#33 祖父が亡くなった/それを書く私
祖父が亡くなった
その知らせは私が祖父が眠りについて地元を離れてから5日目のことだった。
長らく会えていなかった彼女のもと訪れ、駅で彼女が仕事に行くのを見送るとき。不在着信と1件のメーセージが入っていた。
覚悟していたはずの私は固まる。
携帯を覗き見た彼女は私の肩を揺らし大丈夫かと声をかける。
我に帰る私は自分が涙を流していないか手を目に当てる。
駅は行き交う人々と雑音を再度私に認識させる。
彼女を見送った後、知らせをくれた母に電話をかけるが出ない。
私は家に寄らず、すぐに地元行きの新幹線のチケットを買う。
何時にどこに行けばまだ祖父に会えるだろうか。
死後の段取りを私は知らない。
祖父が最後に見せた笑顔は私が父の愚痴を言ったとき。
あの笑顔を執拗に思い出す。
祖父よあなたは幸せでしたか。
私がいてよかったと一度でも思えましたか。
私が生まれたとき嬉しかったですか。
祖父の人生に少しでも彩りを加えられましたか。
私は良い孫でしたか。
祖父に相応しい私でしたか。
じいちゃんの孫で私はよかった。
欲を言っても良いのなら、ひ孫を抱いてほしかった。
違う
まだ生きていてほしかった。
それを書く私
地元行きの新幹線の中でこれを書いている。
窓からは自然とそうじゃないものが過ぎ去っていく。
人が亡くなったとき
私はこれを何かのターニングポイントと
とらえて私を生き抜くと決めていた。
書くために感情を絞り出す私は無慈悲か。人でなしか。
なぜ書いているかもわからない。
坂本龍一を聴きながら車窓を眺め祖父を思い出し涙する。
私はどこに向かっているのだろうか。
人の死はなんと自然でこうも受け入れ難いことですか。
これから出会う人よ、私とともに、どうか、ただ、生きて。
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