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テクノロジーカンパニーのプレイドが、雑誌『XD MAGAZINE』を発刊した理由と発売までにやったこと #XD_MAGAZINE

久しぶりにXD編集部noteを書きます、XD編集部の川久保(@kawatake)です。先日、弊社プレイドから”ジャンル横断で体験の価値を追うCXの専門誌”『XD MAGAZINE』を発刊しました。

「あの取り組みはなに?どうして始めたの?」と聞かれることが何度かあったので、今回の雑誌発刊の経緯などを自分のメモも兼ねて書いてみたいと思います。

(前提)プレイドについて

プレイドのことを知らない方も多いと思うので、プレイドの説明を載せておきます。

■株式会社プレイドについて
当社は「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げるテクノロジーカンパニーです。2015年にCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」の正式提供を開始しました。2018年にはスマートフォンアプリ向けの「KARTE for App」と、顧客に関わるあらゆるデータをKARTEと繋ぐ「KARTE DataHub」の提供を開始しています。
https://plaid.co.jp/

我々のメインの事業はCXプラットフォーム「KARTE」の開発と運営ですが、KARTEでお手伝いしている領域であるCX(顧客体験)の価値や考え方を世の中に広めるため、CXに関わるメディアやイベントに取り組んでいます。その取り組みについて、会社案内の冊子ではこのように案内しています。

200824_PLAID_会社案内_PDF版_page-0007

今回の雑誌も「この活動の一環としてやってみました」ということになるのですが、なぜ雑誌なのか、なぜ売るのかについては以前から取り組んでいたことの続きでもありました。


雑誌の前に冊子を作っていた時期

『XD MAGAZINE』は、もともとは季刊のフリーペーパーとして2019年10月に発行し、2020年10月まで1年をかけて計4誌を発行しました。当時、発行の意図としてこのように説明しました。

「XD MAGAZINE」では、オンラインで発信していたXDとCX Clipの記事を再編集して、手に取りやすい冊子形式でお届けします。オンラインのメディアでは、深く濃い内容の記事を提供することができる一方、情報の一覧性や伝える情報のメリハリでの自由度が低く、すべての記事や情報が横並びになってしまいます。今回の「XD MAGAZINE」は冊子形式で情報を再編集することで、CXを知るための入り口となることを目指し、XDやCX Clipで紹介しているCXの“ものがたり”に触れる機会となることを狙いとして、創刊しました。
https://press.plaid.co.jp/data/191030/

旧『XD MAGAZINE』を発行してわかったことが、いくつかあります。

・同じ内容、インタビューの再編集であっても、見せ方や取り上げ方を変えることで人々に興味や関心を持ってもらえる
・特に、レイアウトの自由さ、メリハリを効かせる部分はウェブよりわかりやすくなる
・「特集」というテーマでくくることにより、情報の見せ方に変化をつけることができる
・印刷や紙質でもちょっとした違いを演出できる(そして、思っていたよりその部分に反応する人が多い!)

このような反応を当時いただきました。


なぜ雑誌へと変わったのか

冊子から雑誌への変化(進化)したのは、下記のような考えがあったからです。

・旧『XD MAGAZINE』の反応から、紙媒体で情報を届けることの可能性がさらにあると思えた
・特に、ウェブの記事やインタビューでは分断されてしまう情報が、紙媒体にすることで、情報のつながりを持って届けることができる実感を持てた
・特集を複数作ったり、コラムや読み物を増やすことでより「雑味」のある構成にでき、さまざまな情報に触れてもらえる
・ウェブの記事をベースにした冊子では、情報も見せ方も物足りない部分があり、オリジナルで作りたいという欲が徐々に湧いてきた

簡潔に書くと、雑誌に進化することでより良いものにできそうという確信があったということになるのかもしれません。

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このような思いを漠然と抱いていたのですが、この方向で進むべきだと確信を持てた出来事がちょうどプロジェクトの進行中にありました。愛してやまない雑誌『BRUTUS』の編集長・西田善太氏と副編集長・杉江宣洋氏に、インタビューする機会があったのです。

