【れきどくコラム】中国4000年人物百科 ハンサムウーマン・斉姜

―春秋戦国に咲く、エロくてかしこいハンサムウーマン

懐かしの新人物往来社刊の本から、面白いエピソードを紹介する【れきどくコラム】

中国史に関連する既刊の「歴史読本」特集記事を再編集した本。人物紹介およびコラムも充実している。1人1ページ、見開きと決まっておらず、自由なページ構成となっている。執筆陣は歴史読本ならではの豪華な顔ぶれ。大学教授はもちろん、高名な評論家・山本七平さんのコラムまで掲載されている。

タイトル:別冊歴史読本特別増刊 総集編中国4000年人物百科
発行年月日:1993年1月12日

春秋戦国時代、晋を再興した文公の夫人・斉姜(せいきょう)が今回の主役。

マンガ『キングダム』によって春秋戦国時代に脚光が浴びている。よって、よくご存知の方もいるかも知れない。『キングダム』は秦を中心に描かれているそうであるが、晋のお話である。

最近は『キングダム』になるのかも知れないが、歴史ファンの間で春秋戦国時代と言えば、やはり宮城谷昌光さんということになるだろう。

晋の文公と聞いてわからない方も、重耳という名なら、聞いたことがあるかも知れない。『重耳』は宮城谷昌光さんの代表作のひとつである。

れきどくでは、斉姜というページが設けられているのではなく、重耳を晋から追い出した驪姫の項目としてページが割り振られている。ただ、そのほとんどは、重耳と斉姜のラブロマンスに割かれている。

驪姫は重耳の父・献公の寵愛を最も受けていた夫人。自らの息子を王にするため、他の夫人が産んだ太子を次々に斥けていった。

重耳は各地を流浪した後、斉の国に辿り着く。斉の桓公は重耳を気に入り、娘・斉姜と豪華な馬車を与えて引き留めた。重耳は斉姜の美貌に溺れ、馬車遊びに熱中した。

重耳の家来たちは、主が享楽に溺れるのを心配して、斉を出奔する密談を桑畑で行った。ところが、その密談を聞いた桑摘みの女が、斉姜に密談の内容を密告した。

すると斉姜は、重耳への愛情から、女を殺して、重耳へ出奔を勧めた。

「天下を取らねばならぬ男は、女の愛に魅かれ、楽しみ事に安んじてはなりませぬ」

それでも、ぐずる重耳を斉姜は泥酔させて、家来に国外へ馬車で連れ去らせた。さらに放浪の後、晋へ戻り、重耳は王位に就くと、名君の誉れ高い文公となった。文公となった後、夫人として斉姜を迎えた。

重耳が溺れて、ぐずって、迎えるくらいだったのであるから、相当な美貌の持ち主で閨房にも長けていたのだろう。

中国の歴史で有名な美女といえば、“傾国の美女”と冠が付くような悪女が多い。ところが、斉姜の行動はとても賢明である。いや、寧ろハンサムですらある。良かれと思い密告して殺された、桑摘みの女は非常に気の毒だが…。

春秋戦国時代に、こんなにもカッコいい“エロかしこい女”がいたのである。春秋戦国の乱世が生んだ百花繚乱の一人であったのだろう。

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