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緑ファンタ - actor,singer,writter and cloud watcher- 10年に一編くらいしか書けない短編小説 2021年第1回 #風景画杯 優勝作と、超短編の習作集*舞台やライブ、イベント、SNSなどのためのテキストの記録*時々、今日の雲

マガジン

  • 上演台本集

    オルタナティブ(たぶん)な、短編オリジナル上演台本です

  • 小説集

    10年にひとつくらいしか書けない小説です。2021年第1回 #風景画杯 優勝作「月があんなに綺麗なのに今夜は月が出てない」

  • 超・超・短編小説集

    エブリスタのための習作を置きっぱなし

  • 【雲の形を詠む自由律俳句集】下駄履いてラインダンス、ひとり

    2011年から雲の形を言葉だけで記録してきました。数日つづけたり、何ヵ月もあいたり、旅行先だったり家の窓からだったり。ひとつひとつの味わいとともに、ひたすらたくさんあることでみえてくることを大切に思っています。夢は、世界中のあちこちでやってみてもらうこと。世界同時多発、今日の雲。

  • 奇妙な展覧会とリサーチのこと

    出演した展覧会やイベントの記憶です

最近の記事

【上演台本/ふたつのモノローグ】 毛と眼鏡

第一話 「毛」 キャスト:女性1・女性2 ◎舞台に、バランスボール2つ。 ◎音楽in  (音楽はBGMとしてずっと微かに聴こえている)  [que sera que sera(Whatever will be will be)] Sly and the family stone Ver. ◎照明、溶明。音楽とほぼ同時にスタート  バックホリゾント。最初わりと素っ気ない一色。後半のよいタイミングで 変化。(ex.水彩のような虹モチーフ、虹色のグラフィカル

    • 【超・超・短編小説】 はたち

      怒った顔が綺麗だと おまえが言った 些細な理由だととりあわず 誂おうとする その大人ぶった姑息な態度に もっと腹をたてた ニヤニヤとして醜い つまらない関係 つまらないやつめ 絶対に許さない一生ゆるさない 卑怯者 こころみすぼらしい あほばか しねしね腐ってしまえ 今から思えば あまりの反撃に おまえが面食らっている その隙に ふん、とかいいながら 化粧ポーチをひらいて ささっと鏡を見ればよかったのだ はは さよならさよなら その 綺麗な顔で怒っていたひとには

      • 【超・超・短編小説】 田園

        あぜ道に、白馬があらわれた。 王子様は乗っていない。 オムカエニキマシタ、と白馬は言った。 重低音のきいた声だ。 もわっとこもって、聞き取りにくかったが、 確かにそう言った。 オムカエニキマシタ。 ばばこは、ぎょっとした。 なにしろ、 ばばこは、 「お迎え」などと言われれば ときめくよりは、ぎょっとする程度には老婦人である。 が、気を取りなおして怒鳴った。 なんやてぇ お迎やてえぇ? 王子様わぃ? われぇ 極度の緊張で生まれてこのかた使ったこともない河内弁になった

        • 【超・超・短編小説】赤毛のソルト2

           ぱたんと音を立ててスマホのケースを閉じる。ルウは、日当たりの良いソファで、寝室からひっぱってきた毛布にくるまって気持ちよさそうに昼寝をしていた。わたしは、足もとまである頑丈なコートを着込むと、そっとドアを開けて外へ出た。黒いニット帽で覆った耳に、ぼおっと鈍い風の音。窓から差し込んでいた日差しが暖かったせいで、強い風はひとごとのように思える。分厚いコートの目の詰まった生地のおかげで、さほど冷たさは感じない。胸とお腹のあたりに風力だけを受け止めた。  散歩、というのか、ちょっと

        【上演台本/ふたつのモノローグ】 毛と眼鏡

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        • 上演台本集
          6本
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        • 超・超・短編小説集
          16本
        • 【雲の形を詠む自由律俳句集】下駄履いてラインダンス、ひとり
          1本
        • 奇妙な展覧会とリサーチのこと
          3本
        • 歌の言葉
          6本

