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【パッチワーク書評】『偉人たちの困った性癖』

―史上最悪の暴君が見せた純烈だが熾烈な愛のカタチ

ネタにすべきか迷いもあった。

パッチワークは色とりどりに彩られてこそ美しい。切れ端のひとつであるとご容赦いただければと思う。

もちろん本書は、真剣に対峙するタイプの本ではない。疲れた時や時間のあるときに、サラッと楽しむ読み物である。しかしながら、バカにできないところもある。文章そのものは決して下手ではない。そこは、真摯に見習うべきところである。

そういった類いの本であるため、ウラドリまでは望めない。なかなか、強烈なエピソードが次から次へと登場する。筆者が最も印象に残ったのが、暴君として名高い第5代ローマ皇帝・ネロのお話である。

ネロの正妻は最初のうちは女性だった。が、やがてネロはふとしたことから妊娠中の妻の下腹部を蹴ってしまい、死に至らしめてしまう。よく喧嘩はしたものの妻を愛していたネロは、やがて妻そっくりの美少年を探し出し、これを去勢して花嫁衣装を着せて結婚式を挙げてしまったという。

先述した通り、ウラドリまでは望めないため、別途調べたことを記載する。

ネロの正妻とは、2人目の夫人ポッパエアのことである。彼女はネロの親友であったオトの夫人であった。ネロが悪政に走ったのは、彼女が原因との説もある。翻せば、それほどに寵愛していた。

3人目の妻を迎えるものの、ポッパエアを忘れられず、彼女に似た美少年スポルスに出会う。南方熊楠もスポルスについて、記載した書簡を残しているようである。

美少年スポルスは、ネロの死後に皇帝となったウィテッリウスから、公衆の面前で恥辱を与えられ自殺するという悲劇的な最期を遂げる。

ちなみに、ポッパエアの元夫・オトもローマ皇帝となり、ウィテッリウスにより滅ぼされた。皇帝となったオトは、ネロと同じく美少年スポルスを寵愛していたとのこと。

ギリシア神話に登場する大神ゼウスは、不倫アリ、近親相姦アリ、同性愛アリ。まさに、何でもありに描写されている。子どもの頃、それらはあくまで、神話を成立させるためのものと認識していた。

本書にはネロだけではなく、カエサルも登場する。彼らのエピソードを見ていると、ゼウス神の行状が決して、イマジネーションの世界ではないことを痛感する。


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