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「知識は主観的な解釈として顔の見える関係を通じて流通する」という仮説を実証するための個人的な実験です。詳細はこちらの記事を御覧ください→ https://note.com/enf… もっと読む
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記事一覧

ノヴァセン〈超知能〉が地球を更新する(NHK出版)

ガイア理論の提唱者であるジェームズ・ラブロックの新著であり、WIREDの編集長である松島倫明さんが訳していて、そしてこの本を紹介してもらったのがHuman Potential Labというこれまた全力で面白い境地を開拓している山下悠一さん。想定通りに、色々と既存の思考の枠組みを超えてくれた。 タイトルにある「ノヴァセン」とは、時代の区切りの名前(正しくいうと「地質年代」かな)。始生代とか、古生代とか。 本書の中から引用すると、 人類が地球(ガイア)に君臨し、地球環境に大

ユング心理学と東洋思想 (河合隼雄全対話) (第三文明社)

最近また読む機会が増えてきた河合隼雄の著作。この一冊は、若松英輔さんの講座で「生と死の接点」を読む機会があり、そこで紹介されて出会った。 特に秀逸だったのが、河合隼雄、井筒俊彦、ヒルマン(著名なユンギアン)の3者の鼎談。 ヒルマンは、西洋文化の中からユングを読み解いてきた人であり、彼の来日に合わせて行われたこの鼎談では、ユングを東洋と西洋からどのように読み解くか?という話をしている。 冒頭、ヒルマンが「京都で色々な庭を見た中で感じた全体としての視点」の話をするところから始

老子 (岩波文庫)

老荘思想に興味を持って、Amazonでポチってみたものの、意訳されすぎているか、解説の範囲が広すぎるなと思ってどれもしっくり来ず。 大型の書店に行って、それっぽいの片っ端から読み比べて選んだうちの1冊。 道徳経の全81章について、訳文、訓読文、原文、解説、がほどよいバランスで書かれていて、老子が書いたことそのものを知るのにちょうどよかった。 老子の思想で一貫している「道」とは、あらゆる物事の道理の根底であり、顕在化して認識しやすいわけではなく、しかし「道」に従っていること

経営戦略原論(東洋経済新報社)

どんな分野でも、今に至る流れを知ることは、理解を深める助けになる。 「なぜ、今のような主流があるのか?」 「どのような前提条件の変化がそれをもたらしたのか?」 「いま"当たり前"だと思っていることで、遠からず覆りそうなことは?」 こういう「そもそも」を考えられるようになると、自分の仮説の精度が高まり、仮説の強度が強くなる。 もちろん仮説なのだから間違っている可能性は大いにある。それでも、精度と強度が高いことで、自信を持って進められる「推進力」が高まるし、軌道修正するときの

哲学と宗教全史(ダイヤモンド社)

サクサク読めて楽しい。けどとても物足りない。 というのがこの一冊の読後感だった。 「哲学」とはなにか? 「宗教」とはなにか? どちらも概念としての輪郭を明確に定義しようとすると非常に難しい。少なくとも自分では説明はできない。(「"哲学的"とはなにか?」というのは、この前に読んだ ニューQ でも扱われていた。言葉にすると難しいんだけど、共有している感覚はものすごくあるんだよな…) 人類の歴史と並走しながら哲学と宗教を概観していくと、どちらもが時代背景からは逃れられないもの

リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま (光文社新書)

新卒で入った会社の創業社長でもあり、色々な局面でお世話になった方がいる。仕事の進め方であったり、仕事で大切にしている価値観は、この方のDNAを色濃く受け継いでいる。 この方のコーチだったのが、この本の著者の増田弥生さん。直接のご面識はないけど、当時、色んな方から増田さんのお話は伺った。 この本の言葉通り、自分自身が「自然体」を体現されていたらしい。いつか直接お目にかかってみたい。 * * * この本の中で、ものすごく影響された一節がある。 思えば、その日、私は「自分は

仏教新論(佼成出版社)

日本ロボット学会の名誉会長であり、ロボコンの創始者。 同時に、40年以上に渡る禅および仏教の研究者。 機械としてゼロから創造しようとする営みは、「人とは何か」を追求することであり、必然的に宗教にも行き着くものらしい。 私たちがいま慣れ親しんでいる物理的な要素分解された身体観や世界の認識の仕方は、世界の成り立ちを説明する「一つの考え方」でしかない、ということを、まざまざと実感させられる。 * * * この書籍で一貫しているテーマは、仏法全体が「一つ」によって貫かれている

