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酒井順子(1966.9.15- )「松本清張の女たち 第二回 『ゼロの焦点』の表と裏」『小説新潮』2022年9月号

『小説新潮』2022年9月号
新潮社 2022年8月22日発売
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B7NKQCM1
https://www.shinchosha.co.jp/shoushin/backnumber/20220822/



酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第二回 『ゼロの焦点』の表と裏」
p.146-152

松本清張(1909.12.21-1992.8.4)
昭和二十八年(1953)
『或る「小倉日記」伝』芥川賞受賞」

「デビュー後しばらくは、時代小説を中心として執筆していた松本清張。
昭和三十年(1955)『小説新潮』に発表された短編
「張込み」は「推理小説への出発点とされる。」
p.146

「この小説は、犯人捜しとも、アリバイ崩しとも、無縁である。
登場人物達の心理、特に、
薄暗い日常を淡々と生きていた女性の心理を前面に押し出した。
清張作品のマストアイテム・不倫はもちろんのこと、
「女性の性欲への畏怖」もまた、この作品からは濃厚に漂ってこよう。

清張は女性の「渇き」に関しては、男性離れした鋭い感覚を持つ作家だった。性の面であれ金の面であれ、女が男よりも欲が少ないわけではないことを知っていた清張は、この後も女性の「渇き」を事件や謎と巧みに絡ませた作品を、数多く書いていく」
p.147

「清張は、女性の現実を推理小説で描いた。当時の女性達は、自分が隠し持つ生々しい欲望を暴くかのような清張の小説を、羞恥と快感とを以て読んだことだろう。
「昔、好きだった男が突然、目の前に現れたら、私はどうする」ということを考えずに、「張込み」を読んだ主婦は、いなかったのではないか。」
p.149

松本清張「張込み」『小説新潮』が発表された
1955年1月生まれの私は、
1975年3月28日に銀座並木座で、
松竹映画
『張込み』1958年1月15日公開
モノクロ 116分
脚本 橋本忍
監督 野村芳太郎
出演 高峰秀子 大木実 田村高廣
https://www.allcinema.net/cinema/138110
https://ja.wikipedia.org/wiki/張込み
https://www.amazon.co.jp/dp/B0743L91VS
プライムビデオ 
 レンタル 400円
https://www.youtube.com/results?search_query=張込み
クリップ数本
https://mukasieiga.exblog.jp/22069317/

を、
『砂の器』1974
https://www.allcinema.net/cinema/144857

の原作・脚本・監督トリオだなぁ
と思いながら、観ました。

父(1920.11.8-1996.6.29)が、昔、
「母(1921.1.4-1921.1.4)は
デコちゃん(高峰秀子 1924.3.27-2010.12.28)
より可愛かったんだゾ」
などと言っていたのを思い出したりしました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/松本清張の作品一覧
松本清張の作品一覧

https://www.allcinema.net/person/124966
松本清張映像化作品一覧 1957-2022 146本


「誰もが自分に置き換えることができそうな、
そして自分のすぐ隣で起きていそうな出来事を描いた
清張の推理小説は、人気を呼んだ。

『点と線』(『旅』連載)、
『眼の壁』(『週刊読売』連載)
が昭和三十三年(1958)に刊行されると、
どちらもベストセラーに。

両長編の大ヒットにより、
社会派推理小説のブームが発生した。
従来の探偵小説が、社会からかけ離れた、
ほとんどファンタジーの世界で展開されていたからこそ、
清張の小説は、「社会」を冠されたのであろう。

『ゼロの焦点』
(1958年『太陽』にて「虚線」のタイトルで連載開始、
同誌休刊後、推理小説の専門誌『宝石』にて、
「零の焦点」とタイトルを変えて再開)
の主人公は女性。

清張初の女性もの長編推理小説である。
後に女性誌に書かれる長編小説群の、
原型とも言うことができる小説となった。

日常の中に恐怖が存在するのだとしたら、
その奥底にある原因を突き止めたくなるのは
男だけではないことを、この小説は示した。」
p.149

「『ゼロの焦点』で探偵役を担っていた禎子は、
その後、清張が女性誌に連載した長編小説群に
しばしば登場することになる、とあるタイプの女性群
[「お嬢さん探偵」]の第一号ということができる。

女性誌長編において捜査を進める素人探偵は、その全員が女性で、
雑誌の読者の属性に合わせて各内容を変えた清張は、
女性誌読者が我が身を重ね合わせやすい人物に
探偵役を担わせることによって、
女性達を推理小説の世界へと誘ったのだろう。

この、女性誌長編に登場する女性探偵役のことを私は、
「お嬢さん探偵」と呼んでいる。
彼女達は結婚していようといまいと、精神が「お嬢さん」である。
『ゼロの焦点』の禎子はお嬢さん探偵の第一号だった。
自身は何ら後ろ暗い部分を持たずに、「裏」の世界を追っていく。

『ゼロの焦点』は、女性誌ではなく推理小説専門誌に連載された小説である。しかしこの小説において、女性の "探り手" というキャラクターに確かな手応えを得たことが、女性誌における「お嬢さん探偵」ものの小説群につながっていくのではないか。私はそう推理している。」
p.152

http://www.hatirobei.com/ブックガイド/作家から/酒井順子/雑誌掲載記事

読書メーター
酒井順子の本棚(登録冊数34冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11092015

小説新潮の本棚(登録冊数56冊)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11408157

https://note.com/fe1955/n/n1474f3c18934
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第一回 初めての女性誌連載」
『小説新潮』2022年8月号


https://note.com/fe1955/n/n3f15b2dc39d9
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第三回 お嬢さん探偵の限界」
『小説新潮』2022年10月号


https://note.com/fe1955/n/nd73f79dc9dd9
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第四回 初めての恋愛小説」
『小説新潮』2022年11月号


https://note.com/fe1955/n/ncc1a2176c33c
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第五回 転落するお嬢さん達」
『小説新潮』2022年12月号


https://note.com/fe1955/n/n644b2c0ce468
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
 第六回 『婦人公論』における松本清張 1」
『小説新潮』2023年1月号


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酒井順子
『日本エッセイ小史 人はなぜエッセイを書くのか』
講談社 2023年4月26日発売 224ページ 1760円
https://www.amazon.co.jp/dp/4065310067
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000374525

北村薫(1949.12.28-)
有栖川有栖(1959.4.26- )
「『ゼロの焦点』を解き明かす!」
『オール讀物』2022年6月号
https://www.amazon.co.jp/dp/B09ZCQTY1B




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