利益を生むブランディングとは?
みなさん、こんにちは。EXIDEA(エクシディア)の江口です。前回は、デザインについて書きましたが、今回はブランドとビジネスの関係性について書きます。
企業がしなければならないこととは?
ブランドの話をする前に、企業がしなければならないことを明らかにしましょう。CSR(企業の社会的責任)も言われて久しいですが、どんな企業でもしなければならないこととは、いったい何でしょうか? それは「ビジネスの成長」と「エンゲージメントの向上」です。
現代においては、どちらも当たり前に言われていることですね。ただし、日本でのビジネスの成長は、コストカットや薄利多売による売上の増加が長く行われてきました。これらの方法は、グローバル化していく中で、日本企業のROE(Return On Equity = 自己資本利益率)の低さなどが露呈し、今までの日本企業の成長は健全とは言えないことが周知のものとなっていきました。
ROEが低いということは、利益の出し方の効率が悪いということであり、経営層の責任になります。そうして、ちゃんと効率よく利益を出し、成長している企業を参考にすることで、自らも成長する企業がでてきました。その共通点のひとつが、ブランドの成長です。
ユニクロを展開しているファーストリテイリング社の成長を見ると分かりやすいですが、ユニクロは1990年代後半から、広告のトーンが劇的に変化しました。それまではお笑い芸人を器用したりして、安さを売りにした賑やかな広告を展開していました。
(ご存知でない方は、「ユニクロ CM 歴代」で検索してみてください)
しかし1998年に、当時世界トップレベルの広告代理店W+K(ワイデンアンドケネディ)のジョン・C・ジェイ氏をクリエイティブパートナーに起用することで、広告で伝える内容やデザイントーンを一変させたのです。ミュージシャンや芸能人を起用したフリースのCMを覚えている方も多いのではないでしょうか?(あ、私の年齢がバレそうですね)
そして、その後のユニクロの成長はみなさんの知る通りであり、2015年には以前協力関係にあったジェイ氏を、ファーストリテイリング社のグローバルクリエイティブ統括として招聘したのです。
日本からは佐藤可士和さんが、クリエイティブディレクターとして長く協力し、ユニクロのブランドイメージの醸成を手伝っています。
この一連のブランドマネジメントの歴史と、ファーストリテイリング社のホームページにあるIR情報をご覧いただければ、事業成長との整合性が分かると思います。
(他にも株価の推移を調べていただければ)
上記のようなブランドマネジメントと事業成長の関係性は、ファーストリテイリング社に限らず、Appleやコカ・コーラ、星野リゾートなど、一般的にブランドがあると思われるような企業を調べていただければ、より一層ご理解いただけます。
ブランドには先行優位性がある
さて、前置きが長くなりましたが、今回の内容で大事なことを書くと、「ブランドには先行優位性がある」ということです。
どういうことかと言うと、消費者や潜在顧客層が最初に思い浮かぶブランドが、その業界で優位になってしまうということです。
そのひとつに、広告業界で長く言われている法則として「バンパイア効果」というものがあります。詳しい研究はされていないとも言われていますが、内容を以下に引用します。
この法則の例を挙げると、「新商品の炭酸飲料の広告を打つと、コカ・コーラが売れてしまう」ということであったり、有名タレントを器用したCMの商品よりも、器用されたタレントの方を記憶してしまうということが挙げられます。
こういった現象が発生するのは、コカ・コーラや有名タレントにブランドとしての認知力があるためです。
実はこういうことは世の中に多く存在しており、例えば「和菓子なら、虎屋」「果物なら、千疋屋」など、「〇〇なら、△△」と思い浮かべられる商品や企業は、その業界内でのブランド認知があるということになり、そのポジションに先に入られてしまうと、入れ替わることは困難を極めます。
これは実際の購買行動は別として、和菓子に興味を持ったり、買おうと思ったときに「虎屋」というブランドを、第一想起として思い浮かべやすくなっているということです。ビジネスにおいて、これが有利に働くと想像するのは難しくないでしょう。
