【何度つぶされても元通り】植物の茎を模倣した超強力クッション
みなさんは強い材料というとどんなものを想像しますか?
鉄でしょうか?コンクリートでしょうか?
いろいろなものが想像できると思いますが、強風に吹かれても潰されてもピンピンしている植物もまた非常に強い材料となります。
今回はそんな植物の茎の微細な構造を模倣した強い材料を紹介します。
植物の茎の秘密
今回の研究で注目されたのはミズカンナと呼ばれる植物の茎の構造です。
[1]より引用
ミズカンナの茎の構造を顕微鏡でよく観察すると、非常に小さな穴が開いた多孔質素材であることがわかります。
参考文献より引用
この植物の微細な穴が開いた構造は、ラメラ構造と呼ばれる層構造に”橋”がかかった状態になります。
植物が生まれながらにこの複雑な構造を作り上げていると考えると非常に興味深いですよね。
人工的に多孔質を作り上げる
植物はすごい! といいましたが、人間だって負けてはいません。
現在の科学をもってすれば、この微細な構造を模倣して作り上げることができるんです。
研究グループはグラフェンオキサイドとのりの成分でもあるPVAを混ぜた材料を特殊な環境で凍らせることで、この多孔質構造を実現しました。
参考文献より引用
具体的には、こののりとグラフェンを混ぜた液体を型に流し込み凍らせていきます。この時、氷の微細な結晶ができ、その間をグラフェンが囲い網目状のネットワークを作ります。
その後、氷を気体にすることで(昇華)、微細な氷の結晶の空間が空洞になり、植物の茎のような小さな穴がたくさん開いた多孔質構造が出来上がるようです。この多孔質構造をエアロゲルといいます。(キセロゲルではないのかな?)
グラフェンエアロゲルの実力
少々奇抜な方法で作られたグラフェンエアロゲルですが、その実力はどの程度のものでしょうか?
ここでの強さとは、頑丈とは少し意味が違います。むしろつぶされても壊れない強さ、そして形を復元する力というべきでしょうか。
参考文献より引用
このエアロゲルは自身が半分につぶされても耐えることができ、自重の6000倍以上の重さを支えることができます。つまり、軽くて強い材料ということですね。
またサイズが半分になるまで1000回押しつぶしても、元の強度の85%の形を保っていられるという復元力を併せ持っています。非常に優秀なクッションとして使えそうですよね。
高性能センサーとしても使える
ここまででも十分にすごい発明なわけですが、このグラフェンエアロゲルの勢いはとどまることを知りません。
このグラフェンエアロゲル、ただのクッションとしてだけではなく、電気を通すグラフェンを使っているためか特殊なセンサーとしても期待されています。
参考文献より引用
グラフェンエアロゲル自体はそのままでは電気を通すことがありません。しかし、押しつぶされてグラフェンが密につながると電気を通すようになるようです。
つまり、押しつぶされることでスイッチがオンになるセンサーとしての機能も持っているという優れものです。
最後に
今回はミズカンナと呼ばれる植物の茎の構造を模倣して、グラフェンを用いたエアロゲル材料ができたという研究を紹介しました。
非常に強い耐久性と復元力を持った強い材料であり、なおかつ押しつぶされると動作する新種のセンサーとしても期待される非常に面白い材料です。
植物の世界は、私たちが知らないだけで、とっても不思議で面白い科学が潜んでいるのかもしれませんね。今後も注目していきたいと思います。
参考文献
Biomimetic Architectured Graphene Aerogel with Exceptional Strength and Resilience
引用
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