阿っと云う間に御陀仏
萌え出る青人草
咲かぬまま
芽吹かぬまま
苗の秀でざるあり
雪とけて雨ふる
泡きえて風ふく
荒波はやがて凪ぎ
鵯や鳴き豆を啄む
春や農夫の仕合わせ
防寒具を脱げば
冷たい風がふき
また着直せば
陽光益々盛んに
働けと言わんばかり
昨夜から雨止まず
庇の雨垂れに
目が覚めて
蒲団の中で
読書に耽る仕合わせ
阿っと云う間に御陀仏
萌え出る青人草
咲かぬまま
芽吹かぬまま
苗の秀でざるあり
かくも儚く萌え出る
芽吹き花咲く春なれば
錆びた刀も鞘に入れ
懐具合も忘れ果て
しばし草木と話す人草