特に、「雑誌の基本」ではあると思うのですが、デザインとストーリーが一体となった構成の話を聞いたときに、まさにこれが目指すべきところだと興奮したことを覚えています。

『BRUTUS』を手に取るともうひとつ気づくのが、特集に小気味よい起伏のあるストーリーを感じられることだ。

冒頭は前奏のような期待感をふくらませる記事が流れ、特集タイトルと印象的な写真やイラストからなる扉が現れる。大きめのインタビューが入り、細かなルポなどが続く。たまにブックインブックがはさまって、後半、リズムが変わるように少しレイアウトが変わる……といった具合に。

西田氏「右開きの雑誌ならば、人の視線は、右上から左下に流れて読む。最初のページからリニアに、つまり流れの中で順に読むことを前提にすると、記事内容にもレイアウトにも心地よい順番がある。ミュージシャンのアルバムづくりと似ています。一曲めは何でつかむか。真ん中くらいは少し毛色の違う曲にするか…と考えながら構成を考えるわけです」

いわば雑誌の基本かもしれないが、デザインとストーリーが一体となった秀逸な構成はひときわ目立つ。しかも特集ごとにデザインからすべて変えているわけで、そのこだわりの強さは他の商業誌に類を見ない。

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また、佐々木康裕氏の著書『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』中にこのような記載があります。

AwayやCasperは、雑誌を作ることによって、プロダクトに加え、ストーリーや写真、またそれらから構成される世界観を届けている。そして、その世界観をベースに顧客との関係を築くことで、顧客は気づけばブランドの忠実なファンになっている。

D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』より

D2CブランドのAwayやCasperがオリジナルの雑誌を作ることで、彼らのプロダクトの世界観を伝えているという話です。この本も雑誌を作ると決めた後に読んだものなので、この話を参考に企画していない点は主張しておきたいのですが笑、方向としては良さそうだと後押しを受けたエピソードでもあります。Airbnbも2017年に雑誌を創刊していますよね。


どう作ったのか

旧『XD MAGAZINE』の冊子時代から、制作はBAKERUさん(前:東京ピストルさん)にお願いしています。デザインはLABORATORIESさんに一貫して手掛けていただき、デザイン分野に関しては私からのフィードバックは毎回ほとんどないほど、素晴らしいものを制作していただいています。今回も同じチームで進めました。

社内の体制としては、旧『XD MAGAZINE』の冊子時代には私だけで進めていましたが、こんな楽しいプロジェクトを独り占めするのも悪いので、XD編集長のイイヅカ(@aixca)とXD編集部のNJさん(@hand45)、佐伯さん(@tkashiwabara09)にも声をかけて一緒に編集会議に参加してもらいました。

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少し脱線してしまいますが、新しく制作物を生み出すプロジェクトにおいて、外部のチームと「プロジェクトチームを組む」ことは、いつも難易度が高く、とくにスタートアップに在籍している場合にはとても難しいなと感じます。

前職の広告代理店時代には、動画・グラフィック・イベント・PRなど、それぞれの分野において何でもボールを拾ってくれる、実現への道筋をつけてくれるプロデューサーが協力会社さんにいて、1を相談したら10になって実現される環境でした。それが、スタートアップに転職すると予算規模や会社の与信などの問題もあり、以前一緒に仕事していた方に依頼することも難しくなります。そのため、質へのこだわりや考え方が合う外部の方を探すという作業が必要になり、以前とは逆に10を相談して1しかアウトプットが出ない状況が訪れたりします(この状況は単純に相互理解の不足や、目指している質への理解の不足から訪れることも多いです)。

