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パン

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#エッセイ

日常を少しだけ愉快に。

日常を少しだけ愉快に。

March14, 2019

身の引き締まるような原稿の依頼をいただいて、考えている。パンとは。

「パンは小さいけれど確かな幸せ。つくり手にとっては、生きかたそのもの」

これは拙著『BAKERS おいしいパンの向こう側』(実業之日本社 2018)の帯の言葉だ。

小さいけれど確かな幸せ。
レイモンド・カーヴァーのいう”A small, good thing”、村上春樹のいう小確幸。

それをと

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唯一無二であること

唯一無二であること

February 2, 2019

わたしたちはみんな、ひとりひとり違っていて、かけがえのない存在だ。それは学校や企業に所属していてもそうだけれど、個人で独立して店など開業し、長く続けていくためには、他では代替できないモノやコトを提供していることをお客に認識してもらうことが、より大切になってくると思う。製造業であれ、サービス業であれ。たんに消費されるだけではなくて、必要とされるために自分ができるこ

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つくり手との距離

つくり手との距離

January21, 2019

庭の金柑を蜜煮にしたもの、これは自然になった実を自分でもいできて、グラニュー糖のみを加えてつくる、まさに家庭の味、なのにぎゅっと濃縮された甘味と酸味、艶のあるオレンジ色が自慢のひと品だ。

わたしの金柑蜜煮は職人がつくるもの —— 美しい渦巻きの層の間から芳醇なバターが香るクロワッサンでも、こんがりとよく焼けたクラストを持つ、旨味のある田舎パンでも —— とコラボ

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どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人か言いあててみせよう

どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人か言いあててみせよう

January 11, 2019

立教大学観光学部で辻調理師専門学校の小山伸二さんが講師を務める「ガストロノミーと観光」の授業、「ガストロノミーとパン」の今回、ゲスト講師として呼んでいただいた。何百人もの学生の前で話をするのは初めてのことだった。

受講する学生たちは20歳前後で、デジタルネイティブで、彼らの幼少時にはもう、日本はクープデュモンド(製パン技術を競う世界大会)でその技が世界一に選ば

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