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ささやかな夕方④

第四話

(ヒロ)

心地よい風が季節の変わり目を予感させた頃。

初めて笑顔でない彼女の姿を見た。


その日、カンナさんが教室を休んだらしく、彼女は一人でカフェに来店していた。窓際から遠くを眺めているが、そこにいつもの笑顔はない。無論一人でいるときは誰も笑わないだろうけど、こんなにも別人になるのかと不思議だった。

彼女の周りには ”無”が漂っている。
そこにいるのに、いない感覚。
そして、俺はそれが何かわかるような気がした。

でも口にわざわざすることではない。
だからいつも通りに注文を受け取った後そそくさとテーブルを去る。だけどついつい気になり、離れた場所から見てしまっていた。

人は共感とギャップに弱いという。
いとも簡単に壁を破壊するらしい。
だからだと思う。
俺は自分の感情を吐き出してしまいたかった。

しかし理性が働き、グッと胸に留める。

孤独と憂鬱。
理性と本音。
癒えない過去と未来への幻想。


まだ知らない共通項が無意識に感情を刺激する。


彼女の纏う陰影は、窓に映し出された凡庸な景色を、華やかに彩っていた。

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