そんな中でも粘り強く求める質に近づくように話し合ってなんとか理解してもらうなど、なにもない環境から制作物をつくるときには、制作過程よりも制作体制をつくるほうが大変なんだな、その環境があるのはとてもありがたいことなんだなということを学びました。

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それはさておき、以前から一緒に動いているBAKERUチームとやるといっても、「雑誌のコンセプトは、名前は、どういう特集にする?」ということをまず決めなくてはいけません。

今回の一番の反省点なのですが、本来は当初のこの部分に時間をかけて作り上げるべきだったのが、しっかりと議論を重ねられませんでした。今回のリニューアル創刊号の内容はぎりぎり及第点の出来になったと思っていますが、その内容に心から満足しているかというとまだまだです。その理由の一つが、この核となる部分でしっかりと議論ができなかったことが影響していると思います。

この反省を踏まえ、次号の制作では「どのテーマを、どう切り取るか」についての議論がしっかりされていますので、今回のリニューアル創刊号は「vol.0」だと思っていただき、次号が実質的な「vol.1」として受け取ってもらいたいと思っています。

思い返せば、冊子の旧『XD MAGAZINE』のときにも、初号はドタバタで反省点も多かったなと思い出しました。プロジェクトチームを作る話と合わせて、新しいことをやる場合には最初からうまくいくことはなかなか無いものです。反省点や足りていなかった点をチームで振り返るとともに、外部からの声も真摯に受け止め、「全てはより良いものを作るための材料」と捉えて、次に向けて動き出す前向きさが必要なのかもしれません。

そんなことがありつつ、特集や取材先を決め、コラムを書いていただく人を選定し、カバー写真に出ていただく人(今回はアイドルの和田彩花さん)に依頼したり、次第に雑誌の体裁に近づいていきました。


販売にあたっての苦労

今回は当初から販売したいなと考えていたのですが、販売にあたって必要な知識やノウハウがなく、一時期は途方にくれていました。

制作も終盤に近づきそろそろ決めないとまずいなと思っていた時期に、一念発起し、自分で出版に関する情報を調べるために動きました。自分で動いてみたものの、ウェブを検索してもためになる情報はほとんどなかったり、外部で手配代行してくれる会社があるかもと思って調べたりしましたが該当する会社はなかったりと、簡単にはいきませんでした。

最終的には日本図書コード管理センターの説明を読み、ISBNコードというものを自分で申請してみたらあっさり申請できました。役所的な印象を受け発行まで時間がかかりそうと当初思ったのですが、出版社記号、図書記号の発行はとても早かったです。プレイドが出版社としてあっさり登録され、やってみれば何でもできるものだなと思ったことを覚えています。

販売が決まったとなると、次は販売チャネルです。まずは最小限でも自分たちでオンラインで販売できる場所をつくろうと、Shopifyでのオンラインストア構築に動きました。Shopifyを選んだのは、以下の理由からです。

・私たちの提供するKARTEとの相性がよく、簡単にKARTEのタグを入れられること
・Shopifyは一部でAmazonキラーと呼ばれているが、ECに疎い自分には実態はわかっておらず、自分で触って確かめたかった
・特に、ECのパッケージやカートシステムなどの名前をプレイド入社以後はよく目にするものの、実は中身がわかっていないので、何がどうすごいのか体験したかった

このような理由でShopifyを選び、アカウントを開設して触ってみましたが、管理画面がシンプルで簡単にできそうだったので、そのまま自分でほとんど設定しちゃいました。トップの写真にアドバイスもらったところ以外は一人でやってしまったので、ほとんどデフォルトのデザインのままです。ECもなにもかも初めての私でも簡単にオンラインショップを開設できたので、オンラインで販売することのハードルは本当に低くなっているのだなと実感できました。今はシンプルなデザインですが、今後はこのオンラインストアもデザインチームによる改修が入り、さらに良いものになるかもしれません!


