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【ニュースコラム】アイヌ文化に熱視線 チタタプ♪チタタプ♪

―豊穣なる文化と哀しみの歴史 見なおされはじめたアイヌ

7月12日、北海道白老郡白老町に国立アイヌ民族博物館が開館した。8月25日、初代館長を務める佐々木史郎さんのインタビューが読売新聞に掲載された。

アイヌの視点に立ち、考古遺物の時代、歴史文献の時代、アイヌ自身の記録や記憶の時代と区分して展示を行っているという。ただ、歴史はもちろん、「アイヌの今の姿」を知ってほしいと語る。

現地へ赴くことは叶わないが、研究成果という恩恵に期待したい。

ここ数年、アイヌ関連で注目されるトピックが2つある。おいしいものは、後に取っておくタイプである。先にツライ話からしておきたい。

■人骨問題

明治時代から戦前にかけて、大学などの機関が、アイヌ民族の骨を遺族から了承を得ることなく、勝手に墓から掘り起こして、研究の対象にしていたという話である。

それは人間のものではなく、まるで動物標本のような扱いである。ここ数年でようやく、遺骨の返還が進められ始めた。新聞やテレビのドキュメンタリー番組でも、大きく取り上げられていた。

ドキュメンタリー番組で見た光景が忘れられない。返還の式典が行われ、遺族の子孫と大学側の研究者が顔を合わせた。

大学側の代表者が事実経緯を説明の上、遺骨を返還。式典の会場には不穏な空気が流れる。謝罪の姿勢が見られなかったからだ。

心ある大学関係者が「頭を下げて謝りましょう」と声を掛けるも、他の大学関係者はそれを無視。アイヌ差別の現実を如実に表す光景となってしまった。

■アイヌ文化

博物館では独特の風習を持つ、アイヌ文化の展示にも力を入れているとのこと。たしかに、日常生活でアイヌ文化に触れることはほとんどなく、貴重な機会であると思う。

ところが、そんなアイヌ文化が一般の人々からも注目されるようになっている。

オレが不死身の杉元だぁーーーーーー!!!!
チタタプ♪ チタタプ♪

日露戦争の死地から帰還した日本兵「不死身の杉元」と、ヒグマとも渡り合う大人顔負けの胆力を持つ美少女「アイヌの愛娘・アシㇼパ」が金塊事件を追う野田サトルさん原作のマンガ『ゴールデンカムイ』。アニメ化もされ、10月から第3期が放送予定となっている。

ストーリーの面白さ、キャラクターのディティールの深さ、情景描写のみずみずしさ。縦軸にも横軸にも面白く、ちょっと別次元の感すらある。さらに、アシㇼパが披露するアイヌ文化が物語に彩りを添えている。

大英博物館で行われた国外最大のマンガ展では、アシㇼパがキービジュアルに起用され、大きな話題にもなった。

この本は購入済みだが、まだ読めていない。最近、そんなことばかり言っていて情けない限りである。

作中で重要な意味を持つ網走監獄は、いわゆる聖地巡礼の巡礼先となっている。正直なところ、マンガはあくまでサブカルだと思っているが、機運の高まりにマンガやアニメという表現が寄与するところは決して少なくない。

そして、こういった機運の高まりに、遺骨の返還や博物館の開館が無関係なところにあるとは思えない。

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