「名作文学と遊ぶ本」3選 FIKAのブックトーク#37
こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。
今回のテーマは「名作文学と遊ぶ本」。
「名作文学」って堅苦しいとか難しいとか苦手意識がありませんか?
敬遠されがちな名作文学に遊び心あふれるアプローチをする本を3冊紹介します。
「名作うしろ読み」 斎藤美奈子
〈遊び方〉名作の「お尻」を読む
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」
など冒頭の文章がよく知られている名作はたくさんあります。
では、最後の一文は?
有名な作品でも結末の文章は意外と知られていません。この本は名作の「お尻」、結末の文章を紹介するブックガイドです。
え?結末がわかったらネタバレでつまんなくない?
いえいえ!名作は「お尻」を知っても面白いんです!読んだことのない作品なら「どんな話なんだろう?」と気になるし、読んだことがある作品でも「あれ?そんな終わり方なんだ?!」と驚きます。
以下は何の「お尻」か分かりますか?読んだことがある作品があると思いますよ。
だから清の墓は小日向の養源寺にある。
勇者はひどく赤面した。
これは私が生まれて初めて書いたラブレターです。ちゃんと書き方を知ってるなんて妙ですわね?
老人はライオンの夢を見ていた。
おれはそれぎり永久に、中有の闇に沈んでしまった…
下痢はとうとうその日も止まらず、汽車に乗ってからもまだ続いていた。
「名作をいじる」 阿部公彦
〈遊び方〉名作に「落書き」をする。
つい畏まって読みがちな名作文学。文章が分かりにくくても、登場人物の行動や心理が理解不能でも「私の読解力が足りないせいだ」と思っていませんか?
この本はそんな自虐を思い切り吹き飛ばしてくれます。
「読んで感じたことを本に直接書き込んじゃおう!」と名作の冒頭にツッコミを落書きしまくるのです。
これは夏目漱石の「明暗」の冒頭の1ページに書かれた「落書き」です。漱石最後の作品で未完の大作とくれば身構えがちですが、こんな落書きを見るとちょっと読んでみたくなりませんか?
もちろん落書きだけではなく、作品を深く味うための解説もしっかりあります。
他の文豪たちの作品への愛あるツッコミの中で私が一番笑ったのは堀辰雄の「風立ちぬ」。どうしてこの人の文章はとらえどころがなく読みにくいんだろうと長年思っていたのですが、その謎が解けました!
「それ」とか「その」とか定冠詞多すぎるからだったのか…!
「「罪と罰」を読まない」 岸本佐知子 三浦しをん 吉田篤弘 吉田浩美
〈遊び方〉名作を読まずに勝手に推理する
4人の著者の誰もドストエフスキーの「罪と罰」を読んでいません。
え?4人とも文筆家でひとかどの読書家のはず。それなのにあの名作を読んでいない?しかも読まないまま内容を推理しようとしている?
こうして前代未聞の「未読座談会」が始まります。
まずは冒頭と結末の1ページずつを手掛かりにそれぞれが思いつくことを気ままにしゃべるのですが、さすがは文筆家たち。わずかなヒントを元に、あらすじや設定や舞台背景について次から次へと想像を膨らませていきます。
その後も少しずつヒントが明かされそのたびに、正解も妄想もどんどん出てきます。4人が作る「罪と罰」は果てしなく盛り上がり、最後に「罪と罰」を読んで答え合わせをして幕となります。
読んだことのない本でこれだけ想像をめぐらせて語って盛り上がれるってすごいなあ…
ちなみに私は数十年前に「罪と罰」を読みました。すごく感動した記憶があるのに内容はほとんど忘れていました。なので新鮮な気持ちで4人と驚きを共有することができました。
ラスコーリニコフ、二人も殺してたんですね…
以上、3冊の本を紹介しました。
名作をもっと自由に楽しんでみませんか?
読んでくださってありがとうございました。