        記事

          「風景画みたいだけど、読んでて面白い小説」書いてんだよ #風景画杯

          白蔵主さんが主催された、なんにも起こらないけど面白い小説杯「風景画杯」。「あんなに月が綺麗なのに今夜は月が出てない」を、栄えある第一回優勝作品に選んでいただきました。 https://note.com/haxose/n/nfa0b424775eb こちらの、ジュージさんの作品「指を拾う」とダブル受賞でした。なんという、もう、勢いやらクオリティやら。何も起こらないのにドキドキ読める静かにぶっちぎったお話です。 https://note.com/juji_nekogasuk

          「風景画みたいだけど、読んでて面白い小説」書いてんだよ #風景画杯

          【小説】あんなに月が綺麗なのに今夜は月が出てない #風景画杯

           あこさんは階下でリモート授業中だ。小川は彼女の気が散らないように2階にいる。先日、突然亡くなってしまった劇作家からのDMに返信していた。半年も前のtwitterメッセージを放置したまま訃報を聞いてしまったのだ。顔見知りではない。何度か観劇して作品が好きだったからフォローした。DMは演劇公演案内の一斉メールに違いない。でも万一、スルーしてがっかりさせてたらと思うと悔やまれた。熱い文面で、いい人っぽかった。半ば諦めにも似た気持ちで「送信」を押す。指の感触は買い物する時の「ぽちっ

          【小説】あんなに月が綺麗なのに今夜は月が出てない #風景画杯

          【超・超・短編小説】ピアニスト

          真夏の一日は 夕立で初期化される 遠くの空に 音もなく稲妻がみえて 生暖かい風が吹きはじめたかと思うと 大空一面 黒マントがひるがえり 魔王がバリバリと電撃ノイズを鳴り響かせる どしゃばしゃ堕ちる それはもう何もかも その日の朝と昼の時間のすべてが どしゃばしゃ堕ちる 嫌なことがある日には 最高で いいことの途中だったら 最低で 傘など役にも立たないし かといって ずぶ濡れてはしゃぐほどの無邪気はなくて そうやって 半時もして 頭の中が白くなったところへ

          【超・超・短編小説】ピアニスト

          【超・超・短編小説】おやすみジプシー

          やあやあ おれは おやすみジプシー おやすみ と 夜毎しんで おはよう と 毎朝うまれる おやすみも おはようも 天下の独り言 しぬのも毎日だと プロ 椰子の木の下で 一分間逆立ちすればストン 夢は 黄泉の国 逆行して その果ての朝に ひとであるとはかぎらない パンダか毛虫か タンスかスパナか 夜中トイレに起きたときは 決して鏡をみてはいけません 昼寝の場合は しにません しんだりうまれたりまあまあ忙しくて疲れるけれど そのかわり 成長という名の老いからは

          【超・超・短編小説】おやすみジプシー

          【超・超・短編小説】苔と肛門とブロッコリー

          あたしと結婚したほうが幸せに決まってる、と うりは言った。 負けず嫌いがでた。 じつは、うりは、結婚じたい、そんなにしたいわけではなかったし、カズミには地味めな彼女がいることも知っていた。 でも、とにかく、今カズミはじぶんに夢中だとわかっていた。くるくる振り回しながら、ついうっかりいい気になっていたら、 藪から棒。  って言葉、初めて使ったけど、合ってるのか。 秋に結婚するんだ、とカズミが言った。 あたしとしたほうが幸せに決まってる、と うりは言った。 うりとは

          【超・超・短編小説】苔と肛門とブロッコリー

          【ひたすら、雲の形をパッと詠む】 下駄履いてラインダンス、ひとり

          視線 Ⅰ (25選) 今日の雲 悪い顔のいるか 今日の雲 色白で五重あご 今日の雲 灰色のニヤリ 今日の雲 目は切れ長で耳は福耳 今日の雲  胴が手羽先の犬 今日の雲 コブがシュークリームのらくだ 今日の雲 フランスパンのくじら 今日の雲 消えかけのデブ猫 今日の雲 帽子が小さい男 今日の雲 大きな小犬 今日の雲 しろ目で鼻ちょうちん 今日の雲 チャッカマンに目玉 今日の雲 影のあるイカ 今日の雲 その眼鏡は、ルー・リード 今日の雲 

