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【パンの科学】食パンとフランスパンは何が違うのか?

みんな大好きなパンですが、世の中には食パン、フランスパン、ベーグルと一口にパンといってもいろんな種類がありますよね。

どれもおいしいですが、どれも何やら食感が異なります。

ふわふわ食感の食パン、ちょっとハードで噛み応えのあるフランスパン、もちもち食感のベーグルと、ほとんど同じ材料でできているとは思えないような違いを感じられると思います。

今回は、そんなパンの違いについて科学的に見ていきます。

食パンとフランスパンとベーグル

冒頭にも例に出したこれらのパンは何が違うのでしょうか。

これまでのお話で大きな要因はパン内部の気泡構造に秘密があることがわかりました。

たしかにパンに対する気泡の入り方はふわふわした食感に直結するように感じますが、それではパンの種類によってどうしてこの構造が変わるのでしょうか?

パン職人はパンに1つ1つ気泡入れているはずがありませんよね。こねて伸ばして発酵させて、焼き上げると気泡が入っているわけですが、いったい何が違うと食パンやフランスパンなど全然違う食感になるのでしょうか。
次は、これらのパンの素材と作り方の観点から、何が関係するのが見ていこうと思います。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/49/4/49_280/_pdf

素材と作り方

まず有名なパンの種類別に簡単にまとめると次のようになります。

他にもいろいろと違いがあるはずですが、主要なポイントは上記の通りです。

まず共通する素材を見てみると、パン作りには小麦粉、塩、水、イーストは基本となることがわかります。

次に、素材の違いを見てみると、食パンは砂糖やバターなどが入っており、一方でフランスパンは砂糖もバターも入っていません。ベーグルはバターを基本入れないようですね。

第一に砂糖の含有量というのが大事なポイントになります。というのも、イースト菌は発酵して炭酸ガスを出しますが、そのためにはイースト菌にとっての食事である糖分が必要です。

食パンはフランスパンなどに比べて砂糖の量が多いため、イースト菌が効率的に発酵し、炭酸ガスをよく出してくれます。

その結果、パン内部の構造に多くの気泡が生まれ、ふわふわ食感を実現できます。一方でフランスパンは炭水化物由来の糖分はありますが、食パンに比べて糖分は少なくなるため、気泡の膨張度が低くずっしりした歯ごたえのある食感になるわけですね。

ちなみに原材料の違いから、食パンは砂糖の糖質やバターの脂質から太りやすく、逆にフランスパンやベーグルは比較的太りにくいと言われています。
ただし、これには罠があって、水分量の少ないフランスパンやぎっしり詰まったベーグルは、食パンに比べて小麦の成分である炭水化物の量が逆に多いということもあるそうです。

炭水化物は分解されると糖質になるため、やはり食べ過ぎると太ってしまうようですね。

一方で、噛み応えのある食感を持つフランスパンとベーグルは食パンに比べて少量でも満足感があってダイエット効果があるという説もあります。これには個人差があると思うので、適切に体内に取り込む栄養のインプットと消費するアウトプットを意識するといいでしょう。

グルテンの違い

さて第二のポイントはグルテン量の違いです。パン内部のクラム構造を作るグルテンは気泡を支える骨格になります。

実はパンの種類によって主力となる小麦粉の種類が異なります。食パンでは強力粉が、フランスパンでは中力粉が使われます。

この小麦粉の種類の違いは一体何なんでしょうか?実は、小麦粉の種類はグルテン量の違いによって決まります。

食パンやベーグルに使われる強力粉はグルテン含有量が多く、フランスパンで使われる中力粉では少しグルテン含有量が少なくなります。そしてこのグルテンの量というのがパンの骨格を作るのに非常に重要になるんです。

グルテン含有量が多いと粘りが強く、発酵によって生まれた気泡を閉じ込める能力が高くなります。そのため食パンはフランスパンに比べて全体的にふっくらと膨らみやすくなるんですね。

それでは同じ強力粉を使っている食パンとベーグルの違いは何なんでしょうか?

原料にも少し違いはありますが、最大の違いはケトリングというゆでる工程です。

ベーグル

ケトリング(糊化)

なんとべーグルはパン生地を焼き上げる前にケトリングというお湯でゆでる工程があります。

パン生地をゆでるとは想像もできないですが、ベーグル作りには欠かせない工程の1つなんです。

なぜゆでる工程なんかがあるのでしょうか?
どうやら、これは表面のデンプンを糊化して、これ以上膨らまないようにする効果があるようです。

糊化とは水とともに加熱することで、デンプンに水分を吸わせてα化という異なる状態にすることです。わかりやすい例だとお米を炊くときがまさに糊化に当たります。水と熱を加えることでもっちりとしたご飯になりますよね。

この現象をパン生地の表面にも行うのがケトリングです。生地をゆでると表面だけが少し膨張し張りのある様子になります。糊化した記事をオーブンで焼くとそれ以上膨らまずにパリッとした食感になるんです。

そのため、ベーグルは内部で気泡の膨張が起きても表面が押さえつけるため、食パンのようなふわふわな食感ではなくもっちりとした食感になるんですね。

最後に

今回は普段目にするパンについて科学的に調べてみました。
あのふわふわのパンにももっちりしたパンにも物理的な秘密が隠されていることがわかりましたね。

ベーグルは焼く前にゆでていたなんて知っていましたか?
パンの世界は非常に奥が深くまだまだ知らないことがたくさんありそうです。今後も少しずつ勉強して紹介していけたらと思います。

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