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毎日読書メモ(補遺的な)

最近書いたメモへの補遺を2つ。

(1)

桜庭一樹「少女を埋める」(「文學界」2021年9月号)を取り上げた、朝日新聞の文芸時評(評者・鴻巣友季子)の、粗筋の紹介の仕方について、先週から主にTwitter上で作者の意図と違うことを断言的に粗筋として紹介していたことについての論争が繰り広げられていたが、(わたしのメモ1 メモ2)、今日になって、朝日新聞DIGITALに掲載されている文芸時評については修正が入った。こちら

冬子は小説家のキャリアを選ぶが、家父長制社会で夫の看護を独り背負った母は「怒りの発作」を抱え、弱弱介護のなかで夫を「虐(いじ)め」ることもあったのではないか。わたしはそのように読んだ。

老々介護の中で虐待があった、と断言的に書かれていたのが改まり、文末に新聞社の注釈が下記のように入った。

本文中の「夫を虐待した。弱弱介護の密室での出来事だ」という箇所について、「少女を埋める」著者の桜庭一樹さんから「評者の解釈であることを明示してほしい」と要望があり、筆者の鴻巣友季子さんの意向を受けて「弱弱介護のなかで夫を『虐(いじ)め』ることもあったのではないか。わたしはそのように読んだ」と表現を改めました。

なんとなく奥歯に物が挟まったような気持ちがぬぐえないが、原文の中で、母が父を「虐めていた」時期があったという表現をしていて(但しいつ、どのように、ということは書かれておらず、虐め、がメタファーであった可能性も捨てきれないとわたしは思った)、評者はそれを介護の中での虐待、と取った、という風に改められ、物語の中で虐待があったということにはならなくなった。

ネットはこれで一段落だが、本紙に訂正記事は入るか?


(2)

全然別件で渡辺淳一『愛の流刑地』(幻冬舎文庫)の話。新聞連載後、単行本が刊行されたときの自分の日記を読んでいて、あ、と思ったこと。

2006/5/17の自分の日記より:

今日は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の発売日だが、一方、渡辺淳一『愛の流刑地』の単行本も今日発売になったらしい。それに合わせてか、映画「愛の流刑地」のメインキャスト発表! 一旦役所広司に決まっていた菊治役、何故か急に豊川悦司に! あのぉ、菊治57歳なんですけど...映画化にあたって、あえて10歳以上若い設定にしたという噂だが、だとしたら、成人した息子が自分を理解してくれる、とかそういう設定はスルーか? そして、誰も引き受けないのではと言われていた冬香役は寺島しのぶ! 全然はまってない感じがするんですが。冬香って、地味で、情熱とかを表面に出さなそうな、ちょっと暗い感じの人、ってイメージ(で、菊治によって性の快感に目覚めさせられるんだが、それによって雰囲気の地味さが変わった、とは原作には書いてなかったぞ)なんだけど、全然違うやん...もしかして、タイトルだけ「愛の流刑地」だけど、原作とは全く違った物語になる? まぁその方がみんなハッピーな気もしますが。

「愛の流刑地」のWikipediaには、「村尾菊治(むらお きくじ):主人公。45歳」と書かれていて、先週このメモ書いていて、え、菊治って当時の自分と5歳位しか年違わなかったっけ、もっとじじいだと思って読んでいたんだけどな、と思っていたら、やっぱり違った、57歳設定だったようだ(それすらまだ若すぎね?、と思うじじいぶりだった)。映画キャストが役所広司(当時50歳)から豊川悦司(当時44歳)に変更になったから、映画のキャラの年齢設定を45歳にして、そっちがWikipediaに書かれていたのか...と意味もなく腑に落ちたので、一応書いておく。

#読書 #読書感想文 #桜庭一樹 #少女を埋める #鴻巣友季子 #朝日新聞 #愛の流刑地 #アイルケ

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