          【ひたすら、雲の形をパッと詠む】 下駄履いてラインダンス、ひとり

          【超・超・短編小説】 眼鏡

           夜、お風呂からあがったら眼鏡がなかった。確かに洗面台の上に置いた。間違えようがない。  黒いセルフレームのボストン型眼鏡は、最近のさらさのデフォルトだ。かわいいし、賢そうにみえるし、ちょっとイメチェン? って気分で、去年くらいから、いざというとき以外コンタクトはやめにしていた。  で、  裸眼だと0.1とか2とかだし、家の中でもずっと眼鏡。だから、お風呂に入る前に他の場所で外すことなんてない。ぜったいない。ぜったい。  さらさは、あんまり身体も拭かないまま急いで家着兼パジ

          【超・超・短編小説】 眼鏡

          今日の雲と、ヤンゴンのバングル

          今日の雲。フランケンシュタインの傷痕 Today's cloud,Frankenstein's scar 2016年にミャンマーへ旅行しました。 ヤンゴンでアルミ缶のプルトップをつなげたバングルをみつけて、 すごく気に入って買って帰ってきて、 しばらくお気に入りで、いつもつけていました。 このアクセサリーを思いついたひと、ほんとに自由なひとだ。 ミャンマーの知らない誰かが、かわいい!と思って作った瞬間の気持ちが 遠い国で暮らすわたしに伝わって、同じ気持ちにな

          今日の雲と、ヤンゴンのバングル

          【超・超・短編小説】トマト

          きみが、トマトに砂糖をかけた。 それから、 まわりの空気を アプリで加工するみたいにきらきらにして、 にっこり笑った。 まだ早い時間の雨の帰り道、 じゃ、家くる?  って、 全然、ほんの軽いノリで。 それで、きみが、トマトに砂糖をかけた。 ぼくは、 あっけにとられて その、赤でもオレンジ色でもない、 唇みたいなトマトの色と、 砂糖の純白をみつめた。 そして、 その砂糖の白が、 端っこでじんわりと透明に溶けた瞬間、 突然、身体中がときめいた。 全身の液体が電撃虹色になって

          【超・超・短編小説】トマト

          【超・超・短編小説】くらやみかふぇ

           古い雑居ビルの2階の奥に、暗闇っていう名前のカフェがあって、看板には、しょうわのにをいっていう可愛いフォントで、くらやみかふぇって、ひらがなで書いてる。  カランコロンって、扉にベルがついてて、藤井聡太くん似なのに、ちょっとエロっちい女の子が、ふっつーに、チェックのシャツとか着てて「いらっしゃいませ」って、ウインナー珈琲とかミルクセーキとか書いたメニュー持ってくる。  飲み物持ってきて急に向かいに座って「暗さどれくらいがいーい?」って聞くから「あ、ちょっと暗めで」って言

          【超・超・短編小説】くらやみかふぇ

          【超・超・短編小説 】 F

          「東京銘菓、草加せんべいでございます」狭い通路を、裸にふざけたピンク色のエプロンをつけたのぞみが通り過ぎた。だいだい色の柿の形をした饅頭に、鳩サブレーという名前がついていることにさえ気づかずに生きていくこと。ホーラ、もうあんなに紅葉していますよ、あの人たちは。 赤いほっぺたのヒステリーの子供の黄色い声が響き渡るたびに、ピクッピクッと痙攣しながら眠り続ける年老いた若い男はセーターを着ているけれどサラリーマンとわかる姿でこれから先、列車が走り続ける限り、いっそ目を開かずに。片道な

          【超・超・短編小説 】 F

          【小説】しんでいるとはかぎらない・後編

           島から乗って帰ってきたライトバンに犬山さんを積み込んだ。  バックシートに押し込んでいる時に通りがかった老婦人の表情が一瞬ひきつったと思う。いつだったか夜道で横たわる男を見つけて死んでいるんじゃないかと思ったが、そのまま通り過ぎて数分後には忘れた。エンジンをかけながら、さっきの老婦人が警察にかけこまないことを祈った。  気晴らしに高速を走る。犬山さんは後ろの座席にころがって天井を向いている。いつのまにかバックミラーに赤紫色の夕日が映り始めていた。  見知らぬインターチェン

          【小説】しんでいるとはかぎらない・後編