書店に置いてもらうために

オンラインで販売することはできるとわかった後に、書店にも置いてもらいたいので、営業をはじめました。書籍の流通には取次会社が集約する制度が一般的なようですが、我々のような会社の場合にはまずは内容に共感していただいた上で、数は少なくても取り扱ってもらうことが大事だと考え、直接取引で置いて頂ける場所を探すことに。

書店のメールアドレス、問い合わせフォームが公開されている場合にはそちらに一件一件連絡し、返事を待ちました。発売前は時間がなく、電話や訪問しての営業はきちんとできなかったので、これから少しずつでもやってみようかなと考えています。現在までに取り扱っていただいている書店やお店は、こちらになります。直接取引での取引を検討していただける方、下記の販売場所案内に書いている連絡先までぜひご連絡ください!すぐにお届けします。


さらに発売後に知ったのですが、書店と出版社とつなぐクラウドサービスの「一冊!取引所」というサービスがありました。まさに我々にとってありがたいサービス、さらにこういう業界の負担を減らすサービスは大好きなので、すぐに飛びつきました。こちらでの案内で取り扱っていただける本屋さんに出会えたので、とても感謝しています(しかも、地元福岡の馴染みのある場所にあるとても雰囲気の良さそうな本屋さんでした!)。


発刊後の反応

発刊後の反応はさまざまな種類ありましたが、簡単にまとめると「予想していなかった取り組み、紙やデザインのクオリティへの驚きは多い」が、「内容だけで本当に驚きや感銘を与えるところまでは到達できていない」かなというのがあります。

「vol.0」として、今起きている事象を広く伝えた号なので、人によっては少し薄く感じた部分もあるかもですね。一つの号で一つのテーマを取り上げる特集に次回以降はする予定ですので、次回を楽しみにお待ち下さい!

余談ですが、Amazonで最初に(そしていまのところ唯一)ついたレビューがこのような辛辣なものでした。

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webになんでも情報が載る時代において、個別の情報でwebの情報との差別化は無理だと考えており、雑誌にすることの価値はそこではないと考えて作ったものの、実際こういうコメントが載ると少しへこみますね。しかし、情報が出し手の意図通りに伝わることなど、ほとんどありません。辛辣なコメントでもわざわざ書いてくれるのがありがたいことなので、他の方も意見、感想あったら匿名でもビシバシお寄せください。


発刊後に大変だったこと

前述の通り、ShopifyでPLAID Online Storeを用意して販売しましたが、すぐにAmazonでの販売もはじめました。どれほど売れるかわからないため、Amazonのフルフィルメントセンターに頼らず、自社から発送です。

そのため、発刊後はオンラインストアの店長として、ShopifyとAmazonの注文管理、発送業務もやっています。Shopifyでオリジナルの納品書を作る、発送業務の負担軽減のために包装や封筒を変えてみる、ポストに投函して帰ることが日常になる(クリックポストは神サービス!)など、細々とやった店長業務のおかげで今後使えるかわからないノウハウも溜まったので、気が向いたらそれはそれでnoteにも書いておこうと思います笑


今後に関して

「vol.1(実質vol.0)」のあとがきにも書いてありますが、次号は2021年9月に発行予定です。次号に向けてもう活発に議論しているので、ご期待ください。

最後に恒例ですが、仲間の募集をさせてください。この雑誌もそうですが、プレイドのこと、KARTEのこと、また他にも我々が考えていること、目指していることを社会や社内にきちんと伝えたいと思っていますが、まだまだ仲間が足りないです。

テキストの編集という狭い意味での編集ではなく、情報を編集、加工して社内外に届けるという意味での編集や場を作ること。または、動画や記事、冊子などのコンテンツを作って相手に届けることに興味がある人、やってみたい人がいたらぜひご連絡ください!

企業と社会との関わりを、そのままストレートな言葉で伝えずに、相手が理解しやすい形やタイミングで表現することだと考えています。気になる方は何卒、お話ししましょう、


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