dc9dd9
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第四回 初めての恋愛小説」
『小説新潮』2022年11月号


https://note.com/fe1955/n/ncc1a2176c33c
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
 第五回 転落するお嬢さん達」
『小説新潮』2022年12月号


https://note.com/fe1955/n/n644b2c0ce468
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第六回 『婦人公論』における松本清張 1」
『小説新潮』2023年1月号

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