#12 スピッツって犬ですか? 歌手ですか?
保健所で勤務していたとき、医療知識のない事務職の自分は、上司や同僚の保健師がさらっと使う専門用語にしばしば驚いた。
今日はその思い出を語っていきたい。
専門用語に困惑した話
ある日のこと。
同僚の保健師が勤務中に、
「スピッツ貰ってきましたー!」と、皆に声をかけた。
なんですかスピッツって。
犬ですか、歌手ですか。
同僚の手元を見ると、袋に入った試験管がたくさん。
あ、PCR検査のときに唾液を取るアレだ!
経験のある人もいると思うが、PCR検査のやり方は大きく分けて2種類。
インフルエンザのように鼻に綿棒を突っ込んでグリグリする検査と、唾液を採取する検査。
諸事情により病院に行けない人がいるときや、一度に大勢の人を検査するときは、唾液で検査を行うことがある。
検査する方にスピッツを配り、唾液を自分で取ってもらう。唾液は職員が自宅まで回収するか、保健所まで持ってきてもらう。
試験管を見ながら
「そうか、お前、スピッツって名前だったのか!」
とやけにしみじみしてしまった。
この感じ、自分の知らない方言を突然使われたときによく似ている。
へー!そんな風に表現するんだね!
という、新鮮な驚き。
陽性患者の記録を見ていたら、BTという文字にしばしば出くわした。
BTって何?
あ、体温か! Body Temperatureの略かこれ。
SpO2の概念も初めはよくわからなかったし、パルスオキシメーターすら知らなかった。
陽性患者の入院先の調整をしようとしたら、職員に「その人のADLはどれくらいなの?」と聞かれた。
えーでぃーえるって、なに?
ADSLならわかるんすけど。
ADLとは、Activities of Daily Livingのこと。
(公財)長寿科学振興財団が運営するサイトでは
と紹介されている。
医療や介護の現場では、その人が日常生活を送るための動作をどのくらいできるかを評価している。
なるほどな、もっと勉強せねば。
専門用語とはちょっと違うが困惑した話
問い合わせに対して、ウイルスのことを「菌」と呼んで説明していた職員が、上司から注意を受けていた。
すいません!
自分もウイルスと菌の違い、わかってなかったです!
いやー、でも相手が「菌が、菌が」って呼んでたら、自分も釣られて菌って言っちゃうよね。
伝われば菌でもウイルスでもいいんじゃないの?
……ダメですか、ハイ。
とはいえ難解な専門用語があるときは、相手に合わせてわかりやすい言葉に置き換えるべきだと思う。
上司の言うことが腑に落ちなかったが、ウイルスくらいの単語なら、誤解を招かないようにしっかり使えってことか。
どうでもいい話
これは本当にしょうもない話。
公文書では基本的にウイルスの「イ」は大文字で記載される。
小文字でウィルスと書かれているものを見ると、なんかこう…
「ウィル・スミスかよ!」とツッコみたくなる。
ならないか。
当時はそんな事を思っていたのだが、いつの間にやらウィル・スミスが騒動を起こしていて驚愕した。
そのまま載せるべきか否か迷ったが、載せることにした。
すまん、ウィル・スミス。
いつも以上にまとまりのない文になったが、
自分と縁のなかった分野の言葉を知るのは、異文化交流のようで楽しい。
最後に。
とりあえずみんなでスピッツ聴こうぜ。
にわか以下の自分が一番好きな曲を添えて〆とする。