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書店で並ぶ本、並ばない本の違い。Part❻

前回に続き、
出版流通について書いていきます。
 
まず、押さえておきたい流通の流れは
以下になります。
 
【納品の流れ】
出版社→出版取次(取次)→書店

【返品の流れ】
書店→出版取次(取次)→出版社

※正確には出版社は、
出版社の契約先倉庫になります。

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出版社で印刷・製本された本が、取次という流通倉庫に送られ、全国の書店に配本されます。
数少ないですが、出版社の中には取次を使わずに直接書店に卸しているところもあります。
 
出版業界では委託販売制度を採用しているため、書店で売れ残った本は、取次を経由して返品されてきます。

返品期限というものも書籍と雑誌で違いはありますが、期限は形だけのものになっており、大半の出版社は期限に関係なく返品を許可しているため、実態はいつでも返品できるようになっているのです。

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書店には、ネット書店の代表としてのAmazonもありますが、ここでは一旦リアル書店に絞って解説します。
 
出版社は全国に3000社前後あると言われており、取次はトーハンと日販の2社だけで80%のシェアを占めています。そして、書店はというと1万店舗くらいと見ておけばよいでしょう。
 
つまり、

出版社から本を仕入れて書店に卸す取次が砂時計のくびれ部分のように、ほぼ2社だけで流通を背負っているため、出版社も書店も取次には頭が上がらない構造になっていると見てよいでしょう。

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前回の記事で、本一冊売れた場合の取り分を説明しましたが、以上のように取次2社で市場を独占していることや、書店もどんどん潰れて売れなくなっているにも関わらず、本の供給量が一向に減らないために、流通を担う取次の収益が圧迫され(運賃値上げもあって)、中小出版社に負担させる流れも進んでいます。
 
つまり、

出版社の売上は約7割前後(仮に1000円の本が売れたら700円が出版社に入る)とみてくださいと書きましたが、取次から収益圧迫のリスクを出版社にも持たせようと様々な手数料を課してくるため、実際の出版社の売上は6割強といったところが多いと思われます。

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書店も書店で、本が売れなくなっているにも関わらず、毎日のようにたくさんの本が供給されてくるものですから、仕入が厳格になってきており、報奨金をつけてくれないと希望部数は仕入ないとか、発注してもいないのに取次から勝手に配本されてくることに警鐘を鳴らし始めています。
 
このあたりはもう少し詳しく解説しないとわかりづらいと思いますので、簡単に書きますが、

委託販売制度(書店で売れ残った本は返品できる制度)と再販制(小売である書店が勝手に本の値付けを変えて売ってはいけない制度)により、書店にとっては値付けの負担がないことや、返品を認められていることから、取次を通して言葉は悪いですが、いらない本まで送られてくるシステムになっているのです。
 
本当は、売れる本や売りたい本だけ欲しいのが書店の本音です。とくに小さな書店は売れている本をたくさん売らないと潰れてしまうのに、売れている本に限って大きな力ある書店に優先的に配本されたり、出版社も売れる規模の大きな書店優先に受注しますから、街中の本屋さんがどんどん消えていくわけです。

もちろん、アマゾンをはじめとするネット書店の影響もかなり大きいですが。


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流通に関しては、2回に分けて書こうと計画していましたが収まり切れないので、次回こそ、書店で並べられる本、書店が並べたくなる本について書いていきますね。

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