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絵とワードの物語 『またね』 


 いつもより少しだけ重い鞄を手に、硬い座面から立ち上がる。明日からは夏休み。明日から毎日何しようなんて浮かれる気持ちと相反する、ざわざわする心のなか。それにつられて横を向いたら、なぜだかしっかりと目があった。
 ぱちぱちと瞬きをして、それからちっちゃく溜め息をつくまでが同じタイミング。ちょっとだけ、以心伝心かもなんて、嬉しくなったりなんかして。
「宿題ちゃんとやんなよ」
「うつさせてくれる?」
「ダメ」
「ちぇっ」
 じゃあねと手を振って、わたしは前から、キミは後ろから。同時に教室から踏み出して、廊下を左右に分かれていく。
 後ろ髪をひかれる感覚にそうっと振り返ったら、キミも同じ体勢でこっちを見ていた。
 明日からはキミに会えない。そんな寂しさをキミも感じてくれてたら。
「……また、ね」
「うん、またね」
 長い長い夏休みが終わったら、キミはどんな顔を見せてくれるんだろう。
 寂しさの中に滲んで浮いた楽しみが、わたしの足をほんの少しだけ軽くさせた。



絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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