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やっぱり行きたい!仏像マニアが語る仏像企画展の話

こんにちは部長のうちむらです。
突然ですが、みなさん語り出したら止まらないモノってありますか? 私はダンゼン「仏像」です。昨今のSTAY HOMEで趣味の仏像拝観や、楽しみにしていた仏像企画展に行けないとフラストレーション全開で嘆いていたら、「ここで語っていいよ。」と言われましたので今回は大好きな仏像のこと、個人的に行きたかった仏像企画展のことを、思う存分語らせていていただきます!

仏像って何?どこで生まれたの?

仏像とはその字の通り神仏を彫像・彫刻で表現したものです。信仰の対象としてはもちろん、その造形技術のすばらしさから宗教美術としての価値も高く、博物館や美術館で多くの仏像企画展が開催されるほどです。

そんな仏像ですが、今でいうアフガニスタンからパキスタンにかけての位置で繁栄したガンダーラ国で生まれたといわれています。

ん?ガンダーラ?……なぜ仏教発祥の地であるインドではなく、ガンダーラなのでしょうか。これには「仏教」ならではの理由があるようです……

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ダメといわれたけどやっちゃった偶像崇拝

仏教とは今からおよそ2500年前に、インドで生まれたお釈迦さま(ブッダ)が説いた「人が生きていくための教え」です。仏教で語られる教えは数多くありますが、その中に「偶像崇拝を禁じる」というものもありました。そう、仏像を作ることは公式に禁止されていたのです。

しかしお釈迦さまが亡くなってしまった後、残された多くの弟子たちが祈り崇拝する対象として、目に見えるものが必要になってきました。

「やっぱりブッダさまのお姿はまずいよね~」
「象徴的なものならギリいけるんじゃない?」


などという会話が交わされたかどうかはわかりませんが、当初は「輪宝」や「仏足石」「菩提樹」など、仏教の教えの象徴となるものを用意して拝んでいたようです。このように仏像ではない対象を拝み、崇拝していた時代を「無仏像時代」と呼び、お釈迦さまが無くなって約500年は続いたのだそうです。

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異文化と交わり生まれた仏像

その後仏教は多くの国へ伝わり、ガンダーラに入った際にギリシャ美術(ギリシャ彫刻)と触れたことで初めて仏教彫刻が誕生することになります。

そのため、当時の仏像は日本で見るようなふっくら柔和な印象の造形とは違い、ギリシャ彫刻のような凛々しい姿で現されているのも特徴です。仏像生誕の地がガンダーラであるといわれる理由は、このようなところにあったのでした。

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やっぱり行きたかった仏像企画展

仏像のルーツについてはもっと語りたいこともあるのですが、最後は今回どうしても言いたかった仏像企画展について語らせてください。自粛、STAY HOMEが続く日々ですが、2020年は個人的に仏像企画展のアタリ年だと思っていたのです。(それだけに悔しいっ!)

というのも、各地の国宝・重文クラスの仏像が博物館で見ることができるというだけでなく、どの企画展のコンセプトがすごくよいのです。以下はそう感じている2020年の仏像企画展を紹介させていただきます。


日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」
(東京国立博物館にて2020年1月15日開幕~会期中に中止)

2020は日本最古の正史『日本書紀』が編纂された養老4年(720)からちょうど1300年にあたります。その記念に、島根県と奈良県が共同で行ったのがこの企画展です。

島根県は言わずと知れた出雲大社のある県で、そこで祀られるオオクニヌシは「幽」、すなわち人間の能力を超えた神々の世界を司るとされています。一方奈良県は、天皇のいた地であり「顕」、すなわち目に見える現実の世界で、政治の世界を司るとされているとし、この「幽と顕」をコンセプトに企画されていました。

企画展では、神仏の信仰・伝説と、人が紡いできた歴史の両方から日本という国が作られていった流れを知ることができ、古墳マニアと仏像マニア両方を満足させてくれるスペシャルな企画展でしたが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止のため残り10日ほどを残して企画展中止となりました。

特別展 毘沙門天ー北方鎮護のカミー
(奈良国立博物館にて2020年2月4日開幕~会期中に中止)

魅力的な仏像は数多く存在しますが、「毘沙門天」にのみコンセプトを絞り全国から毘沙門天像だけを一堂に集めるというところに、主催者の計り知れない想いを感じます。

企画展自体は、開始から約3週間で、新型コロナウイルス感染拡大防止のため企画展中止となってしまいましたが、尖りに尖った企画展でしたので本当に残念です。

奈良国立博物館は、2017年に開催された快慶展でも、全国から阿弥陀如来像を集め、独特な仏充空間を作り出したことは記憶に新しいです。きっとこれからも仏像マニアをうならせる企画展を開催してくれることでしょう。

法隆寺 金堂壁画と百済観音
(東京国立博物館にて2020年3月13日開幕予定が中止に)

法隆寺といえば、聖徳太子が建立した寺院として有名ですが、この企画展では、法隆寺境内にある金堂の壁面に描かれていた7世紀末頃の仏教絵画の模写や法隆寺保有の仏像を集めて展示とのことでした。

特に国宝・百済観音は飛鳥時代の仏像を代表するもので、初めて目にする人は、ある意味異様なその姿に驚いたことでしょう。すらりと伸びきった四肢は平安・鎌倉期の仏像にはない、人の様相とは全く違った表現です。また水瓶を持つ指はとても軽やかで、不思議な魅力を醸し出しています。1997年にはルーブル美術館でも展示されました。

この企画展は内覧会は行われましたが、やはり新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開幕に至らず中止となってしまいました。

「聖地をたずねて-西国三十三所の信仰と至宝-」
(京都国立博物館にて2020年4月11日開幕予定が延期に)

聖地巡礼というのを聞いたことがあるかと思います。有名なものは四国のお遍路などが思い浮かびますが、実は全国各地に存在していて、この企画展のテーマとなっているのが「西国三十三所霊場」です。

この企画展の最もアツいところは、この三十三所すべてのお寺から仏像や宝物が集まるというところ。宝物を観るという意味に限っては、この企画展に行くと三十三所分、楽しむことができるのです。一般公開していない秘仏も出展されるのだとか。

この企画展は現在開催時期を延期ということになっていますので、これから改めて観に行くことができるかもしれません。

特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」
(東京国立博物館にて2020年6月16日~8月31日開催予定)

仏像の中には言わずと知れた美仏がいくつか存在していますが、この聖林寺にある十一面観音もそのひとつです。頭上の化仏(けぶつ)以外の様相はいたってシンプルですが、じっくり見るとその美しさに気づきます。

直立不動のように見え、水瓶を軽くつまむ指、気の流れを促すかのように動く右手の指先。華奢にも見え、肉感的にも見えるからだのライン。パーツそれぞれの美しさを、流水のように表現されている衣紋が見事にまとめてくれているかのようで、うっとりしてしまいます。

こちらの企画展は公式サイトがオープンされていますが、新型コロナウィルス関係での延期などの情報はまだ公開されていません。

いかがでしたでしょうか。仏像企画展のすばらしいところは、その造形のすばらしさはもちろん、古くから今も続く信仰の対象であるということです。仏教という大きな教えや文化から仏像が生まれ、縁というカタチで今私たちが見ることができるのだと思えば、より感慨深く見ることができるのではないでしょうか。



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