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自閉症の弟と私の夫

年始はわりとがっつり私の実家に夫が滞在しました。
数時間いたことはあったけれど、今年は半日以上はいましたね。
それは結婚して初めてのことでした。

夫が実家に来るときは、今までは何となくまだお客さんをお招きするような感じで、両親もソワソワしていたけれど、今回は家を特に綺麗にすることもなく、豪華なご馳走を準備するわけもなく、自然な状態で彼を迎え入れました。

父も母も夫と話していてとても幸せそうでした。
物静かなタイプである父も、「今度よければご飯でも連れて行くね」と笑顔で言っていて、「あ、お父さん、彼のこと結構気に入ってるんだな、良かったな」と思いました。

夫のお陰で親孝行ができている気がします。
私も両親が彼と楽しそうに話す姿を見て、とてもほっこりしました。

そして、本題。
私の実の弟には重度の自閉症があります。
(弟に関する過去の記事は下記よりご参照下さい。)

弟がパニックになるということもあり、今まで家にはお客さんをお招きしたことがほぼありませんでした。夫が長時間滞在したことがなかったのも、少なからず弟の影響があります。

でも、もう夫だって家族の一員。そんなこと言っていられませんよね。
夫が今回新年の挨拶に来るということで、弟がパニックになったら嫌だな、その光景を見て夫が困ったらより嫌だなと思っていたのですが、
なんとか無事に新年の挨拶ができました。

弟は大きくて逞しい若めの男の人が大好きです。
よく遊びに連れて行ってくれるお兄さん(福祉関連事業の方)がいるのですが、その方が大きくて元気な感じだからということもあるのかもしれません。

夫の横で弟はとても幸せそうでした。
母いわく、「夫の心が綺麗だから、弟も安心して懐いたのよ、よかったわ」とのこと。

夫と私が私の部屋でゆったり寛いでいると、
弟はその場に一緒にいたいと訴えるかのように、でも、少し恥ずかしそうにして部屋に何度も何度も入ってくるのです。「おいでー」と招くと、ニタニタと、でもやはり気恥ずかしそうに、そしてまだ彼の存在に違和感があるのか、たまに怪訝な表情で夫に近づいてきます。

夫は何回も弟に話しかけていました。
「元気?」「何の食べ物が好きなの?」「今日は寒いね」などなど。
弟はただただオウム返しに夫の口から発せられた質問をそのまま
繰り返すだけだけれど、自然体にコミュニケーションをとっている夫と弟を見て、またまたほっこりした私でした。

その日の晩、夫は私に弟への接し方について迷いがあったことを相談してきました。弟は20代後半です。「一人の男性として、敬語で凛々しく話した方が良いのか、それとも、私たちが弟に接するように分かりやすく小さい子と接するかのように接した方が良いのか」と。

夫がきちんと自分なりに考えて弟に向き合ってくれようとしていること、
私はとっても嬉しかったのです。

弟はお手洗いに行くと、しっかりと手を洗えていなくて臭いのする時もあります。鼻をほじってしまって、手と鼻が血だらけになってしまう時もあります。人の持っているものを、かなりの力で奪ってしまう時もあります。極めつけに、機嫌が悪い時には大声で癇癪を起してしまう時もあります。

そんな弟にも、驚かず、夫は弟を受け入れ、
自分なりに考えて向き合ってくれようとしています。

弟を見て、臭いだとか、汚いだとか無意識にでも感じてしまい、
あまり近寄ってくれない人もいるのだと思います。
けれども、私の夫は、そんなことを1ミリたりとも感じず、あまり深く物事を考えず自然に、弟にとってどう接することが一番良いのかを真剣に考えてくれる人間であったのです。ただただ「可愛いな」「もっと仲良くできるにはどうすれば良いのかな」と考えてくれる人間であったのです。

きっと、そんなふうに接してくれる人ばかりではないはずです。

私は結婚できるのだろうか。
そう、結婚前に悩んだ時もありました。
きょうだいである人、特に、「知的障害を兄弟姉妹に持つ人は結婚なんて考えるな」と結構過激な意見をネットで見て、「そうなのかもしれない」と不安になって泣いた日々もありました。
でも、今は夫と弟と両親と同じ空間にいるこの瞬間がとても尊くて幸せに感じます。
汚いとか汚くないとか、可哀相だとか可哀相でないとか、醜いとか醜くないとか、そんなことを微塵も思考せず、ただまっすぐに弟と向き合ってくれる夫がいます。
弟の存在のお陰で、私はそんな素敵な人を夫にできたのかもしれません。

誠実でまっすぐで心の綺麗な夫に、
私は感謝をしないといけないな、と改めて実感をした年始の出来事でした。


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