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キタダヒロヒコ詩歌集 94 ピアノバーIZUMIのこと



ピアノバーIZUMI 22:40    キタダヒロヒコ


ROPPONGIのロゴの下なるタリーズで開演前の時を潰しぬ

 
何か売る外国人ゆ擦り抜けし半地下にそのバーはありたり

 
〈本日の出演〉ボードに躍りたる#Sさん#Rさんの名に昂ぶれり

 
あ、ドアの向かふよりJAZZが匂つて来た JAZZもわたしを待ち兼ねてゐた

 
木のドアを開ければ船長のやうに#Sさんが穏やかに笑つてをりぬ

 


船長のピアノがわれらを海へ連れ出す 港区の夜の片隅の船出

 
#RさんがうたへばやがてMANHATTANのバー、あるひは埠頭となれり


ピアノ・クルーズの余韻に揺れつつ航海とビールと会話の代を払ひぬ

 
今夜の宿をみなさんに訊かれ〈なら大丈夫、日比谷線まだまだ出てる。〉

 
客引きのガルバの娘(こ)らも振り切つて0時のメトロへと潜りなむ


また行きます。


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