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Ten Nights Dreams

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「君が勝手に動き出すのを、待ってたんだ。」
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元ネタ/解説集 十夜の夢

※先に当該マガジン収録中の記事を「?」から順に読むことをおすすめします。

全般・特に断りがない限り、作中人物が口にすることは語り手を問わず「自分に対して感じていること」もしくは「自分が常日頃考えていること」です。

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 ヒロミさんのお姉さんの話を完全に信じたわけではないけれど、でもやはりこのところなにかにつけてヒロミさんの現れる夢を見てはいたから、気がついた時すぐ隣の椅子にヒロミさんが座っていたことに私はあんまり驚かなかった。私たちがいたのは高校の敷地にあったチャペルと今の大学にあるチャペルを足して2で割ったような、小さな教会だった。ヒロミさんは、私と目が合うとにっこり笑った。

 「おはよう、新谷」

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 わたしと洋海は、決して仲の良い姉弟じゃなかった。

 父親の再婚で自分によく似た名前の弟ができることを知り、大喜びでわたしが新しいこの家にやってきたのはもう15年も前のことで、しかし初めて会った7歳の洋海はわたしと父を一瞥するとわたしの鼻先でぴしゃりと自室の扉を閉めた。
 洋海は恐らくこの頃からずっと、わたしと父を憎んでいたと思う。

 新しいお義母さんはちょっと感情が大きく出るタイプの人で、今

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 その日は一日中、ひどい雨が降っていた。

 ※以外の三人で、不本意ながらの帰省。しかしそこではじめて僕は、自分自身を振り返る機会を得た。だから、もちろん自分が全て悪いとは思わないけど、はじめてそれを謝ろうと思った。謝る為に、早く帰らないとと、思った。

 その矢先。

 「ね。こんなところで雨に打たれてたら、風邪引いちゃいますよ、×××××さん」

 「どうせ夢だ。風邪なんか引くわけないだ

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 誰だって好きだと言われたら嬉しいはず。

 「好かれて嫌な思いをする」ことはありえない。

 「そんな奴に好きと言われても嬉しくはならない」はあるかもしれないけれど、でも預かり知らぬところで勝手に高評価をつけられるだけならなにも嫌悪まで感じることはないだろう。「そんな奴」の好意に「立場上応じる義務がある」ことは「面倒で嫌」かもしれないけれど、それはまた別の問題だ。

 ただ、気づいたことが

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 「誕生日プレゼント、ね」

 「ああ。※へなにか、買おうと思ったんだが、生まれてこのかた一度も選んだことがなくて。シンヤの意見を聞こうと思ったんだ」

 僕とシンヤは、向かい合って座っていた。ここがどこかはわからない。いろいろな景色が混ざって浮かんでは消えて、僕は考えるのをやめた。どうせこれも夢なのだから、考えるだけ無駄なのだ。

 「プレゼントなんて言っても、人が人にあげられるものなんて

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 次に気がついたとき、僕は公園のブランコに腰掛けていた。人っこ一人いない、夜の公園。生暖かい空気がゆっくりと流れていて、とても気持ちがいい。──人っこ一人いない、は嘘だな。左側のブランコには、もちろん奴がいた。

 「×××××は、人と付き合う時に一番大事なのは何だと思う?」

 声のする方に向き直ったが、正面を見据えたまま立ち漕ぎを続けるシンヤとは当然目線は合わない。僕はそのまま答える。

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 人生初の一人暮らしを始めた僕の、桜上水の新居に最初にやってきたのは、家族でも恋人でもなくシンヤだった。シンヤは僕よりもひとつ歳下で、僕の知人にしては珍しく大酒呑みでフッ軽な後輩である。所謂陽キャというやつだ。白いコートを身に纏って玄関口に現れたシンヤは、いつの間にか華奢で化粧気のない頃とは似つかないほど綺麗になっていた。最後にシンヤに会ったのはいつだったっけか、との疑問を浮かべながら、僕は

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 「そう……それで、結局別れちゃったんだ?」

 「そう。まあ、泣かせてしまったのだけれど。一応は納得してくれたと思う」

 今度は間違いなく、意識が発生した瞬間に『これは夢だ』と確信することができた。なんと言っても、今の僕は宙に浮いていて、しかも半透明なのだ。こういうことがあってこそ明晰夢だよなあと思いながらあちこち空を泳いで回って(今の僕は空中を自在に移動できる!)いると、よく見るファミ

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 「明日、隕石が落ちるんだよ」

 夕日の差し込む図書室で、ブレザー姿のシンヤがそんなことを言った。どこの図書室かはわからない。少なくとも中学校のそれではないし、高校・大学時代のそれとも微妙に噛み合わない。先月まで資格試験に向けて閲覧室へ通った地元の図書館が一番似ている気もしたが、あれはまともに書架のほうを見やった記憶もないので判別はつけようもなかった。つまりこれも夢だな、と僕は納得すること

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 鍵を開けて家の中に入ると、シンヤが僕の部屋の中心に立っていた。シンヤはゆっくり顔を持ち上げてこちらと目線を合わせると、こて、と小首を傾げる。ふわりと黒髪が揺れて、いつものいい匂いがした。

 「ここが×××××さんの部屋なんですか?」

 「ああ、そうだけど」

 なぜ鍵も持たない君がここに、と続けて言おうとして、この部屋が桜上水のワンルームではなく見知らぬアパートであることに気づいた。こ

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