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思ってたんと違う

ガイコツのダンスが見られると聞いて、墓場にやってきた。
丑三つ時、墓地がぼんやり明るくなる。
そこへ20体ほどの骸がやってきて、円になって座った。
1体だけが真ん中でスタンバイ。
掛け声とともに披露されたのは、カズダンスだった。
僕は叫んだ。
「思ってたんと違う!」

天狗の飛行が見られると聞いて、山に来た。
河童や雪女も見に来ていた。
「待たせたな」と上空から声。
見上げると、後頭部と両くるぶしからプロペラの生えた天狗が飛行していた。
オスプレイのようだった。
僕は叫んだ。
「思ってたんと違う」

タイムマシンは相模ナンバー。
口裂け女はポニーテール。
ガーリックトーストを頬張るドラキュラもいた。
叫ばずにはいられない。
「思ってたんと違ーーーーう」

その時、神様らしき声が聞こえて来た。

『知らんがな、お前がどう思ってたとか。お前、見えてるもんが全てと思ってないか? 真実だと思ってたことと違う事実が見えたとき、見えてる方を信用セーよ。それに、見えてはないけど実際は存在してるものもある。ゾウの首やキリンの鼻から、目を逸らしたらあかん』

芯をついたことを言ってそうで、言ってなかった。
声も高かった。
思ってたんと違った。

僕は一連の出来事を、SNSに投稿した。
少々クレイジーなので反響は少なかったが、女性からの返信があった。
なんと僕と同じような経験をしたという。
僕らは連絡先を交換し、会って話すこととなった。

待ち合わせはハチ公前。
少し歩いて路地裏のカフェに入った。
ここなら客も少ないし、変な話をしても大丈夫だろう。
僕は体験した全てを語ったが、彼女は俯いたまま。
コーヒーにも口をつけない。
「あの、どうかしましたか?」
「思ってたんと違いすぎて」
「え?」
「……顔が」

ああ。
アイコンを盛りすぎたのかもしれない。

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