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酒井順子(1966.9.15- )「人はなぜエッセイを書くのか 日本エッセイ小史 第八回 エッセイブーム今昔」『小説現代』2021年4月号

『小説現代』2021年4月号
講談社 2021年3月22日発売
https://www.amazon.co.jp/dp/B08XXVPYTP

酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第八回 エッセイブーム今昔」
p.190-195
2022年11月14日読了

1966年9月15日東京都杉並区生まれ
立教大学社会学部観光学科卒業なエッセイスト
酒井順子さんの連載作品。
http://www.hatirobei.com/本を探す/作家から/酒井順子/雑誌掲載記事

「前回触れた海外系女性エッセイの書き手達は、
戦後、平和になってから留学をしたり、
また親の仕事の都合で海外に住んだりした体験を
立脚点として、執筆活動を行いました。
彼女達は、比較的恵まれた家庭に育った女性である
と言えましょう。

対して
林芙美子[1903.12.31-1951.6.28]は貧しい生まれであり、
自分の稼いだお金で旅をしました。
現在の働く女性達に通じるものがあります。

自分のお金であちこちに行っては書くという
芙美子の生き様は衝撃的だったものと思われます。
随筆/エッセイは、女性達が自分の経済力で
行動するようになった時、
一気に広がりと躍動感を持つような気がしてなりません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/林芙美子

『放浪記』[1930年(昭和5)]が出た頃、
世の中では随筆がブームになっていました。
大正末から昭和初期にかけては、
女性誌のみならず様々な雑誌が創刊された時代。
1922年(大正11)には
『週刊朝日』『サンデー毎日』が、
その翌年には
『文藝春秋』が創刊されるなど、
今に残る雑誌もこの頃に多く出てきます。」
p.191

「昭和初期までの文壇において
女性の随筆の書き手として声がかかりがちだったのは、
歌人や俳人といった詩歌関係の女性達であり、
その代表格が
与謝野晶子[1878.12.7-1942.5.29]です。
本職、というか軸足は短歌にありましたが、
晶子は文章をもよくする人であり、
総合誌や文芸誌といった男性系メディアにも登場して、
随筆を書いています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/与謝野晶子

詩歌の中でも特に短歌は「自分」と直結したジャンルで、
自分の中にあるものを正直に引き出してくるという部分において、
短歌と随筆は意外に近いところにある。
短歌において自分を出し慣れている人は、
随筆にもすっと入って行くことができたのではないか。

さらに時代を遡っていけば、平安時代においても、
和歌と随筆の距離の近さを見ることができます。
和歌の背景等を説明する「詞書」は、まるで随筆。
和歌がたしなみでありコミュニケーションツールでもあった
平安時代は、随筆が生まれた時代でもあります。

清少納言は、
和歌の家に生まれたというこを重荷に感じ、
「もう和歌なんて詠みません」
という宣言をしていますが、
当時の和歌は、近代以降の短歌と異なり、
枕詞やら縁語やら掛詞やらといったテクニックを
駆使しなくてはなりませんでした。

その手の縛りや、
三十一文字という文字数制限の縛りを振りほどき、
もっと自由に、
存分に自分の心情をほとばしらせたい、
というところで書かれたものが随筆だったのではないか、
と思う私。
そして詩歌と随筆の秘かな結びつきは、
現在に至るまで連綿と続いている気がしてなりません。」
p.195

読書メーター
酒井順子の本棚(登録冊数35冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11092015

小説現代の本棚(登録冊数39冊)
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https://note.com/fe1955/n/nb74e11adb53b
酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
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酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
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第二回 「随筆」と「エッセイ」の違い」
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酒井順子(1966.9.15- )
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第三回 変わりゆく「コラム」」
『小説現代』2020年11月号

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酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
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第四回 「昭和軽薄体」の時代」
『小説現代』2020年12月号


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酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
日本エッセイ小史
第五回 「つるむ」という芸」
『小説現代』2021年1月号


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酒井順子(1966.9.15- )
「人はなぜエッセイを書くのか
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第六回 女性とエッセイ」
『小説現代』2021年2月号


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酒井順子(1966.9.15- )
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日本エッセイ小史
第七回 女性とエッセイ・海外篇」
『小説現代』2021年3月号


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tps://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/pfbid02tHuy1a9fp2m8ohJoATQYzvUixVXdTVut5VW4AEM56au5fiLFHS29yet3Cs5JvjDVlhttps://note.com/fe1955/n/n1474f3c18934
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第一回 初めての女性誌連載」
『小説新潮』2022年8月号


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酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
 第二回 『ゼロの焦点』の表と裏」
『小説新潮』2022年9月号


https://note.com/fe1955/n/n3f15b2dc39d9
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第三回 お嬢さん探偵の限界」
『小説新潮』2022年10月号


https://note.com/fe1955/n/nd73f79dc9dd9
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第四回 初めての恋愛小説」
『小説新潮』2022年11月号


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酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
 第五回 転落するお嬢さん達」
『小説新潮』2022年12月号


https://note.com/fe1955/n/n644b2c0ce468
酒井順子(1966.9.15- )
「松本清張の女たち
第六回 『婦人公論』における松本清張 1」
『小説新潮』2023年1月号


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