昔、言葉は思想であった 語源からみた現代(時事通信社)

「日本的な、これからの組織の姿」を洞察しようとするときに、カタカナでしか表せない言葉に出会うことが少なくない。言葉が表している範囲が違うこともその一因であり、さらには言葉が成立する背景としての世界の捉え方が違うらしい。 そんな問題意識の中で出会った一冊。プロローグに書いてあるこの文章が、端的にこの本の目指すことを書いている。 「昔は、言葉の一つひとつが、物事の感覚、思念そして関与を表すという意味での思想であった」と判明するに違いありません。言葉が混乱に見舞われれば、言葉を

唯識の思想 (講談社学術文庫)

先日のレンマ学に続いて、どう表現するか迷う。それでも、「唯識思想」というものに触れる入り口をもらったとてもありがたい一冊。 私達は、世界を「科学」というパラダイムを通じて解釈することに慣れきっている。「人間」という生き物は60兆個の細胞から構成され、細胞は「原子」から出来ていて、その中には原子核と電子がある。 「物理的に要素還元することによって世界は理解できる」 という前提のもとに世界を認識している。 唯識思想は、その「世界の認識の仕方」が違う。八識と呼ばれる「識」によ

レンマ学(講談社)

この本は、書評のような表現をすることをとても躊躇する。その「書けなかった理由」をあえて表現するならば、 ・内容からものすごく示唆を得ていて、 ・それでも理解しきれている感じがしない、 というのが両立するから。 この本は、「レンマ学」という学問の確立を「提唱する」ために書かれている。なので、決して盤石に体系化されているわけではない。 人の知性は、「ロゴス」という論理的、要素分解的なものと、「レンマ」という直観的、統合的なものに大別できる。現在の捉え方で言えば、ロゴスはより西洋

自然経営 ダイヤモンドメディアが開拓した次世代ティール組織(内外出版社)

今さらながら、という気もするけど、そういえば上げていなかった一冊。 自然(じねん)経営という言葉は、著者の武井さんとの縁がなければ生まれなかった。 この本そのものは、天外塾の中で武井さんが語っている内容が元になっている。天外さんの発言や解説があってこそ成り立っているし、自分もなぜか少しだけ登場している(書籍に自分の名前がちゃんと登場したのはこれが初めて…) 「組織を生き物のように捉える」という着想そのものは、武井さんと初めて組織論を深く話すようになったときから、全く変わっ

論理的美術鑑賞 人物×背景×時代でどんな絵画でも読み解ける(翔泳社)

今日手に取ったけど、一気に読んだ。そしてこの本はどうしてもすぐに公開本棚に上げざるを得ない。 芸術/アートというものを、論理的に解説する。 下手な人がやると、確実に中途半端に終わるこの営みを、芯を食ってやり遂げられるこの著者は、やっぱりすごい人だなと改めて思う。 この本の内容は、Amazonに書いてある紹介文以上に上手に言い表せる気がしない。 名画の理由は、 目には見えない。 「美術を理解するためには感性が必要」 はっきり言って、これは誤解です。 西洋美術を本当に理解

シンプリシティの法則(東洋経済新報社)

「iPodやグーグルはなぜ成功したのか」 帯に書いている言葉に時代を感じる。初版が2008/04/24。 複雑化する世界の中で、どのように「シンプル」さを保つか。ジョン・マエダ氏が10の法則と3つの鍵に整理している一冊。 ちなみにAmazonによると自分は2008/05/09、発売直後に買ったらしい。2008年からの12年間、3回の引っ越しと、それと別に2回のダイナミックな本の断捨離を経て、それでも手元に残していた。 折に触れてパラパラと見返したくなる本の1つ。 10の

マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力(英治出版)

タイトルの通りなんだけど、マネジメントとは「小さな進捗を示すこと」だということを示している一冊。 「マネジメント」の本は読まなくなったし、残っている本もほとんど無い。その中でも、数限られる手元にあった一冊。 (あとはドラッカーの本はいくつか残ってるけど、これは"経営"という意味でのmanagementだし、わりと思想書に近い…) 組織が自律的になる、境界線が流動的になる、という流れは強まっていく。その中だと、適度な距離感のマイルストーンが設定され、各々がそこに向けてエネル