10年たった 20年たった もう数えるのをやめよう 焦るのもやめよう 昨夜の月が あまりにもきれいで 車の中で 月輪観 海の風が 夜半に冷たくなった 気温30℃を下回らない 日々のオアシス 風呂場でひとり シャワーの水を 口をあけたまま 流し込んでいく 何もかもがいやで ヤケクソな気分で 水を口に流し込む 口からあふれる水 あふれた水が 流れくだる 体を 排水口を そして 知らないところへ あのとき たしかに 生きていた あの曲の 行方のように あの曲 あの歌
確守すべき秩序は 湮滅した 聖賢は野に隠れ 世は道を失った 混沌の世に 道を問うな 悪を殲滅せよ 混沌に沈め 悪よ あらいざらい 混沌に沈め 混沌に かえれ 始源へ
ひるとよるの あわいに あくびひとつ
温情も結局利己心
ちからがないとは かなしいものだ おかねがないとは くるしいものだ やりたいことが できないからだ よのなかが わたしをいらぬと いうのなら あらそうですかと すましていこうよ あきらめた かずだけみたら まけなしだ まだまだあるぞ あきらめるもの あきらめて もっとふかく あきらめて そうかこれも いらんかったか これもいらん あれもいらん ただあのこだけ いてくれとおもう それもただ ひとときのこと ふかぶかと あたまをさげて あきらめて ああこれでよい これで
「ないわ」 人の社交辞令を見ながら思う 大体その後はないものと さびしいかな、 またお返事します、 そのお返事はとわにない 「ないわ」 経験浅き若き上司と 脳筋上司の ねじ込む企画 さびしいかな、 さびしいかな、 商材が、 商材が、 ぴくりとも 動かない 鮮度を失う魚のように 売場で褪せてゆく 商材よ 「ないわ」 横柄に 街行く人々 まっすぐに トラブりながら やらかしてゆく ちらかしてゆく 本人は必死だ 自尊心の護持 強情なほどに 「ないわ」 さして価値のない
少佐…… 信じられない。 ご冥福をお祈り申し上げます。
ひとのよに うまれおち さまよいあるき あたふたと さわがしく ひびはゆきすぎ なにもかも わからぬままに ひびはすぎゆき ははわらう なにもせず なにもかわらず なにもすすまず なにもないまま このよには なにもない なんのためかと とうこともなし なにもないから ひろがっている なにもないから いかされている なにもないので おごることなし おごりなければ さいわいなり
夏の光に とけるようなピアノの音 蝉時雨が 西日にかすむ 扇風機は汗だくか 仕事熱心だ 生きていることに 嫌気がさして ぬるくなった お水を飲む お水を飲むと 腹が鳴った 体だけが 生きたがっている
家にいても 「帰りたい」 と思う どこへ帰ろうと いうのか もう帰る場所など ないというのに
ひとのよに まがりして あさからよるまで はたらいて むくわれぬまま うつろいて しりあいの かえることなき たびじかな ののしりあいて ひくれることの むなしさよ ただなごやかに なごやかに おわりへと うつろい うつろいゆいて みながわすれた よあけまえ しずかなところで つゆときえむか
なつのよに ねつけぬわれが ひとりいて ときばかりたつ ひとのよのまに
ふみつくる ひとのすがたを かいまみて ゆるりひらりと かるくふみうり
ひとのふみ うりはらうしごと あきあきて なんのねうちが われにはありや
本屋だと とらわれすぎて 本の奴婢 本を燃やして 暖をとれ冬
くるくると この世の何かに おどらされ 年寄りを負うて われも老いゆく