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毎日読書メモ(87)『愛ふたたび』(渡辺淳一)

自分の過去の読書記録を調べていて、昔、日本経済新聞に渡辺淳一『愛の流刑地』が連載されていた頃、毎日、内容を突っ込むブログがあって、それを愛読していたことを思い出した。検索してみたら、にっけいしんぶん新聞、というブログは今でもあった! 「今日の愛ルケ」の初回ポストはこちら。出勤して、職場の日経新聞で「愛の流刑地」を読み、それからこのブログを見て、共に突っ込み共に笑っていた。なんでこんなに独りよがりで共感できない主人公を、作者はこんなにいつくしんで書けるのだろう、と、今より15歳以上若かったわたしは思った。そして、自分と同世代とおぼしきヒロイン冬香に全くリアリティがないことにも呆れた。最後まで突っ込みどころ満載の小説が、1年以上(2004/11/1-2006/1/31)、日経新聞に連載され、当然単行本となり(幻冬舎)、文庫本になり、映画になりテレビドラマにもなったさ。どこかに確固とした市場がある。

父の本棚に『愛ふたたび』(幻冬舎、現在は幻冬舎文庫)という小説があったので読んでみる。2013年に刊行されていて、渡辺淳一は2014年に亡くなっているので、これが生涯最後の小説だ。これは地方新聞19紙に配信されていた連載小説を改稿したものだが、73歳男性が、おさかんにやっていたのに突如不能になり、不能になったけど、女性との性交渉は可能か、ということを必死に考えているだけの小説。こんなん新聞連載していてよかったんかい。というか改稿のときにやばいところを追加したんだろうか?

主人公気楽堂は、公立病院の医長を退職後、整形外科を開業した医師で、開業準備中に妻逝去、一人娘は結婚してもう家を出ている。愛人2人とよろしくやっていた(バイアグラ服用しながら)のに、突如不能になり、不能について、医学書を当たったり泌尿器科医の友人に聞いたり、ネットで調べたりして見識を得る。一方で枯れてなるものか、という意欲の元、更に新しい彼女を作る。不能について彼女たちに一言も言わずに性交渉が出来るんかい、と、もうまた突っ込みどころ満載です。新しい彼女を口説く過程とかも、こんなんで40代女子が73歳男子になびくとは思えん、というリアリティのなさ、というか、自分の都合のいいところだけ書いていて、女性の気持ちが全く伝わってこない(一人称小説だから、相手の気持ちなんてどうでもいいのか)。脳内のお花畑がリアルに展開するなら、こんな幸せなことはないよねぇ。『愛の流刑地』と『愛ふたたび』の間に6冊くらい小説を出しているけど、それもみんなこんなぐだぐだで、でも、一部の消費者からは支持を得ているということなのかなぁ(確認もしたくない気持ち)。自分で自分にエールを送る目的で小説を書いていたのか。

唖然としながら読み終えて、合掌。

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