半導体を作る細菌:人類は細菌に頼る未来が来るかもしれない話
以前、タンパク質がナノ材料を作るという話を紹介しましたが、今回は半導体ナノ材料を作る細菌がいるよ!という話をしたいと思います。
ちなみに、半導体といってもPCやスマホの中に入っている基板みたいなものを作れるわけではなくて、その部品となるチップの中の材料に使えるかもといったものです。
とはいえ、ナノスケールのものづくりはいまだに難しいところがあるので、人間ができないなら細菌に作ってもらおうというわけです。
そもそも何のために半導体を作るの?
ナノサイズの小さな半導体を作ってなんの意味があるの?と思われるかもしれませんね。
簡単に言ってしまうと、新しい特性を持った半導体材料であり、次世代の電子デバイス(太陽電池や量子コンピューター)への利用が考えられています。現在でもすでにディスプレイの塗料やセンサーとして使用されています。
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極端な話、私たちの生活をより豊かにするためには、このようなナノサイズの半導体を作る技術も求められるわけです。
細菌がナノ材料を作る
これまでナノ粒子の作り方については簡単に紹介しましたが、現在の方法で大きさの揃った半導体ナノ粒子を作るのはなかなか難しいことが知られています。
しかも、現在の産業では大量生産が基本なので、きれいなナノ粒子を一つずつ作ってるわけにもいきませんよね。
そこで、最近に注目されているのが、細菌です。
一部の細菌は周りに存在する原料イオンを体内に取り込み、それを体内で結晶化させて、ナノ粒子(ナノ結晶)を作製することができます。
言ってみれば、体が1つの工場になっているようなものですね。
大きな工場で作ると多大なエネルギーが必要になりますが、一部の細菌は適切な環境においてあげれば生きているだけで、ほぼエネルギーを使わずにナノ粒子を製造することができます。
もともと磁性細菌と呼ばれる地磁気を感じ取る能力を持った特殊な細菌が体内で磁性ナノ粒子を作ることが知られていました。
こちらの磁性ナノ粒子も産業利用したい!と考えられており、記録デバイス(ハードディスク)への応用が期待できます。
少し話が脱線しましたが、細菌のもつポテンシャルはそれだけではありません。
有名だった磁性細菌に加えて、半導体のナノ粒子を作ることができる細菌も見つかったわけです。
しかも、Si(シリコン)のような単純な半導体ではなくて、少し複雑な化合物半導体ナノ粒子を作ることができるようです。
このような細菌を人間が上手に扱うことができるようになれば、たくさん細菌を育てて、彼らにナノ材料を量産してもらうこともできそうです。
最後に
このような動きはまだ大学研究の領域を出ておらず(たぶん)、一般企業が代替的に手掛けるという話は聞いたことがありません。
しかし、今後も人類が省エネを進めながら地球で暮らしていくことを考えると、もっと積極的に生き物の知恵を学びにいったほうが良さそうです。
私のような生物素人が細菌と聞くと悪いイメージを持ちがちですが、近く細菌の工業進出も見られるかもしれません。(最近も常在菌?腸内環境?なんかの議論はされているので意外と早いかもしれないですね)
参考
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