【読書】日本資本主義の父からの教訓/「論語と算盤」から
現代日本経済を支える多種多様な会社・経済団体を明治から昭和にかけて設立しまくった日本資本主義の父と言われる渋沢栄一。そんな日本の偉人が心のよりどころとしていたのはなんと論語だった。なぜ論語という紀元前に書かれた書物が現代を生きる我々の人生に役立つのかを淡々と説明した書が「論語と算盤」。原文読むのは面倒くさいので、その現代語訳を読んでみた。
記事要約
本書は本人が執筆したものではなく、渋沢栄一の講演の口述日記を纏めたモノ
道徳のない商才は取るに足らず、目指すは「士魂商才」、武士のような精神と商才を兼ね備えた実業家となる、そのためには論語が必要不可欠。
いずれにせよ日本を代表する実業家が残した口述記録、読みやすいのもあり、一読の価値あり(まずは論語を読んでから)
1.本の紹介
本のタイトルは「論語と算盤」(1916年刊行)。著者は渋沢栄一(1840-1931年)とされがちだが、実は本書は本人が執筆したものではなく、渋沢栄一の講演の口述日記を纏めたモノで、それを評論家の守屋敦が現代語訳。
渋沢栄一は埼玉県深谷市の血洗島という物騒な名前の村の豪農のことして江戸末期に生まれ育つ。小学校低学年時点で中国古典を読みだすような神童だったらしく、とんとん拍子で出世していったのかなと思っていたが、実はそうではなかったらしい。高崎城乗っ取り計画や横浜外国人に留置焼き討ち計画計画を立てるなど、若いころは結構過激的な性格だったらしい。
その後縁があり、一橋家の慶喜に仕えることになり、1866年/26歳時点で慶喜が将軍になり渋沢本人は幕臣に。67年に実施された万国博覧会に慶喜の異母兄弟であった徳川昭武の随員としてフランス渡航&ヨーロッパ各国訪問。その間に幕府の大政奉還が起こり時代は明治に突入、帰国すると今度は明治新政府の省庁に努めることに(1969年)。数年局長級のポストを務めた後退職、実業の世界へと足を踏み入れることに。
そこから日本を代表する各種銀行・保険会社や経済団体、福祉・医療機関、教育機関等を立ち上げるが、とてもすべて網羅しきれないので割愛。
2.本の概要
第一章の処世と信条は、論語とそろばんという、一見すると対照的な二つのモノの話から始まる。論語は儒教的な道徳が詰まった書物、一方、ソロバンは金稼ぎの道具。しかし渋沢は、下記の絵画に縦書きで書かれたように、商事の礎は論語であると説いている。道徳のない商才は取るに足らず、目指すは「士魂商才」、武士のような精神と商才を兼ね備えた実業家となる、そのためには論語が必要不可欠とのこと。
第二章の立志と学問は、どちらかというとこれから志を立て学問で身を立てる青年たちへ向けた言葉が多い。要は「自ら箸をとれ」で、頼れる人がいないとか育ててくれる人がいないとか言って嘆く暇があれば、自ら動け、そうすれば物事は好転する、ということ。なお、渋沢自身の立志(政界ではなく商業で身を立てる)は30や40過ぎてからだったとし、15や16の頃に立志ができていたらどんなに良かったかと嘆いている一説がある。
第五章の理想と迷信では、仕事に対する向き合い方について言及している。一言でいえば、仕事=趣味とせよ、とのこと。つまり、趣味をするようなわくわくした気持ちで面白味をもってProactiveに仕事に向き合うべしとのこと。
第九章の道徳と情誼では、親孝行の話が出てくる。親孝行は親がさせてくれて初めて子供ができるもの、とのこと。親の言うことを聞かない子供ははたして親不孝なのか?自分の言うことを聞く子供が欲しいなら、動物でも飼えばいいじゃん、と著者はいう。子供が孝行をするのではなく、親が子に孝行させる。子が自分の言う通りにしないと言ってぶつぶつ文句を言う親は間違っている、むしろ子の意見を尊重し、自由にやらせてみる、ぐらいの心構えが必要とのこと。
以上、特に私の心に響いた一説を紹介。他にも、論語を根拠に普段のふるまい方や気概、自分磨きなど様々なことが論じられているがここでは割愛。
3.感想
論語には、現代を生きる我々にも役立つ先人の知恵が満載なことには同感。しかし、弱肉強食&手段を択ばす自己利益最大が原則の商いの世界でも、論語的な道徳は必要との著者の言葉は新鮮。無論、違法行為はだめだが、違法でなければ何してもいいのかという問題でもない。譲れない道徳的な一線があり、それを論語より学ぶべしとのこと。現代の実業家たちのようにもっとカネカネしたことを語っているのかと思ったら真逆でいい意味に裏切られた形。
ただ本書のあとがきによると、渋沢自身はバイタリティーにあふれた人物だったらしい。実業家という面では大きく資する部分はあったものの、女性関係でも非常にアクティブに行動されたらしく、妾さんや私生児さんが多くいたらしい。時代というのもあるのかもしれないが、ただご本人も女性関係だけはだめだということは認めていたらしい。
いずれにせよ日本を代表する実業家が残した口述記録、読みやすいのもあり、一読の価値あり。
最後に一言
なお本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。
あわせて他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。
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