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舟を編む

三浦しをんさんの小説「舟を編む」は、辞書編集者たちの仕事と人生を描いた作品です。主人公の馬締光也は、言語学の知識と感覚はあるものの、コミュニケーション能力に欠ける若手社員です。彼は辞書編集部に引き抜かれて、新しい中型事典「大渡海」の編纂に携わります。そこで彼は、辞書作りの奥深さや魅力、そして言葉の力を知っていきます。また、彼は下宿の大家の孫娘・林香具矢と恋に落ち、彼女との関係を言葉で表現しようとします。

この小説は、言葉に対する愛情と敬意が溢れる作品です。辞書編集者たちは、言葉の意味や用法、変化や流行を丹念に調べ、記録し、整理し、選び抜きます。
彼らは、言葉の海を渡る舟である辞書を編むことで、言葉を使う人々に貢献しようとします。その過程で彼らは、言葉の持つ多様性や豊かさ、そして生命力に感動します。
一方で、言葉は時に不十分で不器用であることもあります。馬締は、香具矢に対する気持ちを伝えるのに苦労します。彼は、言葉だけではなく、表情や態度や行動で愛を示そうとします。言葉というツールを使いこなすことと、言葉を超えることの両方が大切であることを、この小説は教えてくれます。

登場人物たちは、辞書作りに情熱を注ぎ、時には苦労や挫折に直面しながらも、仲間と協力して目標に向かって進みます。彼らは、辞書作りという特殊な仕事にもかかわらず、普通の人々と同じように、恋や結婚や家族や友情など、人間関係にも悩みや喜びを感じます。彼らは、言葉に囲まれて生きる人々として、言葉の影響を受けながらも、言葉を創造し、変化させ、伝えていきます。彼らは、言葉のプロフェッショナルであり、言葉の愛好家であり、言葉の生き証人です。

この小説を読んで、言葉に対する興味や関心が深まりました。
言葉は、私たちの思考や感情や意志を表現するだけでなく、私たちの人生や社会や文化を形作るものなのではないか。
言葉は、私たちに知識や情報や教養を与えるだけでなく、私たちに感動や楽しみや癒しを与えるものなのではないか。
言葉は、私たちに個性やアイデンティティを与えるだけでなく、私たちにコミュニケーションや共感や理解を与えるものではないか。
言葉は、私たちの人間性を高めるものだなと感じました。

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