30日間の革命 #革命編 14日目
「楽しくはないけど、これが私の望んだ状態だよ」
江藤は加賀にそう言い切った。ここで加賀たちとの関係が終わってもいい。そんな覚悟が江藤の中にはあった。
「だから、ごめんけどこの話は馬場に報告するよ。多分生徒会から妨害を受けるから、革命はもう出来ないと思うけど、これも私の選んだ道だから。ごめんね」
江藤は加えてそう言うと、この場を去ろうとした。自分の選択は間違っていない。そう自分に言い聞かせ、加賀に背を向け歩き出す。
「江藤ちゃんも、一緒に革命起こさない?」
そんな後ろ姿にかけられた言葉は、江藤が想像もしていなかったものだった。思わず江藤は振り返る。
「はあ? 何言ってんの?」
加賀はいまだ江藤を真剣な眼差しで見つめていた。
「一緒に革命起こそうよ。俺たちで学校を変えるんだよ」
「さっき私が言ったこと聞いてた? 私は馬場と一緒にいることを選んだんだって。あんた達とは一緒にやらない。そう言ったでしょ」
「俺は江藤ちゃんと一緒にやりたい。江藤ちゃんにとって、今の居場所が楽しくないっていうなら、俺たちが楽しい居場所になる。最初に言ったけど、江藤ちゃんが本当に望んでいる状態だったなら、こんなこと言わないよ。でも、苦しそうだった。『これが私が望んだ状態』だって言った時の顔が、凄く苦しそうに見えた。……道はひとつじゃないよ。楽しいって思える場所を選ぶことは悪いことじゃない」
加賀がそう言うと、
「だったら馬場を裏切れって言うの? きれいごとばっか言うなよ。あんた達はいいよ。気楽で楽しそうで。私の立場がどれだけきつくて辛いかわかる? 皆から怖がられて、気を使われる。後輩たちにも、裏じゃ何言われてるか分からない。でも、強くなくちゃダメなんだよ。誰からも怖れられる存在でなきゃダメなんだよ。……そんな簡単なことじゃないんだよ」
と江藤は言葉を強く発した。皆が恐れる女子バレー部キャプテンの江藤としての言葉だった。
「……うん、きれいごとは言わない。こっち側に来るってことは、まさに馬場を裏切ることになる。だから、馬場を裏切ってこっち側に来て欲しいって思ってる。でも、それは馬場を貶めるためじゃない。あくまで学校を変えるための一つの手段だ。俺たちが起こそうとしている革命は、誰かを貶めたり、追放したりするようなことが目的じゃない。自分たちを変えることなんだよ。だから今、江藤ちゃんも自分の中で革命を起こして欲しいんだ。こうじゃなきゃダメだとか、周りの目は関係ない。自分がどうしたいかだよ。今の自分を、『女子バレー部のキャプテンの江藤さん』を変えてほしい」
それでも加賀は江藤の剣幕に圧されることなく真っ直ぐ言葉を伝えた。
「……もういいよ。話しにならない。このことは馬場に報告するから」
江藤はそう言い残すと、加賀の前から去っていった。加賀は江藤を呼び止めることなく、その後ろ姿をじっと見つめていた。
その日の放課後、坂本は加賀に話しかけた。
「お昼に江藤さんと話したみたいね。江藤さんとはどうだった?」
加賀は机に突っ伏していた顔をあげて坂本の方を見た。まるで苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「……ごめん、失敗したよ。もう今頃馬場の耳には革命のことが入ってるかもしれない……」
そう言うと再び加賀は机に顔を伏せた。
「え? どういうこと? 詳しく話を聞かせてくれる?」
加賀はばつが悪そうに、江藤との出来事を坂本へ話した。
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