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武蔵野シェアハウス発、辺境の山旅

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1990年代末、若き日のアルピニスト野口健たちと共に暮らした東京・武蔵野の木造一軒家。 無名の冒険家たちが集まるその空間は、異様なほどのエネルギーであふれていた。 「ヒマラヤに行…
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#平賀淳

連載第7話 光り輝くエベレスト登山計画

連載第7話 光り輝くエベレスト登山計画

 そんなわけで(前回参照)、突如として野口健の家に現れた長尾は、そのままそこで住み始めることになった。
 長尾は、2階の4畳半の部屋を割り当てられたが、その部屋にはほとんど行かず、1階のリビングで黙々とテレビを見続けていた。
 深夜までずっと見つづけ、そのまま寝落ちしてしまうことがほとんどだった。
 飽きれた野口が
「そんな見ててよく飽きないな」 
 というと、
「これまで家にテレビがなかったんで

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連載第6話 シェアハウスの始まりと「どん底」の野口健

連載第6話 シェアハウスの始まりと「どん底」の野口健

 八ヶ岳から帰りしばらくすると、私は「シェアハウス」に引っ越しをした。
 2階の4畳半の部屋はわずか17,000円。
 しかも1階のリビングを共同で使える。
 武蔵野の中央線沿線の物件としては、破格だったと思う。
 90年代末期に、こんな60年代初期のような「下宿」作りの一軒家が残っていたのは、ひとえに田附の力だったようだ。
 私が、引っ越しする前、以下のような顛末から「シェアハウス」は始まったら

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