ただし、このことは「後発企業はブランド認知が獲得できない」と言っているのではありません。既存の業界で、強いブランドが存在している場合には、そのブランドとは違う文脈で、コミュニケーションの戦略を計画する必要があり、その文脈から市場のポジションを獲得し始めれば良いということです(GoogleやAppleも当時は後発企業でしたしね)。
例えば、和菓子で言うと、東京都世田谷区にある「タケノとおはぎ」は、和菓子の種類である「おはぎ」に特化して行列を生み出しています。また、愛知県豊橋市に本社がある「久遠チョコレート」では、有機農法や森林農法によって栽培されたカカオを使用したピュアチョコレートや、日本各地の食材を組み合わせたりと素材にこだわりながら、見た目にも美しいチョコレート菓子を作って全国展開しています。さらに、障害者がチョコレート職人となり、ソーシャルビジネスとしてのブランドも確立しています。
最近ではこういった自分たちの事業の核となる部分を立たせながら、ブランド化を目指している企業が増えています。
ブランディング関係の本に「差別化」や「らしさ」という表現が出てくるのは、このためです。企業や商品、サービスの本質の部分(アイデンティティ)を見つけ、そこからコミュニケーション戦略を計画し、実行していくことで、その分野のカテゴリーにおける第一想起のブランドとなることができます。
そして、前回の記事でも書きましたが、この計画と実行(アウトプット)を担っているのが、デザインです。
デザインをビジネス戦略に取り入れる理由
以上のことからも、ビジネス戦略の計画を練る時点で、クリエイティブディレクターやアートディレクター、デザイナーなどのデザイン専門職と一緒に動いた方がいいことが挙げられます。
しかし、日本の現場では、この戦略のところにデザイン専門職がいないことが多く、マーケターや営業職などが、コミュニケーションやプロダクトの方向性を決めてしまうことが多かったり、コンサルティング会社に頼ってしまう傾向があります。それが、日本企業の作る商品やサービスにブランドがない理由でもあります。マーケティング職や営業職の人が、コミュニケーションやプロダクトの方向性を決めようとすると、他と同じようなことをしながら、訴求で目立とうとしがちになります。その結果、各社似通ったデザインになり、差別化にもならず、ブランドポジションの確立ができなくなります。
これは、アウトプットを作り出すことができないコンサルタントでも同様の傾向があり、優れていないコンサルタントはどんなビジネスも特定のフレームワークに当てはめて考えてしまいます。一方で、優れたコンサルタントは柔軟性があり、最初期からデザイン専門職に協力を求めてくれます(これはEXIDEAの強みですねw)。
プロダクトデザインであれば、品質が悪いものは売れないでしょうから、品質の良し悪し以外にも、ユーザーにとってのベネフィット(顧客価値)が必要となったり、その事業をしなければならない社会的価値が必要不可欠となります。
また、コミュニケーションデザインにおいては、何を伝えるべきで、何を伝える必要がないのかを決め、適切なコミュニケーションをその都度行う必要があります。そして、ブランドとは長い時間かけて醸成される、企業の生き様が表れるものです。
ブランドを構築できている企業やサービスと、そうではないものとの違いとは、ユーザーと握る約束事(ブランドプロミス)が、果たされているかどうかにもかかってきます。よく「社会のため」や「人々への貢献」という言葉を聞きますが、そうではない事業はそもそも事業として成り立ちません。そういった形骸化された言葉ではなく、事業の核となるアイデンティティや、ビジョン・ミッション・バリューが、ユーザーへの約束事として、しっかりと機能している状態になってはじめて、ブランドが作られていきます。そのためには、長期的な視点で物事を見通せる人物が必要不可欠となります。
今回取り上げた企業やブランドは、どの企業よりもいち早くデザインに力を入れた企業であったり、経営ポジションにデザイン専門職に参画してもらったりしています。もしも、既存の市場での頭打ちや顧客エンゲージメントなど、事業成長に関することでお悩みであれば、ブランドマネジメントを強化することをお考えください。
あ、そのときはEXIDEAにお問い合わせいただけると、嬉しいです!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回は、実際にブランディングの方法について書こうと思うので、お楽しみに!
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